著者
村松 正隆
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
no.2, pp.115-131, 2004-03

18世紀後半から19世紀前半にかけてのフランスの哲学者、生理学者たちの課題の一つは、人間が行う「生命的活動」と「精神的活動」との割り振りをいかに行うか、また両者の関係をいかに理解するかにあったといえる。生理学の発展によって、「精神」と「物質」という伝統的な秩序の間を占める新たな秩序として「生命」が立ち上がった時期において、カバニス、あるいはビシャといった生理学者たちは、コンディヤックの感覚論を受けつつ、生命現象の秩序を通じて思惟の現象を理解するという道筋を経て、思惟の現象を理解しようとした。これは、生理学において対象的な形で取り出された概念図式を、思惟の理解のためにアナロジカルに転用したものと言える。他方、メーヌ・ド・ビランは、コンディヤックやカバニスの思想を受け継ぎつつ、「生命」と「思惟」との関係性を論じる道筋を、別途に開発しようとした。その道筋とは、両者に共通する現象である「習慣」を媒介とすることで、「生命」と「思惟」とに共通する特徴を見出しつつ、両者の区分を引くというものであった。その結果見出されるのは、「生命」と「思惟」とが単純に対立するものではなく、「思惟」がときに「生命」のもたらす効果に対立しつつも、思惟としての取り分を確立するために、何かしら「生命」に似ていく部分がある、そうした両者の錯綜した関係であった。
著者
星川 佳広 飯田 朝美 村松 正隆 内山 亜希子 中嶋 由晴
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.217-228, 2006-04-01 (Released:2007-05-10)
参考文献数
22
被引用文献数
7 4

The aim of the study was to measure the cross-sectional area of the psoas major muscle (P-ACSA) in high school athletes and to produce a P-ACSA index independent of body size using an allometric modeling approach to examine the differences in gender and sport specialization. The subjects were 254 female (16.8±0.8 yrs) and 540 male (16.9±0.8 yrs) high-level high school athletes from 17 different sports. Fat-free mass (FFM) was measured by the Bod Pod system (LMI) and P-ACSA was determined by magnetic resonance imaging at the center of the L4-L5 transverse level. Since the power function model fit the data better than a simple linear model in the correlation between FFM and P-ACSA, and the power exponent parameter was almost equal to the theoretically anticipated 2/3 in both genders, the P-ACSA per FFM2/3 as well as the absolute P-ACSA was calculated. Both of the absolute P-ACSA and P-ACSA per FFM2/3 were significantly different according to gender and the sport specialization. While volleyball and badminton players and canoeists showed smaller P-ACSA, in accordance with the previous studies on senior sprinters, high school sprinters also showed predominant development of P-ACSA regardless of gender. These results suggested that regular involvement in sprinting activity could affect the size of the psoas major muscle in high school athletes.
著者
星川 佳広 飯田 朝美 村松 正隆 井伊 希美 中嶋 由晴
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.367-378, 2010 (Released:2014-04-03)
参考文献数
32
被引用文献数
1

短距離選手における股関節屈筋群(大腰筋,大腿直筋)の筋形態と機能の関係を調べるため,各筋断面積と股関節屈曲トルク,角速度を測定し,相関関係を調べた.被検者は女子 24名,男子 25名の短距離選手と,比較対象としてのバレーボール選手(女 27名,男 37名)および非トレーニング群(男女各 10名)であった.被検者の最大屈曲トルクは等速性筋力装置(Biodex System 3)により角速度 3.14rad/秒で測定し,最大の屈曲角速度指数はバリスティックマスター(コンビ社)による膝振り上げ速度を大腿骨長で除すことで求めた.各筋断面積は MRI 法でもとめた.短距離選手では,大腰筋サイズ(筋断面積×身長)は屈曲トルクと弱く有意に相関(女 r =0.48,男 r =0.34)したが,大腿直筋サイズは有意な相関関係がなく,両筋サイズは股関節屈曲トルクや角速度を決定する強い要因ではなかった.全被検者を対象にした場合,男女ともに屈曲トルクと大腿直筋,大腰筋サイズにはいずれも中程度の有意な相関関係があり,また大腰筋サイズは屈曲角速度指数とも弱いが有意な相関関係があった.短距離選手とバレーボール選手を比較した場合,絶対値,体格補正値にかかわらず,大腿直筋断面積に有意差がなく,大腰筋断面積は短距離選手がバレーボール選手より有意に大きかった.屈曲トルクはバレーボール選手が短距離選手より有意に大きかったが,屈曲角速度指数は短距離選手がバレーボール選手より有意に大きかった.短距離選手に見られる顕著な大腰筋発育は角速度向上に有利で,スプリントパフォーマンスに対して合理的な適応であると考えられた.
著者
星川 佳広 村松 正隆 飯田 朝美 井伊 希美 中嶋 由晴
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.153-165, 2011 (Released:2013-04-12)
参考文献数
34

本研究は男女のジュニア短距離選手において,股関節筋群の筋力と筋横断面積を調べることを目的とした.被検者は男女計45名の高校生短距離選手であった.また同年齢の長距離選手(11名)と非トレーニング群(18名)が比較のために参加した.股関節伸展・屈曲筋力(角速度3.14 , 5.23rad/s)は等速性ダイナモメータで計測し,大腰筋と大殿筋の横断面積をMRI法で求めた.短距離選手の股関節筋力は,非トレーニング群,長距離選手と比較して伸展側でより強かった.筋横断面積(体格補正値)は,女子では短距離と長距離選手で差異がなかったのに対して,男子では大腰筋,大殿筋ともに短距離選手が長距離選手よりも大きな値を示した.股関節筋力は屈曲,伸展ともに競技レベルと無関係であったが,競技レベルの高い短距離選手は,女子では大腰筋の,男子では大殿筋の横断面積が大きかった.これらの結果は,男女ともに短距離選手はジュニアにあっても股関節伸展力の高さを特徴とすること,股関節筋群の形態発育では男女で傾向が異なることが示唆された.
著者
村松 正隆
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
pp.103-115, 2003-03-15

論者は本橋において,フランス革命期に学問上のリーダーシップをとると同時に,現実の医療政策にも少なからぬ影響を与えたイデオロジスト,カバニスの議論を取り上げる。カバニスの哲学は市民に対して,「自らの情念が公益のかわりを占めてしまうことがないように」良識を要求するものであったが,この要求は何らか超越的審級への訴えによってなされるものではなく,人間本性それ自身に基盤をもつものであった。この論点を理解するためには,カバニスの主要著作『心身関係論』の議論を整理しなければならない。「感覚性」の概念を導きの糸としつつ人間における「肉体的なもの」の重要性を強調するカバニスは,さらに人体において諸器官がお互いに「共感」しあいながら,全体的なネットワークをなしていることを強調する。この「共感」の概念は,さらに他者とのコミュニケーションの場面においても重要な意義を持つようになる。人間は他者に「共感」することによって初めて自らの情念ではなく公益に従う存在となる。だからこそカバニスにとっては,「共感」の能力,ならびにこれと密接なつながりをもつ「模倣」の能力を陶冶することが重要となる。