著者
釣賀 一二三 間野 勉
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.91-100, 2008-06-30
被引用文献数
4

北海道渡島半島地域を対象に策定された任意計画に,モニタリングとして位置づけられた項目の取り組み内容に関して概観し,今後の課題について本稿で報告する.北海道では2001年に策定された「渡島半島地域ヒグマ保護管理計画」に関わる生息動向,および被害状況に関わるモニタリングを実施している.生息動向については,全道を対象とした鳥獣関係統計,捕獲個体の生物学的分析,アンケートによる分布調査および広域痕跡調査の一環として渡島半島地域の調査を実施しており,これまで継続してきた調査によって一定の成果をあげている反面,個体数の動向を示す指標として期待される広域痕跡調査が,国有林の協力を得られないなどの理由から今後の見通しが立たないといった重要な課題を抱えている.渡島半島地域のみを対象とした電波追跡調査やヘア・トラップ調査では,個体数推定に向けた試みが続けられており,大雑把な個体数の推定や調査対象とした狭い地域における個体数推定手法の確立に向けた検討が行われているものの,予算や人員の不足が精度の向上と広域への展開を妨げている状況である.一方,被害状況に関するモニタリングとしては,被害や出没の発生状況を把握し,指標化することによって保護管理計画へのフィードバックを行うための新しい試みとして,問題グマの段階分け,各段階の問題グマ数の推定といった試みを行っている.これらは今後も継続することによって,保護管理計画の進捗状況を評価する重要な指標になり得ると考えられ,生息動向のモニタリングと併せて将来にわたって実施を継続する体制を担保することが重要である.<br>

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編集者: Mamolin
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