著者
大久保 喜美 東條 秀徳
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.84-90, 2009-08-25
参考文献数
4
被引用文献数
1

消石灰による「待ち受け消毒」効果を検証することを目的に、消石灰粉末および1%消石灰液による踏み込み消毒について、鳥インフルエンザウイルス(AIV)ならびに病原性細菌であるSalmonella Typhimurium(ST)およびStaphylococcus aureus(SA)を用いた感作試験により、その効果を調査した。1%消石灰液をAIVに感作させると、感染性を消失させることはできたが、赤血球凝集能(HA)への影響はなかった。STに対し消石灰は粉末、1%消石灰液および0.1%消石灰液で消毒効果はみられたが、SAは容易に消毒できなかった。消石灰の消毒効果は、乾燥粉末状態であれば強アルカリ性(pH12以上)を示し長期間保たれるが、一度濡れた後乾燥すると炭酸カルシウム(炭酸Ca)へと変化し失われた。即ち、降雨にさらされる屋外での粉末散布では、降雨後晴れて地面が乾燥すれば、再度散布が必要であると示唆された。また、有効散布量は1m2当たり300g以上で、かつ均等に散布することが重要である。踏み込み消毒に用いた1%消石灰液は強アルカリ性を保持し、一般細菌や大腸菌群に対し長期間有効であった。さらに1%消石灰液に1%(v/v)の逆性石鹸を追加することで、芽胞桿菌および真菌も発育を抑制し消毒効果が増強された。以上のことから、養鶏農場外縁部および鶏舎周囲への消石灰の粉末散布は、AIV等病原性微生物を含んだ野鳥糞便の鶏舎周囲への落下および体表に病原性微生物が付着した野生生物が鶏舎に侵入する際の「待ち受け消毒」として、また1%消石灰液は鶏舎内に立ち入る人に対する「待ち受け消毒」である踏み込み消毒槽に用いる消毒剤としての有効性が確認された。

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