著者
金児 石野 知子 石野 史敏
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.16-23, 2013-04-01

PEG10,PEG11/RTL1は胎盤形成に必須の機能を果たす遺伝子である。どちらもLTRレトロトランスポゾンに由来しており,PEG10は胎生の哺乳類(有袋類と真獣類),PEG11/RTL1は真獣類にのみ保存されている。すなわちこれらの遺伝子はレ卜ロトランスポゾンが祖先のゲノムに挿入後,内在遺伝子化し,自然選択を受けたものであることが分かる。遺伝子機能を考えあわせると,これらの遺伝子獲得が胎盤形成を通じて,胎生という生殖様式をとる獣類,真獣類というそれぞれ哺乳類の亜綱,下綱の形成に重要な寄与をはたしたことも確かであろう。LTRレ卜ロトランスポゾンが内在遺伝子化するイグザプテーション機構は,「ほぼ中立説」に従うプロセスと自然選択による「ダーウィン進化」の2段階のステップから構成されると考えられる。また,イグザプテーションの起きる場所として,DNAメチル化レベルが比較的低い胎盤は好条件下にある。「胎盤は哺乳類進化の実験場として機能した」という仮説を提唱したい。

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