- 著者
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加納 恭卓
- 出版者
- 石川県農業短期大学
- 雑誌
- 石川県農業短期大学研究報告 (ISSN:03899977)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.31-39, 1990
イチゴ果実の成熟とエチレンとの関係について調べた。1.ポットに植え,30℃下で栽培したイチゴの果実は,20℃の果実より早く成熟した。果実からのエチレン発生量は果実が赤く着色し始める時期に最も多くなった。また,果実からのエチレン発生量が最も多くなる時期は,30℃で生育した果実の方が20℃のものより7日早くなった。2.開花1日前の果実をin vitroで培養した場合,BA(ベンジルアデニン)を添加した培地で培養したものは,BAを添加しないものに比べ成熟が抑制された。果実からのエチレン発生量は,培養開始後次第に減少したが,赤く着色し始めた時に増大した。BAを添加した培地のものは,添加しないものに比べ,エチレン発生量の増大する時期が5日ほどおそくなった。3.本圃で栽培していたイチゴから白緑色の果実を採取し,ABA(アプシジン酸)水溶液をしみこませたろ紙と純水をしみこませたろ紙の上に静置したところ,処理後5日目にはABAのものは果色がピンク色になっていたが,純水のものはまだ白色であった。またこの時点で,ABAを処理した果実からのエチレン発生量は,純水のものに比べ1.78倍もあった。4.白緑色の果実にエチレンを処理すると,成熟はむしろ抑制されたが,白色の果実の場合には影響されなかった。イチゴ果実にエチレンを処理しても成熟か促進されなかった理由として,(1)エチレンはイチゴ果実か成熟した結果発生したものである,(2)イチゴの果実組織が外生エチレンに反応する生理的状態に達した時には,すでにその組織中には成熟を促進するのに十分な内生エチレンが存在している,との2つの推論がなされた。