著者
前田 裕文
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.125-128, 1986-03-15

わが国における少年非行は,昭和26年をピークとする第1の波,39年をピークとする第2の波,そして現在は第3の波である。この第3の波は,非行事実の量,質ともに最高を記録した。今日の非行には,いくつかの特色があり,本研究はそのなかの初発型非行について着目したものである。初発型非行は,今日の非行の約3分の2を占めるといわれ,その動機は単純で,内容はささいであるが,そのままにしておけば重大な犯罪につながる可能性の高い非行形態である。本研究は,昭和56年度に旭川地方でみられた少年非行( 193件)を調査し,その概略をつかんだ。さらに,そのなかから初発型非行と考えられ,資料が豊富な5人の児童から事例研究によって個人の内面にせまり,少年非行対策のひとつの手がかりを見出すことを意図し,研究をすすめた。その結果,旭川地方における非行は,中心都市である旭川市に集中し,万引・自転車盗・不良交遊など典型的な初発型非行が多く,また一過性のものであった。非行年齢は,13歳と14歳に集中し,中学生によるものが非常に多かった。非行要因はさまざまであるが,欠損家庭,共働きによる母親不在,監護教育の欠如などの家庭での問題,学業不振,児童・生徒と教師間の相互障害状況などの学校での問題,情報化社会,非行文化の氾濫などの社会での問題が考えられた。以上から,旭川地方の家庭,学校,地域総ぐるみの非行対応策が望まれる。

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