- 著者
-
今井 亮三
島 周平
藪内 威志
加藤 英樹
松井 博和
- 出版者
- 日本応用糖質科学会
- 雑誌
- 応用糖質科学 : 日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.2, pp.147-152, 2011-04-20
- 参考文献数
- 33
トレハロースはグルコースがα,α-1,1結合した二糖であり,微生物や昆虫では,エネルギー源や乾燥等からの生体膜やタンパク質の保護物質として働くことが知られている。一方,植物においてはトレハロースの検出が困難であったことから,長い間トレハロースの生合成は否定されてきた。90年代後半に植物から初めてトレハロース生合成遺伝子が単離され,高等植物中にもトレハロースが存在することが明らかになった。しかし,植物中の蓄積量は極微量であり,貯蔵糖やストレス保護物質であることは考えにくい。最近の研究で,トレハロースの生合成が植物の発生やストレス応答において重要な調節機能をもつことがわかってきた。特にトレハロース6-リン酸が植物の糖代謝において重要なシグナル物質であることが明らかになりつつある。本稿では,植物においてトレハロース生合成が示すユニークな機能を紹介する。