著者
古牧 徳生
出版者
神戸市看護大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:13428209)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.101-115, 1999-03-04

本稿では,「自己決定」の根底にある人間の特質としての「自由」がいかなる意味を持ち,いかなる構造をしているかが考察される。ここでは「自由」はカント的に「道徳法則」による「自律」のうちに捉えられる。そしてこの「自律」が成立する構造が「選択」という観点から考察され,「自律」の成立のためには「道徳法則へ向かう選択」と共に「道徳法則へ向かわない選択」も認められねばならないことが主張される。ここから「自由」とは本来的には,「道徳法則」である「尊厳」を実現せしめるための手段であるが,そのためには「道徳法則」へ向かわない可能性も保証されていなければならないことが示される。そこでこの「本来的自由」と「非本来的自由」を区別するために,「自由」には必然的に「差別」が必要とされることが説明され,さらに「差別」の否定によってもたらされる現代の「自己決定」社会の混乱が指摘される。

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