著者
田中 充
出版者
環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.284-296, 2010-07-30
参考文献数
22

地球温暖化の深刻化に伴う温暖化対策の促進が求められる中で,地方自治体における温暖化・エネルギー対策の一層の強化が期待されている。本研究では,こうした自治体エネルギー行政に焦点を当て,エネルギー対策の方向性と課題を抽出する「政策マトリックス」 の概念を検討する。これは,自治体の役割である消費主体,事業主体,政策主体という3つの側面と,地域対策の対象分野となる需要側対策,供給側対策,需給両面対策の3つの分野に区分し,自治体エネルギー対策の枠組みを体系化する考え方である。<BR>次に,自治体エネルギー行政の対策体系を分析することを目的に,政策マトリックスに基づく「エネルギー対策チェックリスト」を検討・考案し,その内容を項目体系として取りまとめて提示する。また,大都市近郊の2つの基礎自治体として日野市と枚方市を対象に事例研究を行い,チェックリスト手法の適用可能性と対策課題の抽出を試みる。その結果,各々のエネルギー対策体系に関してこの手法を適用して取組状況を分析したところ,2つの自治体のエネルギー行政は総体的評価である総合点では同じ水準であったが,対策分野別には得点分布の状況が異なっており,自治体が取り組むべき対策課題を把握することができた。これはチェックリスト分析が,自治体が従来から取り組んできたエネルギー対策の実績等を反映したものと考えられる。こうした結果を踏まえて,本研究ではチェックリスト手法の有用性を明らかにし,今後の自治体エネルギー行政の一層の強化に向けた検討課題を抽出している。

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