- 著者
-
古川 智恵子
豊田 幸子
- 出版者
- 名古屋女子大学
- 雑誌
- 名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, pp.45-54, 1981-03-31
既製男物浴衣における身丈,袖丈,絎丈,揚下り寸法のサイズ構成について調査し,次の結果を得た.1.身丈,袖丈,絎丈の三元表示によるサイズパターン構成は137種の多サイズがみられた.その中で,まとまって出現したのは,身丈140,袖丈49,絎丈67 cmの8%,次に身丈136,袖丈49,絎丈66 cmの組合わせが5%であり,その他の組合わせはそれぞれ身丈,袖丈,絎丈の間で微妙な寸法のちがいで組合わされ,その出現は0.2〜1%の低率で,組合わせは135種類の分布状況がみられた.2.身丈別にみると,20サイズの分布がみられ,なかでも140 cmの構成が最も多く,次に144cm,136cmの順位であり,以上の3サイズで全体の約64%を占めている.既刊和裁書における着丈の割出し方としての身長×83/100から上記の着丈を考察すると,国民栄養調査による平均身長は167 cmでその換算着丈は139 cmとなる.以上の結果から,既製和服はやや長めの丈が多く作られているといえる.これは生活環境からの体位向上による肩の厚み分として1〜5cmが加算されているものと考えられる.3.袖丈別にみると,49cmが最も多く,次に50cm,45cm,その他に分散してみられた.この袖丈は,既刊和裁書による着丈から割出された基準袖丈に比較してみると,2〜3cm短かい寸法で構成されている.この理由として袖丈49cmは女物と同様に従来からの慣習サイズ1尺3寸(49cm)が人体にとって比率が良いという固定観念があるためと,基準袖丈より短かく裁断することは,コストの低減化にもつながる関係から,メーカー側もこの袖丈寸法を広く採用しているものと考えられる.4.絎丈別にみると,64cm〜73cmまでの10サイズの分布がみられた.最も高率を示したのは66cmで,次に67cm,65cm,68cmの順で,前回調査の既製女物浴衣より2〜3cm長い絎丈寸法であった.これは身長と相関の高い絎丈に,おける男女の身長差による当然の差と考えられる.5.揚下り寸法の分布は49 cmが最も多く,次いで50 cm, 48cmの順にみられた.次に袖丈と揚下り寸法差については,袖丈と同寸法が62%と最も多く,次に1cm差が12%,2cm差が11%の順で,袖丈と揚下り寸法とは大半が同寸法という傾向がみられ,差があるものでも1〜2cmであり,着帯の帯幅の範囲内でおさまる寸法であることがみられた.以上のように,今回の調査では,既製和服の袖丈は,身丈の長いサイズについても,90%以上が2〜3cm短かい袖丈寸法で組合わされ,揚下り寸法も,中には2〜4cm袖丈寸法にプラスして構成されているものも一部認められたが,全般的には,短かい袖丈寸法とほとんど同位置に揚下りの位置が設定されていた.これは仕立上の手間や,コスト上の要因などがからんでいるからではないかと考えられる.身丈は,サイズの種類が割合多く作られていて,カバー率は大であるが,袖丈寸法がそれ程多くなく,やや短かめの寸法で全般に構成されていることが,今後の課題であろうと考えられる.男物長着は,着丈寸法が身長に適合しなければ購入しないので,量販店では寸法の直しは容易でないため,既製和服としては,余程のことがないかぎり,ウールの長着においても余り作らない方針で,注文品として置いているようである.おはしよりの出来る女物長着にくらべ,男物の着丈の設定には,それだけにむつかしさが伴なうものと考えられた.引続き,次報では着丈,袖丈,揚下り寸法についての着用実験を行ない,検討し報告する.