著者
梅本 信也/山口 裕文
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学農学部学術報告 (ISSN:1344848X)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.25-31, 1999-06-15

京都大学理学部(KYO), 東京都立大学牧野標本館(MAK)と国立科学博物館(TNS)および中華人民共和国の中国植物科学院(PE)と南京大学(N)の標本室に保存されているタカサブロウ属(キク科)の〓葉標本301点と各国植物誌におけるタカサブロウ属の分類学的記述, および笠原(1974)と笠原・武田(1978)の雑草の種子と果実に関する考古学的研究におけるタカサブロウ属にかかわる成果を検討し, タカサブロウEclipta thermalis BungeとアメリカタカサブロウE.alba(L.)Hasskarlの日本への帰化時期と帰化様式を推定した。タカサブロウは, 植物地理学的には東アジアの湿潤温帯部に本来の分布域を持ち(Tables 2,4), 稲作とともに日本にもたらされ, 少なくとも弥生時代には日本の低湿地に分布した史前帰化植物であり(Table 3), 一部は近代の物流拡大に伴って再導入されたと考えられた(Fig.1)。一方, アメリカタカサブロウは, 新世界の北・中米に本来の分布域を持つコスモポリタン種であり(Table 4), 日本へは第2次世界大戦とその終了にともなって1948年以降に軍事散布された(Fig.1;Table 1)と考えられた。

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