- 著者
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熊田 一雄
- 出版者
- 愛知学院大学
- 雑誌
- 愛知学院大学文学部紀要 (ISSN:02858940)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, pp.1-12, 1997
この論文の目的は,哲学者のベイトソンや社会学者のギデンズが,先進資本主義社会全域で目立たない形で拡がる共依存概念に関して提起した理論的問題に対して,日本の斬新宗教であるGLA系論教団がいかなる日本的で現実的な解決策を提示しているかを分析することにある。1970年代以降の日本社会における宗教変動には,「新宗教からセルフヘルプヘ」という流れが存在するが,心理療法関係者の運営するセルフヘルプと異なり,GLA系諸教団の内観サークルは,明確な回復の形を提示している。第1章では,共依存概念について簡単に説明する。第2章では,現代日本の内観サークル運動の全体像とその一種ともみなしうる斬新宗教のGLA系諸教団について概観し,筆者の調査対象である「エルランティの光」について説明する。第3章では,ベイトソンが示唆した「近代社会そのものの共依存性」に対するこのグループの解決策を見る。第4章では,ギデンズが指摘した「後期近代社会における再帰的自己形成とそのジレンマ」に対するこのグループの解決策を見る。最後に弟5章では,このグループの提示する共依存からの回復の形における「反近代と近代の強化の併存」を分析する。 GLA系諸教団は,反近代的要素と近代を強化した要素を巧妙に組み合わせて共依存者に対して現代の日本社会における明確な回復の形を提示している。現世解説的宗軟性と組み合わされた「神と自分の間に他人は入れない」というスタイルは,反近代的な要素である。内向的宗軟性と組み合わされた「心の明るさ」を基準として日々「心を見る」仕事を怠らず「心を管理する」という発想は,近代を強化した要素である。