著者
倉谷 健治
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.1-28, 1997-02
被引用文献数
1

高温での炭化水素と窒素よりHCNを生成する過程を電算機シミュレーションした。適切な素反応群と反応速度定数とを用いればよいのであるが, 実験値は僅かであるのに対し, 計算に用いられる反応式, 速度定数は多数で任意性が極めて高く, 何らかの規制を加えないと, 極言すればどうにでも実験値と符合させることが可能である。このうち反応式は原系から生成系に至ると考えられる反応を一旦網羅し, 感度解析を行って不要なものを削除すればよいのであるが, この際, 反応式が素反応であるか, 逆反応が平衡定数から精確に算出可能であるかが大きな問題である。素反応性を確認する方式が確立されていないし, 多数の文献でも多くの矛盾が見られるので, 怪しい反応を取り込むことを避けるのが望ましい。また, 素反応として, 平衡定数より逆反応の速度定数を求める場合には生成熱の精確さが重要なので, これにも検討を加えた。一方速度定数についてはBaulchの推薦値があるものはこれを優先第一順位とし, それが見あたらない時にはMiller, その他の推薦値を, さらにそれも見られない場合には文献に頻出し, 多数の人が採択している速度値を用いることにした。しかし, CH_3+CH_3→C_2H_4+H_2の反応についてはWarnatz説とHidaka説とでは大差があり, その影響も極めて大きいので, ここでは両者を比較検討した結果, Hidaka説に従うこととした。これらの検討の結果, 可逆性に疑問のある場合には正方向のみの反応として, 簡素化を徹底し表8の機構を提案した。

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