- 著者
-
鶴永 陽子
- 出版者
- 日本食品保蔵科学会
- 雑誌
- 日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.85-94, 2009-03-31
- 参考文献数
- 50
近年、健康維持にかかわる三次機能(生理的機能性)が注目を集めている。特に、生活習慣病の発症や老化の進行に活性酸素が大きく関与し、その予防策として食品中のビタミン、ポリフェノール類をはじめとする抗酸化物質の摂取が有効であるとする知見が多く報告されている。その中、日常的に飲用できるお茶の機能性が注目を集め、多くの研究がなされている。例えば、緑茶の抗酸化性、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、抗ウイルス作用などの機能性が明らかになり、健康食品素材として高い評価を得ている。また、ツバキ科のチャ葉以外の材料からつくられた健康茶も消費者の「安心志向」「健康志向」を背景に関心が高まっている。これは、健康茶素材の長い食履歴から得られる安心感と、近年の分析技術向上による生理活性機能などの科学的データの裏づけによるところが大きい。例えば、ルイボスティーの便秘解消作用、甜茶の抗アレルギー作用、タラ葉茶の血糖値上昇抑制作用など多数の報告がなされている。特に、グアバ葉ポリフェノールの血糖値上昇抑制作用については、多くの報告がなされ、それを原料としたお茶は特定保健用食品(「血糖値が気になり始めた方の食品」)として販売されている。また、全国各地で、地域資源を地域振興や活性化に活用する動きが活発化しており、その手段として健康茶への利用が増大している。筆者は、島根県内では未利用資源であった「カキの葉」と「ヤマモモの葉」が有する高い抗酸化性に着目して、機能性成分含量の高い健康茶を製造するための技術を開発した。本総説は、筆者が実施した一連の研究成果をとりまとめたものである。