著者
松田 宏介 青野 友哉
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.10, no.16, pp.93-110, 2003-10-20 (Released:2009-02-16)
参考文献数
33

礼文華遺跡は北海道南部噴火湾北岸に位置し、続縄文時代前半の恵山文化の貝塚遺跡として著名である。この遺跡は1960年代および1990年代に数次にわたる調査がなされ、土器・石器・骨角器をはじめ動物遺存体・人骨といった考古学・人類学研究にとって貴重な資料を提供してきた。しかし、1960年代の調査報告書は刊行されておらず、断片的に資料が紹介されるのみであった。今日の恵山文化の研究においても、本遺跡の資料は恵山文化成立期の噴火湾岸の様相の把握や、広域土器編年の確立という点で、重要な意味を持っている。そのため、礼文華遺跡出土資料を公表し、再検討を加えることは意義のあることと考え、その手始めに出土土器群について資料紹介することとした。検討の結果、東北地方北部からの二枚橋式の波及による恵山式の成立後も、在地系統の土器群が構成上一定の割合を占めること、さらには二枚橋式と在地の両系統の要素をあわせ持つ土器群が存在することの2点が明らかになった。そしてそれら相互の編年的関係と、土器群の構成について見通しを提示し、本遺跡における土器群の構成が周辺の遺跡に比べ、やや特異な様相を示す可能性を指摘した。
著者
青野 友哉
出版者
六一書房
巻号頁・発行日
2008-10

北海道の貝塚は縄文早期から近代までつくられた。この間,貝塚がもつ文化的な意味は時代とともに変化し,その変化の仕方は地域的に異なるものであった。また,貝塚は,当時の人々の狩猟・漁撈・採集活動の結果として存在するとともに,さまざまな儀礼の結果として形成され,彼らの精神文化を表象するものとの見方もある(河野1935,宇田川1985a,1985b)。そのため,貝塚は生業研究の一部として取り上げられるだけではなく,祭祀研究としての視点でも扱われる必要があるのである。本論ではこの点をふまえ,北海道における縄文時代から近代までの生業について述べるとともに,その主体をなす貝塚について祭祀的な面でも言及し,生業形態の変化と,貝塚がもつ意味合いの変化の関連性を指摘するものである。なお,ここでいう貝塚文化とは,「貝塚が存在する文化」という消極的な意味合いではなく,「何らかの精神性を反映する貝塚がつくられた文化」として用いている。
著者
青野 友哉
出版者
六一書房
巻号頁・発行日
2008-10

北海道の貝塚は縄文早期から近代までつくられた。この間,貝塚がもつ文化的な意味は時代とともに変化し,その変化の仕方は地域的に異なるものであった。また,貝塚は,当時の人々の狩猟・漁撈・採集活動の結果として存在するとともに,さまざまな儀礼の結果として形成され,彼らの精神文化を表象するものとの見方もある(河野1935,宇田川1985a,1985b)。そのため,貝塚は生業研究の一部として取り上げられるだけではなく,祭祀研究としての視点でも扱われる必要があるのである。本論ではこの点をふまえ,北海道における縄文時代から近代までの生業について述べるとともに,その主体をなす貝塚について祭祀的な面でも言及し,生業形態の変化と,貝塚がもつ意味合いの変化の関連性を指摘するものである。なお,ここでいう貝塚文化とは,「貝塚が存在する文化」という消極的な意味合いではなく,「何らかの精神性を反映する貝塚がつくられた文化」として用いている。地域と文化の考古学Ⅱ / 明治大学文学部考古学研究室 編. ISBN:978-4-947743-70-1. pp.309-325.
著者
青野 友哉 新美 倫子 澤田 純明 永谷 幸人 篠田 謙一 近藤 修 添田 雄二 安達 登 西本 豊弘 渋谷 綾子 神澤 秀明
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

「縄文時代には争いや格差はなかった」というイメージは、受傷人骨や子供への厚葬の存在により、どの地域・時期でも当てはまるとは言い難い。特に北海道有珠モシリ遺跡18号墓は、頭部に受傷痕跡を持つ8体を含む11体の人骨が1つの墓に再埋葬されており、集団間の争いを想起させる。墓が作られた北海道の縄文晩期後葉は西日本の弥生前期にあたることから、農耕文化の受容に伴う広域的な社会変容の可能性もあり、解明には受傷痕跡の成因や人の移動、血縁関係など多角的な検討が必要となる。本研究では、骨考古学・形質人類学・法医学の知見と骨科学分析により、縄文終末期の日本列島で起きた社会変容の実態と合葬墓の埋葬原理を明らかにする。
著者
青野 友哉
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.11-22, 2010-06-01
参考文献数
13

本稿は,埋葬時の遺体周辺が充填環境か空隙環境かによって骨の移動に差が生じるとの考え(奈良,2007)を基に,人骨の出土状況から遺体周辺の環境を判断するための基本事項を整理した。まずは,「充填環境」と「空隙環境」とは埋葬時から白骨化の完了までの遺体周辺の環境を表しており,白骨化の途中で空隙環境から充填環境へと移行する例を示すことで,環境変化を時間的に捉える必要性を指摘した。また,遺体の一部分が空隙となる「部分的空隙環境」には,土砂の流れ込みなど,空隙環境から充填環境への移行時に起こる状況と,遺体を包装するなどの理由で埋葬時から生じる状況の2パターンが存在すると考えた。そして,時間的変化を考慮して人骨の出土状況を観察することで,全パターンの判別と具体的な環境変化の復元が可能となるとの方法論を提示した。次に北村遺跡出土の縄文人骨42例に対して遺体周辺の環境判断を行い,方法論の検証を行った。まずは,充填環境においても遺体の腐食による沈み込みは存在し,埋葬姿勢によっては骨が移動することや,甕被り葬や枕石の存在が骨の移動の要因であることを明らかにした。その結果,明らかに判断可能な人骨の割合は95.2%を占め,人骨を用いた遺体周辺の環境判断は大部分が可能であることを示した。<br>
著者
田村 朋美 青野 友哉 中村 和之
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構 函館工業高等専門学校
雑誌
函館工業高等専門学校紀要 (ISSN:02865491)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.85-92, 2018 (Released:2018-01-31)
参考文献数
11

In this study, chemical compositions were reexamined on the glass beads excavated from the Usu-Oyakotsu site in Date City, Hokkaido. As a result, it was possible to clarify that these glass beads are composed of potash lime glass and potash lead glass. In particular, it is noteworthy that the majority was potash lime glass. In addition, it became clear that the potash lime glass is divided into two compositional types, lead - containing type and lead - free type. Especially for lead - containing type, it might be one of the features of potash lime glass distributed in the early Ainu culture period.
著者
青野 友哉 西本 豊弘 伊達 元成 渋谷 綾子 上條 信彦 大島 直行 小杉 康 臼杵 勲 坂本 稔 新美 倫子 添田 雄二 百々 幸雄 藤原 秀樹 福田 裕二 角田 隆志 菅野 修広 中村 賢太郎 森 将志 吉田 力 松田 宏介 高橋 毅 大矢 茂之 三谷 智広 渡邉 つづり 宮地 鼓 茅野 嘉雄 永谷 幸人
出版者
伊達市噴火湾文化研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

北海道南部の噴火湾沿岸は日本有数の貝塚密集地帯であり、1950年代から貝塚研究の中心地の一つであった。この60年以上にわたり蓄積された調査成果と、現代的な視点で行った近年の発掘調査による新たな分析は、当該地域の環境変遷と人類活動の実態の復元を可能にした。本研究では、噴火湾沿岸の遺跡データの集成と、伊達市若生貝塚及び室蘭市絵鞆貝塚の小発掘により得た貝層サンプルの分析の成果として、時期ごとの動物種の構成比を明示した。これは縄文海進・海退期を含む気候の変動期における当該地域の環境変遷の詳細なモデルである。