著者
池田 太臣
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.51-67, 2004-06-30

支配は, 政治学および社会学において, 中心的なテーマのひとつであった.けれども近年, この支配についての関心は衰退し, その概念の有効性も疑われつつあるように思われる.この'支配概念の有効性の衰退'ともいえる現象は, 一体, いかなる理由によるものであろうか.<BR>この問いに答えるためには, なによりもまず, 支配研究の源流にさかのぼる必要があると思われる.というのも, 支配概念の導入の初発の関心を明らかにすることではじめて, その概念の社会科学上の存在意義を解明することができるからである.<BR>今述べた "支配の社会学の初期設定" を探るために, 本稿では, トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』を取り上げる.なぜなら, この書におけるホッブズの議論こそが, 支配の社会学の嚆矢であると考えることができるからである.<BR>上記の関心にしたがって, 本稿では, まずホッブズの議論の特徴として2つの点を指摘する.これらが, "支配の社会学の初期設定" である.さらに, このような設定を可能にしたホッブズの思想的前提を, 人間観と社会観との2つの観点から明らかにする.この指摘によって, ホッブズの議論の限界と可能性が明らかになると同時に, ホッブズ以降の支配論ないし支配の社会学の歴史を整理するための足かがりが得られる.そして最後に, 議論の簡単なまとめと今後の研究の展望について触れることにしたい.

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