著者
松本 真
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-41, 1996

正中動脈を例にあげて, 形態にたいする見かた, 方法論について述べる.現象論ないし変異論的には, 正中動脈は成体の8%ほどに出現する枝である.その形成を要因論または機械論的に実証することは, 他の肉眼解剖学的形態についてと同様, きわめて困難である.過程論的には, 個体発生において, 正中動脈は前腕部で骨間動脈にひきつづいて形成される主要枝である.さらに, ツパイにおける個体発生や比較解剖学的考察から, 正中動脈は系統発生的に霊長類の祖先段階で, 成体においても残存し, 機能する枝であったことが推測される.真猿類, 狭鼻類としての段階における変化について, 機能的意義を推論した.これらのさまざまな見かたは, 形態の持つ要素を互いに相補的に分析するものだが, 系統発生がその中心に認識されることが肝要である.また, そのような分析を可能にするうえで, 霊長類の比較研究の重要性が認識される.

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