- 著者
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CARNEY Judith
HIRAOKA Mario
肥田 登
- 出版者
- 学術雑誌目次速報データベース由来
- 雑誌
- 地學雜誌 (ISSN:0022135X)
- 巻号頁・発行日
- vol.107, no.1, pp.49-60, 1998
- 参考文献数
- 39
- 被引用文献数
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本論では, アマゾン河の河口部における小農が生計の維持に役立てているジュパチヤシjupati (Raphia taedigera) の意義に関する生物地理的, 社会・経済的研究について述べる。特に, 最近関心のもたれている研究, すなわちアマゾン河流域における森林伐採に取ってかわる方法としての土着の農的林業システム, とりわけ市場向きの生産物を生み出すことと持続可能な土地利用システムを備えているヤシの役割に注目する。これまでの研究においては, アサイヤシaçaí (Euterpe oleracea) の実の市場における経済的有用性に着目した事例は見出せはするものの, 同じ湿潤域に存在するヤシでありながら, ジュパチヤシに着目した研究は皆無に等しい。ジュパチヤシは, 土地の人々に対して数々の有用な恩恵を施しているが, 換金作物としての市場性には欠ける。このような特徴を備えたジュパチヤシは, アマゾン河の河口部ににおいて最も広範囲に見出される。葉柄部の外皮は, 小エビを採る道具・筒の材料に好んで使われている。小エビの販売は, 河口部の河畔に住む現地人・リベリーニョの絶好の現金収入となる。本研究では, アマゾン河下流域におけるジュパチヤシについての植物地理的側面からの概観, ジュパチヤシの繁茂にとっての水文条件, リベリーニョが生計の維持に採り入れているジュパチヤシ利用に関する彼ら固有の知恵についてふれる。