- 著者
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松村 ちづか
- 出版者
- 順天堂大学
- 雑誌
- 順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.31-40, 2002-03-29
在宅痴呆性老人家族介護者Hさんが,痴呆の義母の辛い介護体験を乗り越え,自己を強化し,介護体験を肯定的に人生に意味づけていく過程を「自己強化のプロセス」と規定し,そのプロセスと,そのプロセスに関わる他者の関わりが,介護者の内面にどのような意味をもたらしているかを半ライフヒストリー的手法を用いて探求した。その結果,Hさんは,混乱・引き受け・ネットワーキング・選択・変化・自己実現というプロセスを経て,痴呆性老人の介護体験を自己の人生に肯定的に意味づけていた。また,その過程に重要な関わりを持つ他者として,家族や血縁の身内・介護する痴呆性老人自身・他介護者・ペットなどの動物や星などの自然があり,様々にHさんの内面に影響していた。Hさんは,痴呆の介護という困難な状況を自己の人生に肯定的に意味づけていったが,その核になるものとして,Hさんの生育過程の中での自己を大切にするあり方があり,そのあり方が他者との関わりの中でさらにエンパワーされ,介護体験と共に,そのあり方,生き方を変化させていったと考えられた。