著者
土居 久子 北島 靖子 大野 ゆう子 西村 あをい 大槻 優子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.31-38, 1990-03-25
被引用文献数
1

****18〜21才の84名の本学学生(女子)を対象に,女性性機能,女性の役割を認識させる一歩として,月経に関する実態調査を行った.調査内容を初経の状況,月経の状態,月経に伴う心身の変化と行動,月経のとらえ方の視点から検討した.その結果,初経教育は10〜12才に学校で受けた学生が多いが,初経を告げた相手は母親が多かった.月経に伴う心身の変化は月経前より月経中に腰痛,腹痛,憂うつなどが多かった.月経中の行動では控える行動は多いが積極的にとる行動は少なく,月経痛への対応も消極的対応が多かった.月経に関する記録は約半数の学生が取っていたが,月経の日のみの記録が多かった.月経のとらえ方はプラスイメージが多かった.初経時のお祝い,月経の持続日数,月経のとらえ方それぞれと現在の月経の不快症状との間に関連はみられなかった.以上のことから,今後,学生個々の状況を検討しながら,月経時の対応として体操,服薬,記録などについて指導する必要がある.また,それらを通じて女性の役割について考えさせていきたい.
著者
野田 洋子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.55-65, 2001-03-29
被引用文献数
1

月経の経験は女性の生涯における健康,QOLを考える上で重要な要因である。本研究は若年女性(18-22歳の女子短大生)の月経の経験と関連要因,ことに楽観性・悲観性との関連を明らかにするものである。記名式自己記入式質問紙法による配表調査を行った結果,2,391名の有効標本が得られた。分析の結果,月経周辺期の変化,月経観,月経のセルフケア行動に楽観性・悲観性が関連していることが明らかとなった。1.オプティミストは月経周辺期の変化を低く捉える傾向にある。2.オプティミストは月経をポジティブに捉える傾向にある。3.オプティミストは自尊感情,自己の性に対する満足度が高く,ストレスを感じることが低い傾向にある。4.オプティミストは月経痛に対し積極的セルフケア行動をとる傾向にある。5.ペシミストは月経をネガティブに捉える傾向にある。以上の結果は,今後月経周辺期変化の強い者への看護面接を行っていく上での考慮すべき要件となる。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.41-50, 2000-03-29

本研究の目的は,内的作業モデル尺度の構造を明らかにするために,対人的関係性(親密性,依存性,援助の拒否)や自己への信頼感(無力感,孤独感,適応感)との関係を検討することと,縦断的データによってそれらの変数の変化を検討することである。被験者は95名の看護短大生で,1年時の4月,6月,3年時の4月,9月の4時点で同一の質問紙調査に答えてもらった。主な結果は次の通り。1.因子分析の結果,アンビバレントは対人的不安と一般的な自信のなさの2つに分かれ,回避は自力志向と情緒的関係の回避の2つに分かれた。それぞれの2要因間の相関は弱く,また対人的関係性や自己への信頼感との相関関係も異なる部分が見られた。これらのことはアンビバレントと回避の尺度は1つの要因ではなく,異なった複数の要因から成っていることを示している。2.時期による得点の違いに関しては,対人的不安とIWMの安定性,親密性が有意だった。対人的不安は学年の進行と共に減少する傾向が見られ,安定性は2ケ月半の病院実習の後で増えていた。4時期間の相関は2年半の間隔の場合も含めて比較的高く,これらの変数に関して大きな変動は少ないことが示された。
著者
弓 貞子 竹内 登美子 若佐 柳子 桑子 嘉美 片桐 美智子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-42, 1993-03-25

この研究は平成3年に行った表記テーマの研究を土台に行ったものである。研究その1の成果に基づき43名の学生に,改良した実習記録用紙を使用させ,学習効果を測定した。又,記述内容の評価には,教員・学生の双方が使用できる同一の評価用紙を作成した。2つの仮説を基に結果を導き出し,次のような結論を得た。1)情報収集部分の学習の良否が,患者の把握や,看護計画の内容の良さを決定するという事が,仮説検定の理論によっても明かになった。2)改良した実習記録用紙の情報部分では,9割の学生が,必要とする内容を記載できていたので,この様式は学習上有効であるといえる。但し,3)に挙げた注意が必要である。3)教員の評価と学生の自己評価の比較では,7割(14項目)に差が無く,3割(6項目)に有意な差が見られた。差のあった項目のうち4項目は情報部分であり,情報が記入されていても,その意味を理解しているとは限らず,指導上注意が必要である。4)合格ラインに達していなかった項目は,「検査及びその結果」・「予測される問題点」の2つであった。今後特に,指導上の工夫が必要である。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.44-53, 1992-03-25
被引用文献数
1

学業-職業志向が異なる女子青年においては,性役割に関する自己認知の様相が異なるだろうという仮説のもとに,性役割と関連する特性について看護学生と社会科学専攻の女子大生を比較検討した。その結果次のことが示された。1)理想自己については,看護学生の方が女性性に該当する特性をもちたいとしていた。2)現実の自己に関しては両群間にほとんど差はなかった。しかし3)自己を認知する時の中心的な軸,及び4)自我同一性と性役割特性との関連の仕方において相違が見られた。社会科学系専攻の女子大生においては,外界に積極的能動的にかかわり一人でやっていく力-男性性-をもつかどうかが,自己認知の中心的な枠組みで,個の力をもつ者は全体的に好ましい特性をもつし,「確かな自分」をもつこととの関連も非常に強かった。それに対し看護学生においては,共同性や関係性-女性性-の方が自己認知の枠組みとして重要であり,他者とのかかわりに関する肯定的な特性をもつことが,個の力をもつことと同様に「自分の確かさ」と関連することが示された。
著者
牛澤 美恵子 北島 靖子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.14-24, 1995-03-25
被引用文献数
1 1

本学学生の子どもに対するイメージとその変化について幼稚園・保育園実習前,実習後,小児病棟実習後の3期について調査し分析した。その結果,幼稚園・保育園実習を経験することにより,多項目の肯定的なイメージが強まった。また小児病棟実習により「きれい」の項目が強まり,「純粋」「好奇心」「明るい」「楽しい」「みずみずしい」の5項目のイメージは幼稚園・保育園実習後よりも弱まった。しかし幼稚園・保育園実習前と比較すると弱まった項目は無く,「正直」「楽しい」「おもしろい」「きれい上「子どもと話したい」「一緒に遊びたい」「だっこしたい」「守ってあげたい」「子どもに触れたい」「好き」の10項目が強まっていることがわかった。子どもに対する肯定的なイメージを強める小児病棟実習の条件は,患児とのコミュニケーションがよくとれること,小児病棟実習を楽しかったと思えることであった。また小児病棟実習が楽しかったと思えることに影響を与える,患児に関する実習条件は,コミュニケーションレベル,病状,状態の変化である。効果的な小児看護教育のために学生のレディネスに合わせた実習条件を整えていくことが重要であると考える。
著者
高谷 真由美 黒木 淳子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.117-128, 1997-03-29
被引用文献数
1
著者
鈴木 淳子 工藤 綾子 山口 瑞穂子 村上 みち子 服部 恵子 岩永 秀子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-16, 1994-03-25
被引用文献数
1

本研究は,基礎看護技術を教授するうえで必要な科学的裏付けを明らかにする研究の一環として行っているものである。今回は,バイタルサインの測定技術の教授に必要な知識がどの程度実証されているか,過去10年間の看護関係の文献から明らかにした。検索した文献を(1)血圧測定,(2)体温測定,(3)脈拍測定,(4)心拍測定に整理し,考察した。呼吸測定については該当する研究がなかった。その結果,血圧測定時には測定器具の特徴を考慮すること,測定者による誤差を少なくする為に最小血圧を読む時の減圧をゆっくりしたほうがよいとの結果を得た。清潔援助や体位が血圧に及ぼす影響については,仰臥位による測定が妥当とされた。血圧測定方法に関しては,測定部位と心臓を同じ高さにする必要性や,上腕の太さが測定値に影響を与えることが検証された。体温測定に関しては,体温計の特徴を理解して使用することが必要とされた。体温測定時の変動因子については,身体の露出,腋窩検温では皮下脂肪の厚さが測定値に影響を与えること,入浴後60分後に入浴前の体温に戻ることがわかった。測定方法については,水銀体温計での腋窩検温の測定時間は10〜15分間必要であること,測定部位を一定にする必要性が明らかになった。また,口腔温よりも腋窩温の方が高いとは一概に言えないとの報告,老人のオムツ内検温の有用性の検証など,対象者の状態を考慮した測定部位の選択の必要性が示唆された。脈拍,心拍測定については,運動,入浴などの影響を考慮し,1分間測定することが必要であることが実証された。
著者
土居 久子 幅下 貞美
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.36-42, 1995-03-25

Kaup指数による非妊娠時体型と妊娠中の体重増加量が分娩に及ぼす影響について検討を加え,以下の結果を得た。1.非妊娠時Kaup指数は初産婦で20.1±3.8,経産婦20.0±2.3,分娩時Kaup指数は初産婦で24.0±3.3,経産婦24.0±2.4であった。2.非妊娠時体型では,肥満群に妊娠中毒症が好発し,特に蛋白尿が高率にみられた。また,分娩時出血量は経産婦において肥満群に有意に多かった。陣痛促進率は肥満群に有意に多く,肥満妊婦は自然の陣痛が発来しにくく,帝王切開率も多い。肥満と分娩所要時間については,陣痛促進率との関係が大きいため有意差はみられなかった。3.非妊時の体型別にみた体重増加量は,やせ群9.5±3.6kg,標準群10.0±3.2kg,肥満群8.6±3.1kgであり,肥満群の体重増加量が最も少なかった。児の生下時体重は増加度の高い群ほど大きく,3000g程度の新生児を分娩するにはやせ群では体重増加量が10〜12kg,標準群では9kg程度の増加量が望ましいと思われる。肥満群については特に指標が認められなかった。妊娠中の体重増加を妊娠初期,中期,末期別にみるとそれぞれ,0.88±1.8kg,4.8±1.9kg,4.1±1.9kgであった。肥満群では妊娠末期の体重増加量が多く,有意差がみられた。以上のことから妊婦の体重コントロールに非妊時体型を算出することは意義が大きく,妊婦の個々に合わせた栄養指導が必要である。
著者
松村 ちづか
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.66-76, 2001-03-29
被引用文献数
2

本研究の目的は,終末期在宅療養者の自己決定と家族の意向が不一致な状況を解決し療養者の自己決定を実現しようとする際の熟練訪問看護者の判断内容を抽出し,その内容から熟練訪問看護者が意図するケア機能を分析することであった。5名の熟練訪問看護者を対象とし,熟練訪問看護者が療養者の自己決定を支援する家庭訪問場面の参加観察と面接を基に,帰納的質的方法を用いて分析した。そして以下のような結果を得た。1.熟練訪問看護者の判断内容50カテゴリーが抽出された。2.熟練訪問看護者の判断内容から導き出されるケア機能として,査定機能,モニタリング機能,サポート機能,教育機能,アドボカシー機能,関係構築機能,調整機能が抽出された。以上の結果から,在宅看護において訪問看護者が終末期療養者の自己決定と家族の意向との不一致を解決し療養者の自己決定を支えるためには,正確な査定・モニタリング力と共に,療養者と家族に対するサポート機能・アドボカシー機能・関係構築機能の重要さが示唆された。
著者
松本 孚
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.83-92, 1996-03-29

幸福という概念を総合的,網羅的に分類しようと試みた結果,結論として次のような分類体系が考案された。1.内からの幸福:1)身体的幸福,2)行動的幸福,3)心理的幸福:(1)自ら、幸福と思う場合,(2)自ら幸福と思わない場合,(3)欲求満足,(4)欲望からの解放,(5)理性や徳への準拠,4)自己実現,5)全人的調和,6)自己超越。2.外からの幸福:1)外部環境としての幸福:(1)他者環境の幸福,(2)家庭環境の幸福,(3)組織やコミュニティの幸福,(4)社会の幸福,(5)人為的自然環境の幸福,(6)自然環境の幸福,2)外部環境と個人の相互作用としての幸福:(1)対人関係の幸福,(2)個人と組織の関係の幸福,(3)個人と社会の関係の幸福,(4)個人と人工物との関係の幸福,(5)人間と自然の関係の幸福。
著者
山口 忍 荒賀 直子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.33-40, 2000-03-29

看護職を選択する人に共依存傾向があるといわれていることから,看護を選択した女子学生129名と,看護以外の学科を選択した女子学生134名を対象に,今後の学生指導に役立てることを目的として,学生本人の育てられ方や共依存傾向の実態を調査し,以下の知見が得られた。1.看護学生と看護以外の学生の入学直後の生活背景では,大きな差はなかった。2.入学時では看護学生と看護以外の学生の,共依存傾向に大きな差はみられなかった。3.看護学生と看護以外の学生の,母親の育児姿勢と,本人の共依存傾向の関連はなかった。4.看護学生の,看護職を選択した理由を,共依存的群と非共依存的群に分類し,母の育児姿勢,本人の共依存傾向について比較した結果,共依存的群の得点が有意に高かった。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.48-56, 1990-03-25

本稿は,我々がそれぞれもっている「正しさ」の枠組み-何が正しいこと,よいことなのか-が,どのような経験の中で何によって作られていくのかを考察するものである.コールバーグは「公正さの道徳性」の発達段階論を提唱し,その発達には他者との相互作用の中で自分とは異なった他者の視点をとる経験(役割取得)が重要だとした.それに対しギリガンは,コールバーグの発達理論は男性の発達を描いたものにすぎないと批判し,女性はそれとは異なった「配慮と責任の道徳性」をもち異なった発達過程をたどること,その違いは他者-世界との関係の仕方が男女で異なることに由来すると指摘した.本稿では,日本における道徳判断の発達を実証的に検討した研究と関連させて,二つの道徳性が,我々が経験する二つの基本的な対人関係に基づいて構成されるという仮説が提起される.二つの対人関係とは(1)自他が明確に分化された関係と,(2)自他を明確に分化しないままにかかわる関係であり,それぞれ父親,母親との関係に原型があると考えられる.父親的関係,母親的関係の中でいかに「正しさ」が構成されるのかの考察がなされ,更に日本のしつけ-対・子供関係-の特徴が二つの対人関係との関連で論じられる.
著者
松村 ちづか
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.31-40, 2002-03-29

在宅痴呆性老人家族介護者Hさんが,痴呆の義母の辛い介護体験を乗り越え,自己を強化し,介護体験を肯定的に人生に意味づけていく過程を「自己強化のプロセス」と規定し,そのプロセスと,そのプロセスに関わる他者の関わりが,介護者の内面にどのような意味をもたらしているかを半ライフヒストリー的手法を用いて探求した。その結果,Hさんは,混乱・引き受け・ネットワーキング・選択・変化・自己実現というプロセスを経て,痴呆性老人の介護体験を自己の人生に肯定的に意味づけていた。また,その過程に重要な関わりを持つ他者として,家族や血縁の身内・介護する痴呆性老人自身・他介護者・ペットなどの動物や星などの自然があり,様々にHさんの内面に影響していた。Hさんは,痴呆の介護という困難な状況を自己の人生に肯定的に意味づけていったが,その核になるものとして,Hさんの生育過程の中での自己を大切にするあり方があり,そのあり方が他者との関わりの中でさらにエンパワーされ,介護体験と共に,そのあり方,生き方を変化させていったと考えられた。
著者
園城寺 康子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.76-85, 1995-03-25

P.D.JamesのThe Skull beneath the Skinは本格派イギリスミステリーであると同時に文学的スリラーと評価されている。この小説の舞台であるCourcy IslandはAmbrose Gorringeの犯罪の性質を語る重要な役割を果たしている。彼は一連の犯罪に大いにかかわったにもかかわらず,真犯人が自殺したこともあり,その犯罪は法のもとで裁かれなかった。彼の犯罪は証明が困難で,素人探偵Cordelia Grayの聖なる常識によって浮かび上がってくる性質のものであり,この視点はある意味では作者James自身のものでもある。だからこれは現代的犯罪の特殊で複雑な性質を描きだした犯罪小説と解釈できる。