著者
近内 トク子
出版者
山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.35-44, 1993-03-25

Shakespeareは作家として出発した初期の一時期に,ペストの大流行に出会った。1592年から1594年のことのことであった。この間,劇場はこの疫病のため閉鎖されたままであった。この疫病の流行の時期に,彼は詩集を二編,すなわちVenus and AdonisとThe Rape of Lucreceを書き上げ,出版した。この時期に彼は,The Sonnetsの最初の部分も仕上げたと考えられる。Venus and Adonisは1593年,The Rape of Lucreceは1594年に出版されているが,この二つの詩集は両方ともSouthampton伯に献呈された。彼はThe Sonnetsの美しい貴公子に当る人物と考えられる。Venus and AdonisはThe Sonnetsの中の最初の17篇,つまり貴公子に詩人が結婚をすすめた部分と極めて共通している。似た表現が見られるだけでなく,同じテーマや同じ意図が込められている。この論文は,Venus and AdonisとThe Sonnetsの最初の17篇との間の類似性と,テーマの同一性を検討する。結論として,Venus and Adonisは17篇の結婚ソネットと同様,美しい貴公子に,疫病に打ち勝つため早く結婚して子孫をもうけなさいとすすめる詩である。詩人は若い貴公子が,子孫をもうけることで,その生命が永遠に続くことを願って歌っている。

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