著者
奥津 聖
出版者
山口大学
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.19-45, 2001

初期ルネッサンスのある時期から、絵画の中に文字を描くことはタブーとなった。遠近法的絵画は自然らしさを追及するものであったからである。二十世紀の欧米の前衛藝術はこのタブーに兆戦した。コンセプチュアル・アーティストたちはついには言語のみを用いた視覚藝術を生みだすに至る。藝術は一行の文章に集約されるというわけである。1989年『中国現代藝術展』でデヴューした中国人アーティストの多くも言語をテーマにする作品を発表し始めた。しかしかれらの作品のコンセプトは欧米のそれとは別のコンテクストから生み出されたものである。この論文では、主として徐冰の作品を取り上げて、かれの問題の所在を内在的に考察することを通じて、かれの作品が言語の構造、言語の本質を問うものであり、言語の構造としての視覚藝術を成立させようとするものであることを明らかにする。 これは「イメージの解釈学の成立」における言語とイメージの問題を考察するための新たな素材を発掘する試みでもある。

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