著者
小菅 充子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.85-94, 1989-03-31

近年健康に対する関心度は高く,特に成人病と食塩摂取量との関係が注目され,日常の食生活においても減塩志向が盛んである。一方加工食品の利用率も年々増加の傾向にあり,1日の食塩摂取量に対する加工食品の占める割合も高いと考えられる。本実験では,最も一般的な加工食品である即席麺と即席汁物を取り上げ,その利用上の注意点を求めることを目的に,全食塩量および食する際の食塩濃度を測定し,次の様な結果を得た。表示通りの方法で調理を行った即席麺の汁の食塩濃度は1.00∿1.52%と,一般の汁物の好ましいとされる食塩濃度に比べてかなり高い値であった。また汁物の即席麺の全食塩量は4.29∿6.54gで,この差は各麺の汁の容量の差と食塩濃度の差によるものであった。焼きそば類は調味料を麺の回りにまぶす方法をとるので,2.49∿3.30gと汁物の麺よりかなり低い値であった。即席汁物のうち,味噌汁の全食塩量は1.49∿2.53gであるのに対し,すまし汁のそれは1.14∿2.10gとやや低い値であった。カップ入りのものを除いた他のものは1椀分となっているが,盛りつけ量を考慮して食塩濃度を算出すると,本学学生の家庭の味噌汁およびすまし汁の食塩濃度の測定値よりかなり高い値となってしまう。1日1人当りの食塩摂取量は10g以下,特に本態的高血圧の予防の面からは3∿5gに保つことが望ましいとされている現在,測定された様な高い値の食塩量を含む即席麺や即席汁物の利用には,充分の注意が必要であろう。一方塩味の好みは学習により習慣形成されて行くとされるので,今回測定された様な高い食塩濃度の摂取がくり返されぬ様,表示以上の稀釈を行う等の配慮がなされるべきと結論できる。なお食塩の定量については,調理上の塩味として考える時には,従来行われているようなナトリウムまたは塩素のいずれか一方の測定値のみからの食塩量の算出では,問題が多い様に思われる。

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