- 著者
-
岩田 力
磯谷 正敏
原田 徹
金岡 祐次
亀井 桂太郎
前田 敦行
高山 祐一
- 出版者
- 日本腹部救急医学会
- 雑誌
- 日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.4, pp.773-776, 2013-05-31
- 参考文献数
- 17
要旨:経肛門的直腸異物は,精神障害や性的嗜好あるいは事故により肛門から異物が挿入され,抜去不能となったものである。瓶類,玩具や缶の蓋などの報告例は多いが,石膏による直腸異物の本邦報告例はない。今回,われわれは石膏を経肛門的に注入し,全身麻酔下にS状結腸に切開を加え異物を摘出した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。症例は32歳男性,既往歴は特になし。10年以上前より自慰行為にて肛門より液体状の石膏を注入していた。2011年6月に液体状の石膏500mLを注入,排出困難のために当院救急外来受診した。血液検査では炎症反応の高値を,腹部CTでは直腸からS状結腸におよぶ高吸収体を認めた。石膏注入後約15時間後に全身麻酔下に経肛門的に摘出を試みたが不可能であり,開腹手術へと移行した。開腹して腹腔内よりS状結腸の異物を肛門側に押し出そうとしたが押し出せず,S状結腸に切開を加え18×6×6cmの石膏を摘出した。直腸粘膜の損傷を認めたために低位前方切除術を施行した。術後経過は良好で第11病日に退院した。