著者
村松 正隆
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
pp.103-115, 2003-03-15

論者は本橋において,フランス革命期に学問上のリーダーシップをとると同時に,現実の医療政策にも少なからぬ影響を与えたイデオロジスト,カバニスの議論を取り上げる。カバニスの哲学は市民に対して,「自らの情念が公益のかわりを占めてしまうことがないように」良識を要求するものであったが,この要求は何らか超越的審級への訴えによってなされるものではなく,人間本性それ自身に基盤をもつものであった。この論点を理解するためには,カバニスの主要著作『心身関係論』の議論を整理しなければならない。「感覚性」の概念を導きの糸としつつ人間における「肉体的なもの」の重要性を強調するカバニスは,さらに人体において諸器官がお互いに「共感」しあいながら,全体的なネットワークをなしていることを強調する。この「共感」の概念は,さらに他者とのコミュニケーションの場面においても重要な意義を持つようになる。人間は他者に「共感」することによって初めて自らの情念ではなく公益に従う存在となる。だからこそカバニスにとっては,「共感」の能力,ならびにこれと密接なつながりをもつ「模倣」の能力を陶冶することが重要となる。

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