- 著者
-
荒川 哲郎
- 出版者
- 三重大学
- 雑誌
- 三重大学教育学部研究紀要. 教育科学 (ISSN:0389925X)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, pp.1-6, 1982
人や物とのかかわりが少なかった一精神遅滞児が指導者との経験の共有を積み重ねることで、他者とのコミュニケーション行動を確立していった。特に本児の場合模倣行動がコミュニケーション行動を円滑に進める基盤となったと考えられる。また象徴機能の発達と共に、動作を記号化し、それを道具的に使用し、コミュニケーションすることがみられた。そして他者認識も深まり、コミュニケーションの相手を情況により選択していることがうかがわれた。また、人とのやりとりが内面化され、相手とのコミュニケーションに期待感がでてきた。そして具体的な場面だけにとらわれないで、自己のイメージにより自己のコミュニケーション行動を調節することがみられた。このように言語の諸機能の獲得がコミュニケーション行動の変容過程に認められた。