著者
古川 智恵子 中田 明美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-12, 1985-03-01

現代のように,上に衣服を着ける社会では,褌は下着として軽視されやすいが,本来は前布によって紐衣を飾るハレの衣装であった.従って,わが国においても,昭和初期頃まで漁山村を問わず,仕事着として用いられていた事は,納得のいく事である.人間は権力を現わす手段の一つとして衣を用いてその形を変え,幾多の装飾を施してきた.しかし,褌は表着のめまぐるしい変化に対して,簡略化される事はあっても,大きく変化する事はなかった.それは,褌が人間工学的な機能美を最も追求した「衣」だったからである.シンプルな衣によってアピールするには,素材が一番重要なポイントである.従って,長い歴史の中で木綿だけでなく,絹羽二重や縮緬等の高価な素材も用いられるようになったのである.褌は,現在のファッションの動向である,最小限度という「ミニマル」の真髄を何千年もの間保ち続け,生きた日本文化を今日に伝える貴重な文化財である.伝統ある褌の形態や機能性は,時代の新しい息吹きを吹きこまれながら,若者の下着やビキニに,今後も脈々と生き続けていくであろう.褌のルーツを探る事によって日本文化の一端にふれ,愛着やいとおしさを覚えるものである.
著者
加藤 恵子 小島 十九子 後藤 喜恵 豊田 幸子 早坂 美代子 古川 智恵子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-11,表1枚, 1970-03

"1 自製作,注文,既製服の割合のうち既製服利用者が最も多いが,服種別ではワンピースツーピースにおいて注文が多い.2 既製服の購入場所は百貨店,専門店,洋品店のうちで,百貨店が最も多い.3 既製服の柄では無地,プリント,縞ののうち無地が最も多く,そのなかでもブルー,白が最も好まれている.4 材質では化繊が多く,又寝衣では木綿が多くみられた.5 機能面で最も問題点となるのはウエスト,ヒップなどが合わないと答えたサイズを重視するスカート,スラックス等である.ブラウス,ワンピース,ツーピース等では袖刳がきゅうくつ,肩巾が広い等が多くあげられた.6 縫製面での問題点は各服種とも付属品がとれ易い,こわれやすい,縫い目が粗い,縫目がほつれる,縫代が少ない,穴かがりがほつれ易い等であった.7 既製服購入時の学生の態度は寝衣においては,材質にポイントをしぼり,スカート,スラックス等ではサイズを顕著に重視している適切な購入態度がみられた.8 価格においては夏の家庭着をのぞく他の全ての服種において,学生の経済的意識がきわめて低かった.以上の結果から学生の衣生活における既製服の利用度がきわめて高いことが把握出来たが,その問題点である機能面では衣服サイズの種類が少なくその表示において,大・中・小,L・M・S,号数などの違いはあるが,我が国ではまだ段階が少ない上に,これらのサイズの増減が各々同比率となっている.この中で適当と思われるものを一種選んでもそれぞれ,身体の各部のプロポーションが違っているため適切なフイットが得られず,満足出来ないものと考えられる.又縫製面では特に服種別に大差はみられないが,全体の服種を通して,特に縫い目があらい,各部分とも縫いしろが少ない,縫い目がほつれる,付属品がとれやすい,こわれやすい等の理由が目立つ.これらは既製服メーカーが利潤を上げるため,縫製面では特に,縫いしろの節約,付属品等は品質の低下,付け方の乱雑さが目立つ.又縫い目がほつれるなどの理由は,縫いしろが少ない上,サイズの不適当,材質の不適当,及び運動量の不足,着方などにも問題点があると思われる.したがって消費者の立場から,今後の既製服業界に要望することは,豊富なサイズ段階に加えて,平面サイズだけでなく,体型別,立体的なカッティングをも含んだサイズ表示である.又学生の既製服購入態度は,比較的合理性に富み,常識的に選別していると見られるが,全ての服種において,学生の購入時の経済的意識が極めて低く現われている.これは,親の経済に全てを依存しているせいであると考察されるので,この点において今後の洋裁教育の中て経済的感覚を認識させると共に,機能面,縫製面においての問題点を更に堀り下げて補正箇所,補正方法等を検討したい.本研究にあたり調査にご協力いただいた本学々生に,あつく御礼申し上げます."
著者
古川 智恵子 中田 明美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-10, 1987-03-01

褌はシンプルで機能美を最も追求した衣であり,何千年もの間下着,あるいは仕事着として用いられてきた.この伝統ある形態や機能性は今日,若者のニーズにあう,新しい息吹きを吹きこまれながら,様々な付加価値が加えられて伝承され,現代の若者のショーツにスキャンティとして大きくクローズアップされている.今回の女子大生に対するアンケート結果においても,スキャンティに近いビキニ型の使用率が最も高かった.ショーツの着衣実験の結果,機能性については褌と同形態の殿裂型であるスキャンティが最も優れている事が実証されたが,着心地の官能検査においてはビキニ型が最も優れ,両者に一致がみられなかった.これは殿裂型の着用経験のない者にとっては慣れない為に股間に違和感を感ずる事や,形態が奇抜,高価等の理由からであろうと考えられる.下肢の運動による体表変化は殿溝部の皮膚が縦方向に伸び,大転子を境にしてそれより上部には殆ど変化はみられない.従ってショーツの着心地条件については,殿部カーブのカットが大きく関与し,殿溝部に沿ってカットされたスタンダード型,ビキニ型が共に上位であり,両者共素材が綿メリヤスで伸縮性に富む事も大きな要因である.現代は「差異性」が重視され,下着も自己主張の重要なファクターとしてその地位を確立しつつある.現代を担う若者達はそれを敏感に察知し,精神的なおしゃれを大いに楽しんでいるのである.男らしさを象徴する褌が,今や素材を変え,レース等の装飾が加えられたスキャンティとして女性のセクシーさをアピールしている事はまことに興味深い.
著者
豊田 幸子 山本 寿子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編 (ISSN:09153098)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.15-22, 1994-03-05

和服は私達の生活の中で長い間親しまれ,豊かな衣生活と伝統文化の発展にたずさわってきた.しかし,現代の衣生活において,和服の着装は日常着から儀式や趣味的な着用へと変化している.このような流れの中で,伝統衣裳として,現代生活に適した和服の着装形態について考察し,教育に生かしていきたいと考える.今若年層においては,成人式や卒業式のファッションとしての和服がみられるなかで,3年続きの"浴衣ブーム"も定着されつつあるといわれる.日本衣料管理協会や日本きもの教育センターの発表によると,女子高校生では79%,大学生では47.7%が浴衣での外出体験を持っている.呉服業界においても,気軽に購入し着用できる和服として,浴衣のプレタ化や付け帯の帯結びの工夫等もみられる現状である.そこで本報では,女子大生の浴衣と帯の着装及び調製の方法,さらに和服の着装を簡便にする付け帯についてアンケート調査を行い,実態を明らかにすることが出来たので報告する.
著者
酒井 清子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.63-75, 1982-03-31
著者
古川 智恵子 中田 明美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-21, 1985-03-01

褌は本来表着であり,それを仕事着として受け継いでいるのが力士のまわしである.相撲の歴史は古く,わが国でも「古事記」等に記述が残っている.奈良・平安時代には天皇による節会相撲が行われ,武家時代は武士の心身の鍛練のために盛んであった.江戸時代には力士が職業となり,勧進相撲が行われ,明治末期に風俗や規則が確立されて今日に至っている.初期のまわしは,まわしと化粧まわしの区別がなく,平安時代には白い麻の犢鼻褌,武家時代は白と茜の麻であったが,江戸時代に力士が職業となると,素材として最高の絹が用いられるようになる.そして,デモンストレーション用として豪華な化粧まわしが分離するのである.また,紐衣の呪性も残され,特に横綱の衣装は前面を化粧まおしや横綱,四手等によって,後面は魂を結びこめた綱や化粧まわしの結びによって,幾重にも悪霊から身を守っている.一方,それはまた,力と地位を示すための最高の飾りでもある.以上のように,力士のまわしは形こそシンプルではあるが,紐衣の呪術性,褌の装飾性と機能性,結びの魂等,さまざまな要素が集約された最小にして最高の衣である.最後に,本研究にあたり貴重な資料の写真撮影をさせて頂き,また懇切な御助言を頂きました相撲博物館の方々および,力士の方々に深く感謝申し上げます.
著者
古川 智恵子 豊田 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.29-39, 1979-03-15

以上の調査結果をまとめると,今回の調査の範囲内では次のとおりである.(1)和・洋服の所持率については,学生は洋服が83%,和服が17%と和服が少なく,主婦はそれぞれ55%, 45%である.これらの和服の着用機会は,学生では正月,お盆,成人式等であり,主婦では冠婚葬祭,正月,人学式,卒業式等である.また,和服を自分で着装できる者は,学生では約17%と極めて少ないが,主婦では日常着については約90%,礼服についても約半数を占める.(2)将来の衣生活設計については,学生,主婦層とも96%以上の者が和服をとり人れ,和・洋両式の衣生活をしてゆきたいと答えた.この結果から,和服は今後も長く伝統的な民族衣裳として日本人に愛され続けるものと思われる.(3)和・洋服の所持服の製作別割合では,学生,主婦共に洋服では既製品が多く,和服では注文が最も多く,既製はごく低率であった.家族の衣生活を担当する主婦の和服の縫製技術所持者は約80%であり,持に中・高年層に高度な縫製技術があったが,家庭製作より注文する割合が多くみられた.これは余暇時間に趣味的な事を行なったり,あるいは社会に出て生産的活動をする人が多くなってきたことによるのではないかと考えられる.(4)和装既製品の購人状況では,両者共に,たび,長襦袢,裾よけ等の下着類が多く,上着類では注文が多いことがうかがえる.和装既製品の選択重視項目順位では,学生,主婦共に"必要な時すぐ着られる"という利点を第1位にあげており,次に"価格が手ごろ","時間の節約"をあげている.また,これらの購入場所は専門店が最も多く利用され,日常着ではなく晴着としての和服は,衝動買いせず信用ある専門店で購入し,仕立てもそこで頼むという状態である.(5)既製和服に対する学生および主婦の意識差は,両者の生活経験により多少異なり,学生は概念的な思考が多いが,主婦は,より具体的な生活的思考をしている.しかし共通して不満意識が多く,大体次の3点にしぼられた.1)サイズの種類が少なく体に合いにくい.2)ミシン縫いが多く,縫製が雑である.3)材質面では表地に対して裏地が悪く,同一柄のものが多い.しかし,以上のイメージはそのまま購入経験者による,既製和服の問題点へと直結している傾向が見られた.既製和服購入低率の一要因が,このあたりにあるのではないかと考えられる.かって,洋服における既製服が,戦前→戦中→戦後の歴史を経て,安かろう,悪かろうの「つるし」の時代から,現代の「ファッション」の時代に到着し,量・質共に飛躍的な発展をし,消費者イメージも今や,外出着,日常着共に満足度の大きいものに変化して来た.一方,和服の既製服が伸びないのは,和服の構造そのものが,洋服的な量産体系にのりにくいという基本的な問題があるが,最近になって,大手の化繊企業がシステム化の研究に着手し,システム方式を開発した.これにより,化繊製品については,今までの既製服の機械縫製にみられた,パツカリング発生率を極限までに押える持殊ミシン使用により,品質向上を期待することが出来るようになった.また,W&W性と,仕立上りの品質が明らかに優れているようである.しかし,これもサイズ面,材質面等については未だ完全なものではなく,今後の研究の余地があろう.このように最近は,企業も消費者ニーズをよく研究している現状であるが,消費者もこれまでのような「上手なお買物」的な消極的なものだけでなく,消費者と企業とのすれちがいを解消する消費者のための生産へとリードしていく,より積極的姿勢が望まれる時代に来ている.短大の被服教育においてもこれに答える為には,これまで以上に高い知識や,問題解決への能力養成の必要があろう.今後は既製和服の問題点とされた,サイズ,および縫製面における検討を重ねてゆきたいと考えている.本研究にあたり,調査に御協力下さった主婦の方々及び本学被服コースの学生に感謝いたします.