著者
幸喜 善福
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.429-554, 1978-12-01
被引用文献数
1

本論文は, 塩害の原因となる飛塩が, 地表物体にいかに付着し, 供給されているのかその実態と, これをどのように制御しうるかについて, 主として沖縄における測定値によってとりまとめ, 防潮林造成上に必要な基礎的諸問題の解明をはかったものである。1)モールの銀滴定法と比電導度法の関係は次式によって示される。Y=0.0269x+0.2625 (r=0.999) y=0.0527x+0.6002 (r=0.998)式中Y : 100ccの蒸留水中に溶出した塩素量(mg), y : 同塩分量(mg), x : 同比電導度の値(μ℧/cm)である。2)ガーゼヘの付着塩分は, ガーゼの重ね枚数は少ないほうが多量の塩分が付着する。また, 野外および室内実験によってガーゼの露出時間は2時間が最適であるが, 4時間まで露出してもたいした問題にはならない。3)なお, ガーゼヘの付着塩分量とブラシへの付着塩分量の間には良好な相関関係があり, ブラシはガーゼの約4.5%の付着塩分量である。4)ガーゼに付着する塩分量が, 海岸から500mまでの範囲でどのように分布しているか沖縄島の本部町備瀬崎, 宜野湾市大謝名, 沖縄市泡瀬の各地で実測し, 国内各地での測定結果と比較すれば, 海岸線近くでは備瀬崎だけが2g/m^2/hr程度で, 国内各地の砂浜での値と似たオーダーであるが, 大謝名, 泡瀬では完全に1桁小さい。しかし, 180∿200m以上内陸に入れば0.1g/m^2/hrのオーダーになって, 国内各地より1桁ないし2桁も大きくなる。沖縄ではエーロゾル状態の飛塩が多く, 砕波による大粒の湿った飛塩は, 沖のサンゴ礁で発生するのが多いため, 海岸に到達する部分が少ないことによるものと考えられる。5)植物体に付着する塩分量においては, 単位葉面積当り付着塩分量の平均的な値は, 針葉のものではモクマオウで5.92×10^-2mg/cm^2,リュウキュウマツで4.75×10^-2mg/cm^2,広葉のものではモンパノキが3.12×10^-2mg/cm^2,オオハマボウが3.17×10^-3mg/cm^2,タイワンウオクサギ, サトウキビ, アダン, テリハクサトベラ, フクギ, アオガンピの順に1.70×10^-3mg/cm^2から1.13×10^-3mg/cmに少なくなる。針葉のものは広葉に比較して5∿50倍も多く付着するが, 広葉のものでは葉の表面に短柔毛があり, しかも葉脈による凹凸の多いモンパノキとオオハマボウが顕著に多くなっている。当然のことながら海岸線から内陸に入るにつれて付着塩分量は減少し, 防潮林の風上林縁と風下林縁では前者に多い。各樹木については高いところほど付着塩分量が多くなるが, 吹きぬけのある場合は地面近くにも多くなる部分ができる。要するに風が強く(多く)吹きつける部分に付着塩分量が多くなっている傾向がある。6)降雨水に含まれる塩分については, 月平均では9月が最高で3.7×10^2μ℧/cmに達するが, 11月から2月までは2.6×10^2μ℧/cmの状態が続く。最低は6月で4.4×10μ℧/cm位と1桁近く低下し, 7月, 10月は7∿8×10μ℧/cm位, 年平均は約1.8×10μ℧/cmとなる。沖縄本島を横断しての分布は西海岸で3.0×10^2μ℧/cm, 東海岸でその2/3,内陸部では1/2から1/3位の平均値になる。東海岸では夏季に, 西海岸では冬季に多くなる傾向がある。台風と北西季節風に大きく支配されている。連続降雨については, 測定回数目盛の対数と含塩量の対数が逆比例し, 最初の含塩量の多少にかかわらずほぼ一定に減少し, 3∿4回目に半減し, 7∿9回目で約1/10になる。したがって降雨量が少ないほど含塩量は大となる。これに対し台風時の降雨では, 一般に台風が接近するほど含塩量が急増し, 最初の2∿17倍にも達し, その後漸減する。また, 樹幹流下水および樹冠滴下水中の塩分量の月別変化も, 降雨の場合と相似であり, その平均値は前者で降雨の9倍, 後者で5.7倍になる。海岸線近くでは内陸の約3倍になる。連続降雨では3回目で1/2ないし1/3になる。7)ガーゼおよびブラシヘの付着塩分量には数日ないし十数日周期の変動があるので, 観測結果は観測時刻ごとに毎月の平均値もしくは合計値で示した。全体の平均では13時の観測値は9時の値に対して, ガーゼ付着塩分量で50%, ブラシ付着塩分量では100%の増になる。風速は24%, 気温は8%の増となるが湿度は15%の減少となった。17時の観測値も大同小異であった。付着塩分量と平均風速との関係を任意に選んだ11ケ月の毎日のテーターを用いて直線・対数・指数の3つの相関係数を求めた結果, 対数回帰の相関が最もよく, ガーゼヘの付着塩分のほうがブラシヘのものよりすぐれ, 9時の観測値が13時, 17時のものより相関のよいことが示された。そこで9時の全観測値について回帰係数ならびに相関係数を求めたが, 3ケ月の特例以外は相関係数は高度に有意であったが, その法則性は明らかでなかったので, 毎日のテーターを予測に用いることは妥当でないことがわかった。毎月のそれぞれの観測値の合計においても対数関係が適用されることから次式をえた。ΣlogS_G=0.5628ΣV^^

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こんな論文どうですか? 海岸保全的見地からの沖縄の飛塩に関する研究(林学科)(幸喜 善福),1978 http://t.co/fv7CYNcK
こんな論文どうですか? 海岸保全的見地からの沖縄の飛塩に関する研究(林学科)(幸喜 善福),1978 http://id.CiNii.jp/5O0L

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