著者
湯田 豊
出版者
神奈川大学
雑誌
語学研究
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-66, 1982

I, 4,1-5。アートマンによる世界創造が説かれている。アートマンは人間の形をしていたのであり, この人間としてのアートマンは自己をアートマン(夫)とその妻に分割し, 配偶となって人類を始め蟻に至るまで一対をなすものを創造した。世界創造が男女のセックスによってなされるという着想は極めて興味深いものがある。創造(srsti)に関して特記すべきことの一つは, 創造者と被造物の間にまったく区別のないことである。I, 4,6。アートマンは人間(=死すべき存在)であるにもかかわらず, 自己のなかから不死なるもの, すなわち, アグニ(火)およびソーマ(湿気)を始めとして神々を創造した。この創造はセックスによるそれと区別して「超創造」(atisrsti)と呼ばれる。I, 4,7-10。ここでは, アートマンが創造であるというよりも, むしろ万物に内在する全体的なものであることが説かれている。そして, それと並んでブラフマンが「この一切」(idam sarvam)であることも述べられている。すべての個別的なものは「名称と形態」であり, アートマンは全体的なものである。ブラフマンもまたアートマンと同じくsarvaである。I, 4,11-15。これらの箇所に関しては, ブラフマンによる世界創造がテーマである。ブラフマン(=バラモン階級)を始めとして, クシャトラ(=クシャトリヤ), ヴィシュ(=ヴァイシュヤ), およびシュードラの神的ならびに人間的な階級の創造が説かれている。そして, 王権をチェックするものとして, ダルマ(法)の重要性が強調される。I, 4,16-17。ここでは, ふたたびアートマンが主題になる。五大祭, すなわち, 神々, 聖仙, 祖先, 人間, および動物に対する奉仕によって, アートマンはすべての存在の生活領域になる。そして, このアートマンは心(manas)として, 自己の配偶者であることば(vac)の助けを借りて創造する。アートマンは心, その妻はことば, その子孫は息, その財産は眼と耳, その行為は身体である。しかし, アートマンは形而上学的な原理ではなく, 心, ことば, 息, 耳, 眼, および身体からなる。アートマンとは, 要するに, 広い意味での「行為」にほかならない。この行為と別にアートマンが存在するわけではない-atmaivasya karma(それの行為がアートマンである)!

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こんな論文どうですか? ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド, I, 4,1-17(湯田 豊),1982 https://t.co/z9MFFsOoVg
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