著者
松本 三和夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.30-43,123**-122, 1992-06-30

科学者、科学者の行動、科学者のネットワーク、科学者集団、科学制度、社会システムのすくなくとも六つの活動水準を分析の単位として、どのような型の首尾一貫した科学社会学の理論が構成できるかを吟味し、理論の帰結を科学者集団の制度化論に関連づけて特定する。<BR>一九八〇年代以降、科学社会学は問題ごと、研究センターごとに研究スタイルの細分化が進むいっぽう、分野全体を基礎づける概念や理論にかならずしもじゅうぶんな見通しが得られていない。こうした状況に鑑み、本稿ではまず科学社会学の基礎概念を決め、研究前線における多様な研究動向間の橋渡しが可能なよう、科学社会学の外延を確定する。ついで、科学社会学の課題の内包を内部構造論、制度化論、相互作用論に分節して特定し、科学者集団の状態記述に関するかぎり、各課題が相互に共約可能であることを証明する。<BR>最後に、制度化論を見本例として理論の含意を例示する。とりわけ、制度化がじっさいにどのような起こり方をするかのパターンに関する規約 (制度化の規約) を理論に導入すべきことを提唱する。それを用いて理論を展開し、事実分析にとって有意味な、しかし直観だけではみえにくい逆説的な帰結 (専門職業化が制度化を伴わぬ事例 [ナチズム科学] の存在) が導けることを示したい。

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