著者
日高 秀夫 立川 涼
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.14-29, 1983-12

第22次南極地域観測(1980-1982)において採取した大気, 雪, 海水, 魚介類などの有機塩素化合物(DDT, PCB, HCH)を分析し, 昭和基地周辺の環境濃度と, 基地活動による汚染について検討した。昭和基地の風上方向約13kmのとっつき岬で採取した雪の有機塩素化合物濃度と組成は, みずほ基地の風上約0.6kmの雪とほぼ同じであった。とっつき岬と昭和基地近辺の海水では, 濃度は同レベルであったが, PCB組成が若干異なった。海氷下の水の動きも考慮し, とっつき岬には大気・海水経由での基地からの汚染はないと判定した。基地近辺で採取した底生魚のショウワギス中のPCB濃度は, とっつき岬で採取したショウワギスより約30倍高く(p<0.001), DDTは約2倍高かった(p<0.01)。基地近辺の底生生物は, 南極地域外の魚と比べると低濃度ではあるが, 基地から漏れたPCBによる汚染をかなり受けており, DDTにも若干の影響を受けていると結論づけられる。今後, 基地からの汚染をなくすための, より厳密な廃棄物対策が必要であり, とくに, これらの有機塩素化合物汚染の推移と新たな汚染物質に対応するため, 底生魚を中心とする計画的な試料の採取と保存が望まれる。

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