- 著者
-
平尾 邦雄
- 出版者
- 宇宙航空研究開発機構
- 雑誌
- 東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.4, pp.1356-1366, 1966-10
電離層における電子温度の様相はK-1 S- 号機観測ロケットによって上りと下りの曲線を測定している.電子温度のプローブはスピンの軸に対してちょうど垂直に,ペイロードの頂上にすえつけられた.それゆえ,電子温度の測定は姿勢の影響を受けないので,測定された電子温度はかなり小さな分散を持ち,まったく確信が深い.プローブは鹿児島宇宙空間観測所から1965年8月28日に約72kの最高高度に飛ばされた.だから,測定された電子温度の様相は電離層が上端と底部の両方を,おおっている.一見して上昇曲線の様相は,下降曲線のそれとは全く異なっている.特に高度200kmにおいてしかりである.高さの段階が約60kmにずらされたとき二者の間に著しく似た様相が見られる.この似たような様相は下降時よりも上昇時において低いレベルで現われている.それゆえ南東の方向にむけて上向きに傾斜する層状構造のように見える.そして温度は北西から南西に,約200°K減っている.現在の結果だけの意味あいでこの温度の分布状態を分析するのは非常に困難である.しかしながら,単純な見地より見ると,電離層における大気成分の層状構造によって電子温度の層状構造が起因されているように見られる.しかも両曲線の間の温度の相違点は緯度による電子温度分布の一般的傾向によるのであって,それは他の論文に述べられている.