- 著者
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高山 成
木村 玲二
神近 牧男
松岡 延浩
張 興昌
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 農業氣象 (ISSN:00218588)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.3, pp.173-189, 2004-09-10
- 被引用文献数
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黄土高原における砂漠化対処に必要な環境モニタリングを目的として、降水の特性について検討した。まず黄土高原における年降水量について、空間分布、安定性(ばらつき)、トレンドを調べた。次に降水の季節パターンに着目し、夏季を中心とした雨季において、降水がどの程度安定して出現するかについて検討した。はじめに1980年から2000年までの53地点の日降水量データを基に、Boosrap法より年平均降水量の区間推定を行った。さらにこの区間推定値を基準として年降水の時系列トレンドを調べた。次に1年を5日間単位の期間に分け、各期間の期間降水比{PRP(、j)}と降水安定度{PSI(、j)}との関係より、各地点における降水の季節パターンについて検討した。年降水量の平均はengeri(騰格里)砂漠、Wulanbu(ウランブ)砂漠の周辺(N38-41°、E104-107°)で最も少なく、低緯度になるほど降水量は増加した。しかし、2つの砂漠の西側に位置するQuilian(チーリエン)山脈周辺の地域(N37°30'、E101°20')は多降水な地域であった。また、Maowusu(毛烏素)砂漠北部とWulanbu砂漠北東の地域、Wugong(武功)周辺の地域は、年降水量の変動が最も大きいが、Quilian山脈周辺の多降水地域やその南方の山岳地域などは年降水の変動が小さかった。年降水量のトレンドについては黄土高原全域を平均した場合、有意なトレンドは見出せなかった。しかし、個別の観測点について見た場合には、数箇所の観測点で増加または減少のトレンドを有する可能性が示唆された。本研究では期間降水比{PRP(、j)}と降水安定度{PSI(、j)}との関係から雨季安定度{RSS(j)}を提示し、夏季を中心とした雨季における降水の安定度(変動度)を評価した。その結果、黄土高原においては同程度の年降水量の地域であっても、東側地域が西側地域よりも雨季に出現する降水が不安定であることが明らかとなった。