著者
山本 卓
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.1-22, 1999-03-01

アラゴン後期の代表作『死刑執行』には、作者自身の自我の投影である「二重人間」が登場する。同一人物の公的な面と私的な面とを代表するアントワーヌとアルフレッドの二人がその二重人間だ。彼らはそれぞれに、作者の内面の対立する両極を具現化した存在である。この二人の対立を通して、後期のアラゴンの内的な葛藤が明らかにされていく。実はしかし、この、二重人間という認識のための仮説は、ロマネスクな世界に入り込むための出発点にしか過ぎないのだ。アラゴンはこうした対話の装置を媒介としつつ、より高度の多声的な構造を持った作品空間を構築していくからである。二つの声による対話は、副次的なさまざまの声を呼び寄せつつ、やがては数多くの声が語り合う多声的な空間を創造していく。本稿では、そうした多声的空間生成のプロセスを、パフチンなどの理論と対照しつつ考察する。

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