著者
高橋 里美
出版者
九州大学言語文化部
雑誌
言語文化論究 (ISSN:13410032)
巻号頁・発行日
no.10, pp.51-75, 1999

1940年代から60年代にかけてのアメリカ構造主義言語学と行動主義心理学の影響下で栄華を誇った対照分析仮説(Contrastive Analysis Hypothesis)は、第二言語習得における母語の役割(母語転移・母語干渉)を最重要視する研究課題であった。しかし、1970年代初頭の合理論的立場(rationalist position)の台頭で次第にその勢力は失われ、代わりに人間の認知活動に焦点を当てた研究基盤(cognitivist paradigm)が打ち立てられた。この新たな研究基盤はさらに2つのグループに分類され、主として北米を中心に創造的構成仮説(Creative Construction Hypothesis)を、そして、ヨーロッパを中心に中間言語仮説(lnterlanguage Hypothesis)を第二言語習得研究の新研究課題として提唱する派が結成された。この2つの仮説においても、第二言語習得における母語転移の問題が継続して扱われた。特に、創造的構成仮説支持派は、当初、母語の影響はほとんどありえないとする立場をとったが、1970年代後半になると、第二言語の習得において母語は必ず何らかの役割を果たすとする立場をとるようになった。その多くはどの言語にも普遍に見られる発達過程を第二言語習得の中枢過程とする一方で、どのような条件の下でどのような影響を母語が及ぼすかを研究の対象とした。一方、ヨーロッパでは、母語の役割についての学習者自 身の知覚に焦点を当てた研究が盛んになった。本研究は、これら70年代後半以降の新しい認知研究の枠組みで、第二言語習得における母語転移がどのように扱われてきたかを概観する。そして、これを基に、今後の母語転移に関する研究課題を考察する。

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