著者
真鍋 征一 藤岡 留美子 池田 幹 中原 千佳
出版者
福岡女子大学
雑誌
福岡女子大学人間環境学部紀要 (ISSN:13414909)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.13-19, 1998-02-25

分散染料の高分子固体中への拡散挙動を明らかにすることを目的とした。そのため試料として超分子構造の明らかな多孔性再生セルロース中空糸モジュールPLANOVA^<TM>を採用した。平均孔径10,15,35および75nmの4種を用い特に35nmの試料を中心に拡散係数を測定した。分散染料としてDisperse Orange 3 (C.I. 11080), Disperse Orange 1 (C.I. 11005), Disperse Red 1 (C.I. 11100)の3種のアゾ系染料を選定した。分散染料の水溶液中での溶解状態を変化させるため(1)水溶液中に溶解および分散した溶液(分散染料をそのまま水に溶解させた溶液), (2)溶液(1)を平均孔径15nmのPLANOVA15で濾過し粒子成分を除去して得られる分子状に溶解した溶液, (3)溶液(2)にベンゼンを飽和させた溶液, の3種の溶液を作製した。拡散係数Dは定常法により, 298,313,333 Kで測定し, 拡散の見掛けの活性化エネルギーΔH_aをDの温度依存性より算出した。分配係数Kは残液法で溶液中の染料濃度より算出した。膜透過率φは一定の膜間差圧下でのデッドエンド型の濾過前後での染料濃度より算出した。染料濃度は可視分光光度計で染料の最大吸収波長における吸光度より決定した。その結果(1) Kは1&acd;20の間にあり, 分散染料は再生セルロースにほとんど吸着しない。溶液(2)の場合がKは最も小さく, 溶液(1) と(3) でのKはほぼ等しい(K≒10), (2) 孔中を拡散するには水溶液中に溶解した染料分子のみである。拡散後の溶液には分子状に溶解した成分のみで分散粒子の状態の成分はない, (3) Dの値には溶液(1)<溶液(2) ≒溶液(3)の関係があった, (4) 孔中の分散染料の拡散の見掛けの活性化エネルギーΔH_aは-12&acd;12kJ/molにあり水分子の熱運動が分散染料の孔中の拡散を支配している, (5) Kを考慮し, かつ溶解成分の比率αを考慮したデータ解析, 水中での中空糸膜の空孔率εを用いて算出されるDの理論値(=(ε・D_p/(K・曲路率))(立体因子)(粘性因子), D_pはStokes-Einsteinの式で与えられる)は実測のD値の約10倍である, (6) 溶液(3) を用いれば濃度勾配に逆らった染料分子の拡散が起こる場合がある。これらの結果より分散染料が高分子固体中の孔を拡散するのは, 溶解した成分のみであり, 分散粒子の存在は拡散を妨げるように働くと結論される。また孔中の拡散においても貫通孔ではない高分子固体内部の微小孔への分散染料分子が滞留する効果を考慮する必要があると考えられる。

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編集者: Tech5678
2021-11-28 07:36:50 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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