著者
青野 友哉
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.11-22, 2010-06-01
参考文献数
13

本稿は,埋葬時の遺体周辺が充填環境か空隙環境かによって骨の移動に差が生じるとの考え(奈良,2007)を基に,人骨の出土状況から遺体周辺の環境を判断するための基本事項を整理した。まずは,「充填環境」と「空隙環境」とは埋葬時から白骨化の完了までの遺体周辺の環境を表しており,白骨化の途中で空隙環境から充填環境へと移行する例を示すことで,環境変化を時間的に捉える必要性を指摘した。また,遺体の一部分が空隙となる「部分的空隙環境」には,土砂の流れ込みなど,空隙環境から充填環境への移行時に起こる状況と,遺体を包装するなどの理由で埋葬時から生じる状況の2パターンが存在すると考えた。そして,時間的変化を考慮して人骨の出土状況を観察することで,全パターンの判別と具体的な環境変化の復元が可能となるとの方法論を提示した。次に北村遺跡出土の縄文人骨42例に対して遺体周辺の環境判断を行い,方法論の検証を行った。まずは,充填環境においても遺体の腐食による沈み込みは存在し,埋葬姿勢によっては骨が移動することや,甕被り葬や枕石の存在が骨の移動の要因であることを明らかにした。その結果,明らかに判断可能な人骨の割合は95.2%を占め,人骨を用いた遺体周辺の環境判断は大部分が可能であることを示した。<br>

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