著者
中川 有加
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.49-64, 2008-06-30
参考文献数
10
被引用文献数
2

目 的<br> 本研究の目的は,正常に進行している仰臥位分娩において児頭娩出から躯幹娩出に至るまでの会陰保護術に伴う介助者の手指・手掌にかかる圧力値を実測し,会陰への負荷を最小限にする助産術を開発することである。特に熟練助産師(以下熟練とする)と新人助産師(以下新人とする)を比較し,熟練の会陰保護術を圧力という視点から説明する。<br>対象および方法<br> 研究条件を満たし,分娩予定日が2005年11月から2006年10月下旬までの初産婦,経産婦を対象とした。また分娩介助500例以上の熟練,分娩介助50例未満の新人を対象とした。研究に同意が得られ,実施できたのは初産婦17名,経産婦17名および熟練4名,新人11名であった。測定用具は,共和電業製超小型圧力変換器(PSM-1KAB),センサーインターフェースボード(PCD-300A)を用いた。予備研究で同定した助産師の右手4ヵ所および左手6ヵ所に超小型圧力変換器を貼付し,分娩介助を行った。排臨から児の躯幹娩出までをデータ収集時間とし,助産師の両手掌にかかる圧力値を左右別,手掌の区分別に基本統計を算出し比較検討を行った。今回の分析では,仰臥位分娩に限定して,熟練(4名)と新人(3名)を比較した。<br>結 果<br> 熟練と新人の圧力値を比較すると,右示指指間小球(2),右示指中間(3),左第一関節と第二関節中間内側(6),そして左小指先(9)の使い方が異なっていた。【児頭娩出30秒前から児頭娩出まで】新人は,産婦の努責によって下降してくる児を押し返すように圧力を付加していたため,右示指指間小球(2)に圧力をかけて会陰保護術を行っており,その最大値33kPaは,熟練の2倍であった。一方,熟練は,努責に左右されず一定の圧力付加が認められた。その中でも,下降してくる児を受け止める動きのため,右示指中間(3)に圧力をかけて会陰保護術をおこなっており,その最大値29kPaは,新人の4倍であった。<br> また,熟練は,児頭娩出をコントロールするために左示指第一関節と第二関節中間内側(6)に大きな圧力をかけて,児頭をつかむが如くに保持していた。その最大値18.8kPaは,新人の3倍であった。【発露から児頭娩出】にかけて熟練は,児頭を保持するが如くに小指先(9)に常に5kPa前後の圧力をかけて会陰保護術を行っているが,新人の圧力は0に等しかった。<br>結 論<br> 言葉では表せず,伝えにくい助産師の会陰保護時にかかる圧力を工学器機により測定が可能であった。また,熟練と新人を比較することで熟練の技を目に見える形で表現できることが明らかとなった。

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