著者
辻村 卓 荒井 京子 小松原 晴美 笠井 孝正
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.35-40, 1997-01-25 (Released:2011-05-20)
参考文献数
14

冷凍あるいは凍結乾燥処理を施した食品中のビタミンおよびミネラルについて実験した。いも2種類野菜11種類を実験試料とした。適当な大きさに切断した試料をブランチング処理後, これらに冷凍および凍結乾燥処理を施し, 以後12カ月間にわたり水分, カロチン, B1, B2, ナイアシン, ビタミンCについて分析を行い, 冷凍および凍結乾燥後の冷蔵保存が各試料中の栄養成分の残存とどのような関係になるかを検討した。(1) ブランチング処理試料についてはカロチン, B1, ビタミンCについて分析を施した。西洋かぼちゃは新鮮試料と比較してB125%, ビタミンC30%を減少させた。しゅんぎくはB115%, ビタミンC30%を失った。カロチンは一定量を示した。(2) 12ヵ月間-24℃に保存した冷凍試料の場合, 水分は変動がない。カロチン含有量が減少したものはさつまいも, チンゲンツァイ, わらびなどであった。 B1, B2, ナイアシンは分析の結果減少を認めなかった。ビタミンCはえんどう (グリーンピース), しゅんぎくで減少した。(3) 12ヵ月間冷蔵庫中に保存した凍結乾燥試料の場合, 水分の変動はなかった。カロチン含有量はアスパラガス, さやえんどう, 西洋かぼちゃ, キャベツ, しゅんぎく, チンゲンツァイ, にんじん, わらびなどで減少した。B1, B2, ナイアシンでは減少を認めなかった。ビタミンCはアスパラガス, さやえんどう, キャベツで減少を認めた。本実験の研究費の一部はビタミンC研究委員会からの援助によるものである。
著者
堀口 俊英 谷岡 由梨 米澤 加代 小島 加代子 小暮 更紗 山内 淳 古庄 律
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.129-134, 2019 (Released:2019-11-14)

コーヒー豆の梱包資材,輸送コンテナ,保管倉庫の違いによる入港時から1年後までの成分変化の分析と併せて官能評価を行い,適切な生豆の品質維持方法について検討することとした。実験の結果,試料生豆は入港時に比べ1年後は,有意に総脂質量の低下がみられ,酸価とpHが上昇した。官能評価の結果は,入港時はいずれの試料もスコア80以上でSPの基準値を上回ったが,1年後はRC/VP/CTW保管が高いスコアを維持していたものの,DC/GS/WTC保管の評価はSPの基準値を下回った。官能評価と理化学的分析値間の相関関係について解析した結果,理化学的な分析により得られた数値の有意性は官能評価の点数をよく反映していることが明らかとなった。これらの結果から,生豆品質は1か月程度の輸送ではコンテナや梱包資材の影響は少ないと判断された。しかし,保管する倉庫の温度,湿度の影響を受け,理化学的分析値である総脂質量,酸価および焙煎試料豆抽出液のpHは経時に変化することが明らかとなった。この中でRC/VP/CTW保管は,最も成分の変化が少なく,1年間程度はSPとして使用可能な官能評価のスコアを維持した。一方,DC/GS/NTW保管の場合は風味の低下が大きく,SPとしての基準スコア80を下回ったことから,半年以内の消費が望ましいと考えられた。
著者
堀口 俊英 谷岡 由梨 米澤 加代 小島 加代子 小暮 更紗 山内 淳 古庄 律
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.55-61, 2019 (Released:2019-08-07)

市場で流通している生産地の異なるスペシャルティコーヒーとコマーシャルコーヒーのpHおよび滴定酸度,有機酸,総脂質量および酸価を測定し,それらの差異がコーヒーの風味に与える影響を官能評価と関連づけて検証した。(1) 各生産地のSPは4.75から5.00,COは4.79から5.05とSPのpHが有意に低く,また滴定酸度は高い傾向がみられ,それらが酸味に影響を与えていると考えられた。(2) 各生産地のコーヒーは,クエン酸の含有量が多く柑橘果実のような酸味を与えていると考えられた。(3) 各生産地のSPの総脂質量は,17.2~18.4g/100gであり,COの17.2~17.6g/100gに比べ多い傾向があり,風味におけるBody(コク,滑らかさ,質感など)に影響を与えていると考えられた。(4) 各生産地の酸価は,2.7~7.1の幅があり,SPは2.7から4.4とCOより有意に数値が低く,生豆の品質指標の1つになることが明らかとなった。(5) 理化学的な分析により得られた数値の有意性は官能評価の点数に反映されていることが判明した。
著者
羽山 裕子 樫村 芳記 阪本 大輔 中村 ゆり
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 2012-01-31

ニホンナシ'幸水'やリンゴ'王林'を用い,リボン型製剤を用いてMA包装用段ボール箱内で1-methylcyclopropene(1-MCP)を処理した場合の鮮度保持効果について検討した。リボン型の1-MCP製剤は,水に溶解させて1-MCPを発生させる粉末型の製剤に比べて1-MCPの発生速度が遅く,規定量の1-MCPを発生するまでの所要時間は6時間であった。また,MA包装用段ボール箱内でリボン型製剤を用いて1-MCPを発生させた場合,箱内の1-MCPの濃度は最大でも規定量の66%であり,規定量の50%以上の濃度を保持した時間は4時間に満たないものと推測された。一方,ニホンナシ'幸水'やリンゴ'王林'に対する1-MCPの処理効果は,リボン型製剤を用いてMA包装用段ボール箱内で処理しても,果肉硬度の低下,地色の黄化,pHの上昇が顕著に抑制され,粉末型製剤を用いて気密性容器内で処理した場合とほぼ同等の高い鮮度保持効果が得られた。本方法を用いれば,処理庫等の設備がなくても簡便に1-MCP処理できることから,個人出荷等の小規模な経営体においても利用しやすいより実用的な処理方法として期待できる。
著者
成澤 直規 川崎 幸正 中島 圭右 阿部 申 鳥居 恭好 竹永 章生
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.273-278, 2014 (Released:2015-03-30)

う蝕原性Streptococcus mutansおよびStreptococcus sobrinusはスクロースを基質として非水溶性グルカンを産生し,歯面表面上に強固なバイオフィルムを形成する。本研究ではセリンプロテアーゼに属するナットウキナーゼの抗バイオフィルム効果について検討を行った。S. mutansとS. sobrinusのバイオフィルムはナットウキナーゼ1mg/ml濃度において約80%程度阻害された。このとき,非水溶性グルカン量の著しい低下が確認された。以上の結果からナットウキナーゼは非水溶性グルカン合成酵素に影響しているものと推察された。セリンプロテーゼに属するトリプシン,プロテイナーゼK,サブチリシンはナットウキナーゼと同程度のバイオフィルム抑制効果を有した。一方,パパインやブロメラインなどのシステインプロテアーゼのバイオフィルム抑制効果はセリンプロテアーゼと比較して著しく低下した。
著者
矢野 昌充
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.51-55, 2003-01-31
被引用文献数
1

キウイフルーツ生産量変動を図1に示した。キウイフルーツは、20年の間に生産者・消費者双方にとって重要な果実への仲間入りを果たした。この20年間は、生産・消費が急激に増大した時期、消費不況による生産の調整期、そして近年の新たな発展に向けての萌芽期とに分けられる。これらを詳細に観察すると次のような解釈になる。これまで経験したことのないイメージの果物のもの珍しさから需要、供給共に急激な成長を遂げたものの、追熟メカニズムの未解明が原因で適切な品質管理ができず、結果酸っぱくて硬いまま店頭に並べられたキウイフルーツは次第に消費者の支持を失い、生産規模縮小を余儀なくされた。その後品質管理の徹底と新品種導入によるイメージチェンジで、新たな取り組みが始まり、消費者に新規果物としての支持復活の兆しが見え始め、現在に至ったと解釈できる三つのステージである。
著者
内野 昌孝 内村 泰 駒形 和男
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.161-167, 1999-08-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
3

さまざまな種類の細菌を純水中で低温・常温両条件下で保存し, 保存前後の菌数を測定することで微生物の水中での生残性を確認した。乳酸菌や納豆菌を含む10属30種, 44株を用いて保存1年後に菌数を計測した。生残菌数については, ほとんどの菌株で102~104のオーダーで減少はみられるものの, 死滅せず生残が確認された。さらに, 微生物の種類により, 生残しやすい温度領域のあることが明らかとなった。以上のことから, 腐敗菌のみならず多くの菌株が食品保蔵中で不活性化した状態で存在できることが明らかとなった。食品中で各種の細菌が常在していることから保存の長期化が進む今日, 細菌の存在と殺菌等を考慮しなければならないと考える。
著者
上田 悦範 山中 博之 於勢 貴美子 今堀 義洋 Wendakoon S.K.
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.73-84, 2019 (Released:2019-08-07)

果実中のアルコール含量を測ることはその果実の香気評価に重要である。果実(バナナ,パイナップル,メロン,トマト,キウイフルーツおよびイチゴ)の未熟果,完熟果,過熟果からカットフルーツを作り,カット直後および3℃,24時間後のエタノールおよびメタノールの含量を測った。過熟のバナナおよびパイナップルから作ったカットフルーツは高いエタノール含量と酢酸エチルの生成も多く,オフフレーバーが発生していた。過熟のメロンからカットしたものも酢酸エチルの生成が多く,やはりオフフレーバーが発生した。一方トマトはカットすることにより3℃,24時間後,急激にメタノール含量が増え,エタノール含量もまたある程度増加し新鮮さが無くなった。イチゴは使用した栽培品種の内,1品種は24時間後および老化後(3℃,2日間)では高いエタノール含量を示し,酢酸エチルの生成も多くオフフレーバーが感じられた。キウイフルーツは熟度やカットにかかわらずエタノール,メタノールが低含量でそのエステル生成もみられなかった。完熟果におけるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を調べたところ,高い活性を示す果実は,キウイフルーツを除き,アルコール含量も高かった。ペクチンメチルエステラーゼの活性はトマトが他に比べて非常に高く,トマトカット後のメタノール急増の原因と考えられる。エステルの生成能力はすべての果実で認められ(キウイフルーツは極低活性),過熟果実のオフフレーバーを加速していると考えられる。カット後すぐに供給され,消費される業種形態もあるので,室温でカット後,2時間までのアルコール含量変化を完熟のバナナ,トマト,イチゴで調べたところ,これらの果実は24時間冷蔵の結果と同じ傾向であった。完熟イチゴおよびトマトをカット後,直ちに測った場合,それぞれエタノールおよびメタノールは極少量検出されたのみであった。イチゴは両品種とも急激なエタノールの増加が起こり,オフフレーバーが認められた。一方,トマトでは遅れてエタノールが増加し始めたが,2時間までは新鮮さが保たれていた。
著者
内野 昌孝 山岸 亨 辻井 良政 高野 克巳
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.47-50, 2003-01-31
被引用文献数
3 2

平成7年の新食糧法施行による規制緩和に伴い、輸入米の増加や国内の米流通の多様化が進む中、消費者の美食指向ともあいまって、銘柄米の品質、食味が一層重視されるようになった。その中で、農林水産省は精米の品種、産地、産年の表示を義務づけ、流通体系についても食糧管理法に定めている。しかし、精米の粒形は品種間で類似するため、うるち米ともち米、ジャポニカ種(短粒)とインディカ種(長粒)など大まかな区別はつくものの、近縁の米同士の品種を外観で見分けることは困難である。そのため、流通過程における異品種混入の事故に当たっては、混入したと思われる個体や次世代の草姿、形態的特徴から品種判別が行われている。しかし、これらの判別法は多大な労力と時間が必要になるにもかかわらず決定的な判別根拠とはなっていない。したがって、精米からの簡易で正確な品種判別法の開発が求められている。米は様々な物質から構成されるが、その主要な成分では、品種の差が見られない。一方、DNAは乾燥、酸化や熱に対して安定で、様々な情報を持ち、微量で実験を行える利点がある。その利点を利用して、うるち米では品種判別が進められているが、もち米では少ない。そこでDNAを利用したもち精米の品種判別を検討した。
著者
辻村 卓 荒井 京子 小松原 晴美 笠井 孝正
出版者
一般社団法人 日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.35-40, 1997-01-25
参考文献数
16
被引用文献数
1

冷凍あるいは凍結乾燥処理を施した食品中のビタミンおよびミネラルについて実験した。<BR>いも2種類野菜11種類を実験試料とした。適当な大きさに切断した試料をブランチング処理後, これらに冷凍および凍結乾燥処理を施し, 以後12カ月間にわたり水分, カロチン, B<SUB>1</SUB>, B<SUB>2</SUB>, ナイアシン, ビタミンCについて分析を行い, 冷凍および凍結乾燥後の冷蔵保存が各試料中の栄養成分の残存とどのような関係になるかを検討した。<BR>(1) ブランチング処理試料についてはカロチン, B<SUB>1</SUB>, ビタミンCについて分析を施した。西洋かぼちゃは新鮮試料と比較してB<SUB>1</SUB>25%, ビタミンC30%を減少させた。しゅんぎくはB<SUB>1</SUB>15%, ビタミンC30%を失った。カロチンは一定量を示した。<BR>(2) 12ヵ月間-24℃に保存した冷凍試料の場合, 水分は変動がない。カロチン含有量が減少したものはさつまいも, チンゲンツァイ, わらびなどであった。 B<SUB>1</SUB>, B<SUB>2</SUB>, ナイアシンは分析の結果減少を認めなかった。ビタミンCはえんどう (グリーンピース), しゅんぎくで減少した。<BR>(3) 12ヵ月間冷蔵庫中に保存した凍結乾燥試料の場合, 水分の変動はなかった。カロチン含有量はアスパラガス, さやえんどう, 西洋かぼちゃ, キャベツ, しゅんぎく, チンゲンツァイ, にんじん, わらびなどで減少した。B<SUB>1</SUB>, B<SUB>2</SUB>, ナイアシンでは減少を認めなかった。ビタミンCはアスパラガス, さやえんどう, キャベツで減少を認めた。<BR>本実験の研究費の一部はビタミンC研究委員会からの援助によるものである。
著者
上田 悦範
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.41-45, 2002-01-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
20
被引用文献数
3
著者
弘中 和憲 石橋 憲一 小疇 浩 宮下 裕幸 森 元幸 津田 昌吾 高田 明子
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.67-74, 2005-03-31
参考文献数
30

3品種の国産加工用ジャガイモを5および12℃で90日間貯蔵し、インベルターゼ、スクロース-6-リン酸シンターゼ(SPS)およびUDP-グルコースピロホスホリラーゼ(UGPase)活性を測定した。この研究の目的は、それらの3酵素に及ぼす貯蔵温度の影響の検討である。5℃貯蔵のジャガイモは12℃に比べ多くの還元糖を蓄積した。さらに、低温(5℃)はインベルターゼおよびSPS活性を増加させた。これらのことより、これらの2つの酵素は加工用ジャガイモの低温における還元糖増加に、重要な役割を担っているものと推察された。
著者
弥中 和憲 石橋 憲一 小疇 浩 小林 祥則 森 元幸 津田 昌吾 高田 明子
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.9-14, 2005
被引用文献数
4

3品種の国産加工用ジャガイモを5および12℃で90日間貯蔵し, インベルターゼ, スクロース-6-リン酸シンターゼ (SPS) およびUDP-グルコースピロホスホリラーゼ (UGPase) 活性を測定した。この研究の目的は, それらの3酵素に及ぼす貯蔵温度の影響の検討である。5℃貯蔵のジャガイモは12℃に比べ多くの還元糖を蓄積した。さらに, 低温 (5℃) はインベルターゼおよびSPSは活性を増加させた。これらのことより, 加工用ジャガイモの低温における還元糖増加に, この2つの酵素は重要な役割をになっているものと推察された。
著者
荻原 博和
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-37, 2010-01-29
参考文献数
57

近年、日本もライフスタイルの変化とともに豊かな食生活を享受することになり、食品に対するニーズも多様化してきた。食品流通のグローバル化が進み、様々な形態の食材や食品が輸入されるようになり、食肉や食肉製品も盛んに輸入されるようになった。しかし、これらの食のグローバル化と連動するかのように、食品を取り巻く環境も急激に変動し、従来の食品媒介病原細菌だけでなく、新しいタイプの病原菌による食中毒も発生するようになり、食品に対する安全性の対策が急務となってきている。特に食肉や食肉製品の業界においては食品の安全性の確保は重要な課題となっている。その対策として1995年には、総合衛生管理製造過程(HACCP)の承認制度が施行され、1996年には本格的に食品業界へのHACCPが導入されるようになり運用が進んだ。最近では農場から食卓までの衛生管理の考えに基づく、生産、製造、流通、保存を経て消費に至るまでの衛生管理を通して、食の安全を確保する考えが主流になっている。さらにこれらの考え方を踏まえた、新しい食品安全マネジメントであるISO 22000の導入も進んでいる。本総説では食肉および食肉製品の非加熱技術による微生物の制御について、環境雰囲気の制御(ガス置換)による食品関連細菌の発育抑制効果や、ガス置換包装における最適なガス組成について述べる。次に、高圧処理ならびに高圧二酸化炭素処理による殺菌効果とその殺菌メカニズムについて考察を行い、さらに非加熱技術を利用した微生物制御法の食品へ応用について解説する。研究。
著者
阿久澤 さゆり 佐野 紘子 石山 緑 前橋 健二 小山 洋一
出版者
一般社団法人 日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.341-345, 2012 (Released:2022-03-11)
参考文献数
12

The general composition, collagen and sensory profiles were compared between spent laying hen muscle and broiler muscle to determine the best function as a food material. The moisture and fat contents were lower and protein content was higher in spent laying hen muscle than in broiler muscle. The total free amino acid content was lower in spent laying hen muscle than in broiler muscle; however, the collagen content was comparatively higher in spent laying hen muscle. B reast and thigh muscles from spent laying hens had higher mean values of toughness than those from broilers and the mean values of tenderness and juiciness were lower in spent hen muscle than broiler muscle. Our results suggest that spent laying hen muscle would be more suitable for utilization as processed minced meat because it is a collagen-rich food material.
著者
ロンポパック テラヌード シリパニ ジンタ 上田 悦範 阿部 一博
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-8, 2005-01-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
10

バナナ (Sucrier) における棚持ち期間の延長を目指して, 低酸素処理の方法を検討した。追熟処理の後, 果色が緑色に黄色を帯びた段階 (ステージ3) で低酸素処理を行った。5%酸素の調整ガス下および48時間窒素ガス処理では, 3-4日の棚持ち期間を有する空気下に比べて1-2日その期間が延びたに過ぎなかった。ポリエチレン袋 (厚さ0.03mm) を使い24, 48時間窒素ガス封入したところ5-6日まで棚持ち期間を延長できた。内容成分である糖の増加は外観にかかわりなく, 順調に増加した。24時間ポリエチレン袋に窒素ガス封入の後, さらにポリビニールクロライドフィルムでラップするとさらに棚持ち期間を9-11日まで延ばすことができた。
著者
阿知波 信夫 片寄 政彦 阿部 一博
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.341-346, 2003-12-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
28
被引用文献数
6 9

強酸性電解水を利用したカットキャベツの実用的な殺菌処理方法を確立した。カットキャベツの処理量に対する処理水量の比率および処理時間を, 従来の殺菌剤である次亜塩素酸ナトリウム水処理と比較して同等の殺菌効果となる条件を明らかにした。続いて強酸性電解水と次亜塩素酸ナトリウム水で処理後のカットキャベツ中のトリハロメタン量を経時的に測定したところ, 次亜塩素酸ナトリウム水処理では保存72時間後までほぼ一定して0.05mg/kgのクロロホルムが検出し続けたのに対し, 強酸性電解水処理では直後でも不検出であった。官能試験 (パネラー30名) では次亜塩素酸ナトリウム水処理直後臭いや食味に問題ありと判定した人が半数以上いたが, 強酸性電解水処理では直後でも異常ありと判定した人は1名以下であった。また, 次亜塩素酸ナトリウム水処理では放置60分後には臭いや食味で異常ありと判定した人は2名以下となった。つまり, トリハロメタンは残存していたにもかかわらず, 臭いや食味では異常を感じないということが判明した。強酸性電解水処理ではトリハロメタンの生成もなく, 消費者へ提供する直前に食品を処理しても臭いや食味にほとんど異常を与えない点からも, 有効な処理方法であるといえる。