著者
古川 智恵子 中田 明美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-12, 1985-03-01

現代のように,上に衣服を着ける社会では,褌は下着として軽視されやすいが,本来は前布によって紐衣を飾るハレの衣装であった.従って,わが国においても,昭和初期頃まで漁山村を問わず,仕事着として用いられていた事は,納得のいく事である.人間は権力を現わす手段の一つとして衣を用いてその形を変え,幾多の装飾を施してきた.しかし,褌は表着のめまぐるしい変化に対して,簡略化される事はあっても,大きく変化する事はなかった.それは,褌が人間工学的な機能美を最も追求した「衣」だったからである.シンプルな衣によってアピールするには,素材が一番重要なポイントである.従って,長い歴史の中で木綿だけでなく,絹羽二重や縮緬等の高価な素材も用いられるようになったのである.褌は,現在のファッションの動向である,最小限度という「ミニマル」の真髄を何千年もの間保ち続け,生きた日本文化を今日に伝える貴重な文化財である.伝統ある褌の形態や機能性は,時代の新しい息吹きを吹きこまれながら,若者の下着やビキニに,今後も脈々と生き続けていくであろう.褌のルーツを探る事によって日本文化の一端にふれ,愛着やいとおしさを覚えるものである.
著者
加藤 恵子 小島 十九子 後藤 喜恵 豊田 幸子 早坂 美代子 古川 智恵子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-11,表1枚, 1970-03

"1 自製作,注文,既製服の割合のうち既製服利用者が最も多いが,服種別ではワンピースツーピースにおいて注文が多い.2 既製服の購入場所は百貨店,専門店,洋品店のうちで,百貨店が最も多い.3 既製服の柄では無地,プリント,縞ののうち無地が最も多く,そのなかでもブルー,白が最も好まれている.4 材質では化繊が多く,又寝衣では木綿が多くみられた.5 機能面で最も問題点となるのはウエスト,ヒップなどが合わないと答えたサイズを重視するスカート,スラックス等である.ブラウス,ワンピース,ツーピース等では袖刳がきゅうくつ,肩巾が広い等が多くあげられた.6 縫製面での問題点は各服種とも付属品がとれ易い,こわれやすい,縫い目が粗い,縫目がほつれる,縫代が少ない,穴かがりがほつれ易い等であった.7 既製服購入時の学生の態度は寝衣においては,材質にポイントをしぼり,スカート,スラックス等ではサイズを顕著に重視している適切な購入態度がみられた.8 価格においては夏の家庭着をのぞく他の全ての服種において,学生の経済的意識がきわめて低かった.以上の結果から学生の衣生活における既製服の利用度がきわめて高いことが把握出来たが,その問題点である機能面では衣服サイズの種類が少なくその表示において,大・中・小,L・M・S,号数などの違いはあるが,我が国ではまだ段階が少ない上に,これらのサイズの増減が各々同比率となっている.この中で適当と思われるものを一種選んでもそれぞれ,身体の各部のプロポーションが違っているため適切なフイットが得られず,満足出来ないものと考えられる.又縫製面では特に服種別に大差はみられないが,全体の服種を通して,特に縫い目があらい,各部分とも縫いしろが少ない,縫い目がほつれる,付属品がとれやすい,こわれやすい等の理由が目立つ.これらは既製服メーカーが利潤を上げるため,縫製面では特に,縫いしろの節約,付属品等は品質の低下,付け方の乱雑さが目立つ.又縫い目がほつれるなどの理由は,縫いしろが少ない上,サイズの不適当,材質の不適当,及び運動量の不足,着方などにも問題点があると思われる.したがって消費者の立場から,今後の既製服業界に要望することは,豊富なサイズ段階に加えて,平面サイズだけでなく,体型別,立体的なカッティングをも含んだサイズ表示である.又学生の既製服購入態度は,比較的合理性に富み,常識的に選別していると見られるが,全ての服種において,学生の購入時の経済的意識が極めて低く現われている.これは,親の経済に全てを依存しているせいであると考察されるので,この点において今後の洋裁教育の中て経済的感覚を認識させると共に,機能面,縫製面においての問題点を更に堀り下げて補正箇所,補正方法等を検討したい.本研究にあたり調査にご協力いただいた本学々生に,あつく御礼申し上げます."
著者
古川 智恵子 中田 明美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-10, 1987-03-01

褌はシンプルで機能美を最も追求した衣であり,何千年もの間下着,あるいは仕事着として用いられてきた.この伝統ある形態や機能性は今日,若者のニーズにあう,新しい息吹きを吹きこまれながら,様々な付加価値が加えられて伝承され,現代の若者のショーツにスキャンティとして大きくクローズアップされている.今回の女子大生に対するアンケート結果においても,スキャンティに近いビキニ型の使用率が最も高かった.ショーツの着衣実験の結果,機能性については褌と同形態の殿裂型であるスキャンティが最も優れている事が実証されたが,着心地の官能検査においてはビキニ型が最も優れ,両者に一致がみられなかった.これは殿裂型の着用経験のない者にとっては慣れない為に股間に違和感を感ずる事や,形態が奇抜,高価等の理由からであろうと考えられる.下肢の運動による体表変化は殿溝部の皮膚が縦方向に伸び,大転子を境にしてそれより上部には殆ど変化はみられない.従ってショーツの着心地条件については,殿部カーブのカットが大きく関与し,殿溝部に沿ってカットされたスタンダード型,ビキニ型が共に上位であり,両者共素材が綿メリヤスで伸縮性に富む事も大きな要因である.現代は「差異性」が重視され,下着も自己主張の重要なファクターとしてその地位を確立しつつある.現代を担う若者達はそれを敏感に察知し,精神的なおしゃれを大いに楽しんでいるのである.男らしさを象徴する褌が,今や素材を変え,レース等の装飾が加えられたスキャンティとして女性のセクシーさをアピールしている事はまことに興味深い.
著者
酒井 清子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.63-75, 1982-03-31
著者
古川 智恵子 中田 明美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-21, 1985-03-01

褌は本来表着であり,それを仕事着として受け継いでいるのが力士のまわしである.相撲の歴史は古く,わが国でも「古事記」等に記述が残っている.奈良・平安時代には天皇による節会相撲が行われ,武家時代は武士の心身の鍛練のために盛んであった.江戸時代には力士が職業となり,勧進相撲が行われ,明治末期に風俗や規則が確立されて今日に至っている.初期のまわしは,まわしと化粧まわしの区別がなく,平安時代には白い麻の犢鼻褌,武家時代は白と茜の麻であったが,江戸時代に力士が職業となると,素材として最高の絹が用いられるようになる.そして,デモンストレーション用として豪華な化粧まわしが分離するのである.また,紐衣の呪性も残され,特に横綱の衣装は前面を化粧まおしや横綱,四手等によって,後面は魂を結びこめた綱や化粧まわしの結びによって,幾重にも悪霊から身を守っている.一方,それはまた,力と地位を示すための最高の飾りでもある.以上のように,力士のまわしは形こそシンプルではあるが,紐衣の呪術性,褌の装飾性と機能性,結びの魂等,さまざまな要素が集約された最小にして最高の衣である.最後に,本研究にあたり貴重な資料の写真撮影をさせて頂き,また懇切な御助言を頂きました相撲博物館の方々および,力士の方々に深く感謝申し上げます.
著者
古川 智恵子 豊田 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.29-39, 1979-03-15

以上の調査結果をまとめると,今回の調査の範囲内では次のとおりである.(1)和・洋服の所持率については,学生は洋服が83%,和服が17%と和服が少なく,主婦はそれぞれ55%, 45%である.これらの和服の着用機会は,学生では正月,お盆,成人式等であり,主婦では冠婚葬祭,正月,人学式,卒業式等である.また,和服を自分で着装できる者は,学生では約17%と極めて少ないが,主婦では日常着については約90%,礼服についても約半数を占める.(2)将来の衣生活設計については,学生,主婦層とも96%以上の者が和服をとり人れ,和・洋両式の衣生活をしてゆきたいと答えた.この結果から,和服は今後も長く伝統的な民族衣裳として日本人に愛され続けるものと思われる.(3)和・洋服の所持服の製作別割合では,学生,主婦共に洋服では既製品が多く,和服では注文が最も多く,既製はごく低率であった.家族の衣生活を担当する主婦の和服の縫製技術所持者は約80%であり,持に中・高年層に高度な縫製技術があったが,家庭製作より注文する割合が多くみられた.これは余暇時間に趣味的な事を行なったり,あるいは社会に出て生産的活動をする人が多くなってきたことによるのではないかと考えられる.(4)和装既製品の購人状況では,両者共に,たび,長襦袢,裾よけ等の下着類が多く,上着類では注文が多いことがうかがえる.和装既製品の選択重視項目順位では,学生,主婦共に"必要な時すぐ着られる"という利点を第1位にあげており,次に"価格が手ごろ","時間の節約"をあげている.また,これらの購入場所は専門店が最も多く利用され,日常着ではなく晴着としての和服は,衝動買いせず信用ある専門店で購入し,仕立てもそこで頼むという状態である.(5)既製和服に対する学生および主婦の意識差は,両者の生活経験により多少異なり,学生は概念的な思考が多いが,主婦は,より具体的な生活的思考をしている.しかし共通して不満意識が多く,大体次の3点にしぼられた.1)サイズの種類が少なく体に合いにくい.2)ミシン縫いが多く,縫製が雑である.3)材質面では表地に対して裏地が悪く,同一柄のものが多い.しかし,以上のイメージはそのまま購入経験者による,既製和服の問題点へと直結している傾向が見られた.既製和服購入低率の一要因が,このあたりにあるのではないかと考えられる.かって,洋服における既製服が,戦前→戦中→戦後の歴史を経て,安かろう,悪かろうの「つるし」の時代から,現代の「ファッション」の時代に到着し,量・質共に飛躍的な発展をし,消費者イメージも今や,外出着,日常着共に満足度の大きいものに変化して来た.一方,和服の既製服が伸びないのは,和服の構造そのものが,洋服的な量産体系にのりにくいという基本的な問題があるが,最近になって,大手の化繊企業がシステム化の研究に着手し,システム方式を開発した.これにより,化繊製品については,今までの既製服の機械縫製にみられた,パツカリング発生率を極限までに押える持殊ミシン使用により,品質向上を期待することが出来るようになった.また,W&W性と,仕立上りの品質が明らかに優れているようである.しかし,これもサイズ面,材質面等については未だ完全なものではなく,今後の研究の余地があろう.このように最近は,企業も消費者ニーズをよく研究している現状であるが,消費者もこれまでのような「上手なお買物」的な消極的なものだけでなく,消費者と企業とのすれちがいを解消する消費者のための生産へとリードしていく,より積極的姿勢が望まれる時代に来ている.短大の被服教育においてもこれに答える為には,これまで以上に高い知識や,問題解決への能力養成の必要があろう.今後は既製和服の問題点とされた,サイズ,および縫製面における検討を重ねてゆきたいと考えている.本研究にあたり,調査に御協力下さった主婦の方々及び本学被服コースの学生に感謝いたします.
著者
石原 久代 酒井 清子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.23-31, 1985-03-01

被服における色彩の温度感と快・不快感について検討するために,カラーシミュレーション装置を用いて実際の服装色を変化させ,視感判定による服装色の温度感および快・不快感の検査を行うとともに,色票における検査を平行して行い,両者を比較検討した.検査の方法はシェッフェの一対比較法の変形により,「あつい」「快い」の2項目について5点法で行った.なお,環境温度にも影響される可能性も考慮して,1月と7月の2回実施した.得られた結果について識別能力があると判断された値をとり出し,平均嗜好度を求の,重回帰分析により色の物理量および実験条件との関係を検討したところ次のような結果が得られた.1.色票による温度感については,7月では暖色系の各色に加えて,寒色系の低明度の色もあつく感じられているのに対して,1月では暖色系の色のみであった.逆に最も冷たく感じられているのは,1月,7月ともにうすい緑とうすいライラックであり,また高彩度の各色および無彩色は,いずれも7月より1月の方があつく感じられている.2.色票による快・不快感については,7月では暖色系,寒色系という色相にかかわらず,高明度の各色が快く感じられているのに対して,1月では暖色系の高明度かつ高彩度の各色が快く感じられている.逆に不快に感じられているのは色相に関係なく低明度の色であり,1月より,7月の方が快・不快の感じられ方が顕著であった.3.実際の服装色の温度感については,7月では色相に関係なく低明度の各色があつく感じられているのに対して1月では暖色系の低明度の色があつく感じられている.逆に冷たく感じられているのは色票同様であった.また,無彩色の各色は色票に比べて服装色の方が冷たく感じられている.4.実際の服装色における快・不快感について,快い色は色票とよく一致しているが,不快と感じられている色は,7月では温度感の検査においてあつく感じられた低明度の各色であるが,1月では一般的に嫌悪色といわれているオリーブ,暗い緑,さえた青紫等であった.なお,温度感,快・不快感ともに1月に比べて7月の方が色による差が明確に現われているといえる.5.重回帰分析により色彩の物理量との関係を検討したところ,温度感には明度が最も大きく影響し,高明度な程冷たく感じられるという結果であり,次には彩度が高い係数を示し,色相はその次であった.また快・不快感についても明度が最も大きく影響し,高明度な程快く感じられ,次には色相が高い係数を示し,寒色系の方が快く感じられるという結果であった.なお,両者とも実験条件よりも色彩そのものの影響の方が強いという結果であった.
著者
栃原 きみえ 斉藤 一枝 坂倉 園江 菊山 弘子 済木 敦子 戸田 光子 菊地 真理子 原 淑子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.113-127, 1967-03-01

被服構成上もっとも重要な身体的因子の研究として静止時の生体測定を行った.まずスカート作製のために必要な41項目を定め,それぞれの長径,幅径,厚径,角度について測定し,それぞれの相関について検討したのでその結果を要約する.各周径の相関について1.ヒップの周径と各周径(各周径とも下半身長に対する割合)との関係については相関が認められ,ヒップ周径が大きくなるに従ってウエスト周径,腹部周径,太もも周径(両足),ひざ周径(両足),ふくらはぎ周径(両足),足首周径(両足)の割合もやや比例してふえて行く.ウエスト,ひざ,ふくらはぎ,足首はヒップより肉のつきかたが少く,腹部,太ももはヒップより肉のつきかたが多いと云う傾向がわかった.2.下半身長に対するウエスト周径,ヒップ周径とのそれぞれの相関について検討したが相関はみとめられなかった.下半身長に関係なく,ウエストやヒップの周径は大小さまざまであると云う一般的な通念をたしかめることが出来た.各幅径,厚径の相関について1.ウエスト,腹部,ヒップ,太もも(両足)(各周径とも周径に対する割合)それぞれの相関について検討したが相関はみられなかった.形態の上ではウエスト,ヒップ,腹部の順に丸い形に近くなり,太もも(両足)が一番偏平である傾向がわかった.2.下半身長と下半身長に対する各幅径,厚径の割合との相関について検討したが,相関はみられなかった.これは下半身長の大小に関係なく偏平な体型,丸い体型が存在するという一般的な通念を実証したものと云えよう.しかし,ひざ厚径は約10cm〜13cmの間に,ふくらはぎ厚径は約9.6cm〜12.5cmの間にあり,下半身長の増減に関係なく近似的な寸法である.各長径の相関について1.下半身長とヒップ丈,ふくらはぎ丈(両足),ひざ丈(両足)(各丈とも下半身長に対する割合)との相関はみとめられなかった.しかしふくらはぎ丈は下半身長の増減に関係なく約65cm〜70cmの近似的な寸法の中にある.2.身長と下半身長(身長に対する割合)との相関はわずかにみとめられた.身長が高いものほど下半身長の割合が大きくなる.つまり背の高いものほど下半身が長くて形がよいという結果が得られた.側面のウエスト・ライン傾斜角度について1.スカート作製上重要な側面のウエスト・ラインの傾斜角度については,後ウエストを基点とした前ウエストヘの傾斜角度は最少1.3°から最大17.8°で平均値は6.7゜で相当傾斜していることがわかった.脇を基点とする前への傾斜角度と後への傾斜角度を比較すれば後への傾斜角度の大きいものが多いことがわかった.2.側面のウエスト・ライン傾斜角度と下半身の各傾斜角度(骨盤傾斜角度,大腿骨傾斜角度,下肢傾斜角度,下半身側面傾斜角度)との相関はみとめられなかった.3.下半身側面傾斜角度と骨盤傾斜角度について 下肢傾斜角度との相関はみとめられなかった.しかし大腿骨傾斜角度とはわずかに相関がみとめられた.これは,下肢傾斜角度は後傾するもののみであるが大腿骨傾斜角度は前傾するものが存在するためにひざ関節で屈折している.従ってわずかながら相関の傾向がみとめられるのであろう.以上本学被験者の体型について種々検討を加えたが,このたびの測定は身体の静止時の実測長並びに角度であるから,これをもって直ちに被服構成にそのまま利用することは当を得ないことであろう.しかし被服構成のために必要な身体的因子の一部を解明する手がかりを得たことは意義あることと考える.この研究を基礎資料として更に次の段階の研究を進めることにする.終りに本研究に被験者として御協力下さった本学服飾の学生に感謝する.
著者
栃原 きみえ 斉藤 一枝 水口 綾子 池田 恵子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-12, 1979-03-15

被服の着装効果と人の個性との関係を明らかにするために,個性の要素の1つである顔の形態的因子を研究対象とし,本学学生222名を被験者として,1/2大の写真を用いて各部位の計測をした.1.眉,目,鼻,口の長径,幅径,角度 眉,目,鼻,口の各部位の長径,幅径および角度を計測し,最大,最小,平均,標準偏差を求めた.2.眉,目の長径,幅径,角度の左右差と出現率 顔の因子の左右アンバランスは個性の研究に必要と考え,眉長,眉幅,眼裂長,眼開大径および眉頭を基点とする眉尻の角度,眼頭を基点とする眼裂の角度の左右差について検討したが,左右同径,および同角度は極めて少なく,各項目ともに約80〜90%の者に左右差が認められ,高い出現率であった.3.眉,目,鼻,口の相関係数 眉,目,鼻,口の長径,幅径,角度の120項目について相関係数を求めたところ,41項目が有意であった.その中で眉長,眉幅,眉角度,眼裂長,眼開大径のおのおの右と左間の相関係数が特に高い傾向を示した.そこで類型化のための資料には,左右のいずれか一方でよいと判断し,本研究では右を用いることにした.4.眉,目の類型化 4-1 眉,目の長径,幅径による類型化と出現率 本研究を進めるにあたって,先ず顔の因子の類型化が必要と考え,今回は眉と目を取り上げ,長径,幅径の標準偏差±3σを用いて5段階に分け,両者の組み合わせによって類型化を試み出現率を求めた. 4-2 眉,目の角度による類型化と出現率 眉長と眉角度および眼裂長と眼角度の各標準偏差を用いて類型化を試みたが,上り眉は52.7%と過半数を占め,下り眉は31.1%また0度つまり眉頭と眉尻が水平線上にある眉は16.2%であった. 目の場合,上り目の出現率は97.7%と圧倒的に高く,下り目は0.5%,0度は1.8%と低い傾向であった. 4-3 眉の特殊型 眉の形には俗にいう三日月型,への字型などがあるが,これらの形態と個性との関係を追求するために類型化を試みたが,全体の中での出現率は三日月型が22.5%,への字型が14.0%であった. 4-4 一重まぶた,二重まぶたの例 目の形態には俗にいう一重まぶた,二重まぶたがあるが,出現率は一重まぶたが55.4%二重まぶたが33.0%,また左右のいずれか一方が一重まぶた,または二重まぶたのいわゆる左右アンバランスの目は10.8%であった.以上のように一重まぶたの者が圧倒的に多かったのは,東洋人種である日本人の特徴を裏付けているものといえよう. 7-5 眉,目の位置に関する類型化 左右の眉頭間および眼頭間の各標準偏差を用いて5段階の類型化を,また眉の下縁と目の上縁間の標準偏差を用いて眉,目間の類型化を試み,眉と目の位置に関する形態を把握した.以上,眉,目,鼻,口の長径,幅径,角度を数値として確認し,また眉,目について類型化を試みたが,続けて鼻,口の類型化を試みたいと考えている.今後これらの資料をもとにして個性との関係を追求し,更に被服との関係についても明らかにしてゆきたいと考えている.終りに本研究の資料収集に御協力くださった高梨亨子講師,また被験者として御協力くださった服飾専攻の学生諸姉に,深甚の謝意を表します.
著者
大沢 つね子 平野 年秋 南川 幸
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.73-80, 1970-03-15

日本産の肉質キノコ類の消化に関して,ラットに給餌し,糞の検鏡により形態的に観察,不消化物の状態について試験を行った.その結果は次の通りである.1) BasidiomycetesにおいてはTricholomataceae, Amanitaceae, Cortinariaceae, Russulaceae, AscomycetesにおいてはClavariaceaeのFamilyはよく消化されていた.2)BasidiomycetesにおいてはBletaceae, Strobilomycetaceae, AscomycetesにおいてはCantharellaceae, PhylacteriaceaeなどのFamilyに不消化の種類が多い傾向が認められた.3)特に不消化に近い形で排泄されるのを認められたLeccinum scabrum, L. rugosiceps, Strobilomyces floccopus, Boletellus russelliiについて菌傘部,菌柄部にわけて試験した結果,菌傘部に不消化物が多いことを認めた.4)菌傘部の表面と裏面の管孔部にわけて試験したが,管孔部が特に不消化物が多い傾向を認めた.5)管孔部を除いたイグチ科,オニイグチ科は普通の消化のよい肉質キノコと変りがなかった.
著者
古川 智恵子 豊田 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.45-54, 1981-03-31

既製男物浴衣における身丈,袖丈,絎丈,揚下り寸法のサイズ構成について調査し,次の結果を得た.1.身丈,袖丈,絎丈の三元表示によるサイズパターン構成は137種の多サイズがみられた.その中で,まとまって出現したのは,身丈140,袖丈49,絎丈67 cmの8%,次に身丈136,袖丈49,絎丈66 cmの組合わせが5%であり,その他の組合わせはそれぞれ身丈,袖丈,絎丈の間で微妙な寸法のちがいで組合わされ,その出現は0.2〜1%の低率で,組合わせは135種類の分布状況がみられた.2.身丈別にみると,20サイズの分布がみられ,なかでも140 cmの構成が最も多く,次に144cm,136cmの順位であり,以上の3サイズで全体の約64%を占めている.既刊和裁書における着丈の割出し方としての身長×83/100から上記の着丈を考察すると,国民栄養調査による平均身長は167 cmでその換算着丈は139 cmとなる.以上の結果から,既製和服はやや長めの丈が多く作られているといえる.これは生活環境からの体位向上による肩の厚み分として1〜5cmが加算されているものと考えられる.3.袖丈別にみると,49cmが最も多く,次に50cm,45cm,その他に分散してみられた.この袖丈は,既刊和裁書による着丈から割出された基準袖丈に比較してみると,2〜3cm短かい寸法で構成されている.この理由として袖丈49cmは女物と同様に従来からの慣習サイズ1尺3寸(49cm)が人体にとって比率が良いという固定観念があるためと,基準袖丈より短かく裁断することは,コストの低減化にもつながる関係から,メーカー側もこの袖丈寸法を広く採用しているものと考えられる.4.絎丈別にみると,64cm〜73cmまでの10サイズの分布がみられた.最も高率を示したのは66cmで,次に67cm,65cm,68cmの順で,前回調査の既製女物浴衣より2〜3cm長い絎丈寸法であった.これは身長と相関の高い絎丈に,おける男女の身長差による当然の差と考えられる.5.揚下り寸法の分布は49 cmが最も多く,次いで50 cm, 48cmの順にみられた.次に袖丈と揚下り寸法差については,袖丈と同寸法が62%と最も多く,次に1cm差が12%,2cm差が11%の順で,袖丈と揚下り寸法とは大半が同寸法という傾向がみられ,差があるものでも1〜2cmであり,着帯の帯幅の範囲内でおさまる寸法であることがみられた.以上のように,今回の調査では,既製和服の袖丈は,身丈の長いサイズについても,90%以上が2〜3cm短かい袖丈寸法で組合わされ,揚下り寸法も,中には2〜4cm袖丈寸法にプラスして構成されているものも一部認められたが,全般的には,短かい袖丈寸法とほとんど同位置に揚下りの位置が設定されていた.これは仕立上の手間や,コスト上の要因などがからんでいるからではないかと考えられる.身丈は,サイズの種類が割合多く作られていて,カバー率は大であるが,袖丈寸法がそれ程多くなく,やや短かめの寸法で全般に構成されていることが,今後の課題であろうと考えられる.男物長着は,着丈寸法が身長に適合しなければ購入しないので,量販店では寸法の直しは容易でないため,既製和服としては,余程のことがないかぎり,ウールの長着においても余り作らない方針で,注文品として置いているようである.おはしよりの出来る女物長着にくらべ,男物の着丈の設定には,それだけにむつかしさが伴なうものと考えられた.引続き,次報では着丈,袖丈,揚下り寸法についての着用実験を行ない,検討し報告する.
著者
古川 智恵子 中田 明美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.9-18, 1986-03-01

今回の実験によって,長い歴史の中で人間の経験上から設定された,仕事着としての腰巻丈は,膝丈から膝上10 cm までの丈に着装されていたこと,また,それ以上の短い場合には,脇スリットを作り,前開きを分散させて,下着としての限界の機能を果させている事の意味が検証できたと考える.即ち,下肢の運動拘束性を,でき得る限り最小に,機能性を最大限に,併せて下着としての股間の隠蔽の機能をも満たす為の限界の丈なのである.腰巻の機能性は,その形態にある.前打合わせ形式である事は,着脱が簡便で,着衣に融通性があり,また,動作姿勢に応じて幅,丈ともに自在に適応出来る.また,構成が簡単で誰にでも作れるという利便性も見逃せない.長方形のシンプルな布,つまり腰巻は,何千年もの間,表着の幾多のめまぐるしい変化に対しても,殆ど影響を受けず,現在まで引き継がれてきた.それは,腰巻が人間工学的な機能美を最も追求した衣であったからである.伝統ある腰巻の形態や機能性は,今後も日本の民族服である和服が続くかぎり,幾世代にもわたって新しい磨きをかけられながら生き続けていくことであろう.
著者
柴村 恵子 望月 照子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.53-61, 1982-03-31

東南アジアの大陸部には伝統文化を異にする幾種類もの少数民族が入り交って分布しているが,これらのうちケシ栽培で知られ,少数民族の中でも多数の人口を占めるメオ族の,タイ国における生活と民族服について調査研究を行い,彼らの生活習俗において次の諸点を把握することが出来た.1.タイ国でのメオ族は,チェンマイ,チェンライ,ターク,カンぺンぺト,ロエイ,ぺチャブーンの北部を中心に分布している.その由来については,「メオ」とはタイ人がつけた呼び名である.彼らは本来は水田耕作を行う種族で「苗」つまり「ミャオ」と呼ばれていたが,それがなまってメオとなり,支配者に不服従な野蛮人という意味に解されるようになった.しかし,彼ら自身は「自由な人」という意味の「フモン」あるいば「モン」といっている.2.彼らの衣生活は,夏冬,日常着,外出着,儀式用といった区別が基本的にはない.現在タイ国には青メオ族が約58%,白メオ族が約42の割合で住んでいるが,これは主に衣服の色の違いによって区別されたものであり,青メオ族の女性は,ろうけつ染めのプリーツ・スカート,白メオ族は白のプリーツ・スカートにその特色が見られる.3.食生活は米と野菜が主食であるが,正月には精霊に豚や鶏のいけにえをささげ,それを食する.しかし,この間野菜は食べない.4.部落の構成は小村集落であり,20軒位が平均的部落の規模である.又,一戸当たりの住人は6〜7入が標準となっている.家屋は平土間式であるが,貯蔵庫は湿気とねずみの浸入を防ぐため高床式となっている.5.メオ族は宗教としてアニミズムを信仰し,種祖神は「槃瓠(ばんこ)」と称する霊犬であり,聖霊には豚や鶏のいけにえをささげる習慣がある.6.メオ族の結婚は,男女の結びつき以前に霊の結合という思想が強く,徹底した同姓不婚である.7.民族服は彼らの仲間意識を強調するものであり,特に女子の衣服や装身具には種族固有の色彩感覚や,デザイン思想が山地民族の生活と調和して着用されている.しかし,衣服本来 の機能との関係については今後の課題であると考えられる.8.近年ではタイ政府の政策により,小学校の建設,政府指導の産業の奨励などにより,山地民族特有の生活も平地化されてしまう日もそう遠くはないのではないかと思われる.最後に本研究を行うに当たり,終始懇切な御指導を賜わった岐阜大学教授中野刀子先生,御助言及び御校閲をいただいた名古屋女子大学教授栃原きみえ先生,又,資料の提供を下さった国立民族学博物館並びに現地調査に当たり格別の御協力をいただいた鈴木自動車工業株式会社社長鈴木修氏をはじめ,タイ鈴木モーター株式会社のチャチャイ,カネーの両氏に対し深く感謝の意を表する次第である.
著者
荒井 康夫
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.37-43, 1984-03-31
被引用文献数
1

(1)シュート・ポジションに対して,リバウンド・ボールはシュートを行った反対側に多く集約していた.シュート・ポジションが右0゜,距離6.50 mの場合,リバウンドの分布は左20°〜30°,距離は3.00m付近に集約.シュート・ポジシーンが右56°距離7.00mの場合,リバウンドの分布は左45°,距離は3.50 m付近に集約.またシュート・ポジションが右30°,距離6.00mの場合,リバウンドの分布は左35°,距離2.50 m付近に集約された.(2)その他,相手プレイヤーの特徴を把握すること,シュート・フォーム,ボール・スピン,ループ,シュート・ポジションと距離などを素早く把握し,リバウンド・ポジションの獲得に努めること.(3)スクリーン・アウトの徹底, (4)リバウンド・ボール獲得の意志. (5)ジャンプカ,などを含めて指導を行うことである.
著者
佐地 多美
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.129-138, 1975-03-15

生活の多様化,情報の氾濫,多種多様な価値観の世界に生きるわれわれが,今後,ますます複雑化が予想される社会に生きる子どもたちのために,今何をしてやらなければならないのか,何をしてやることができるのか,教育界に多くの目が向けられている昨今,もう一度冷静に考えてみる必要がありはしないか。そもそも教材というものは,マーセルの言葉を借りるまでもなく良い教材でなければならない。特に音楽活動の場合は教材が音楽活動を限定してしまうので,教材の質が重要であろう。そして,多様な音楽文化に支えられている今日の音楽教育も,豊富で変化に富んだ教材によって,子ども達の多様な興味に応じることが必要であろう。それを子どもの発達段階に沿って順序づけるよぅ配慮されなければならないし,全体的には他教科との関連を見逃す訳にはいかない。しかし,現実はソッポを向いた子どもをこちら側に向けることが先決問題であり,そのために教師と子どもの"共通のこ^^^・と^^^・ば^^^・"を見つけることを提案してきた。そして,義務教育での音楽教育は専門教育ではなく一般教育であるがゆえに,多様な子どもの興味に答え,情操教育における音楽の役割を十分に果たすように努めねばなるまい。
著者
柏瀬 愛子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.215-222, 1976-03-15

コダーイは,「音楽はすべての人のためのものである.その教育が,ある一部の特別な人にのみ行なわれるものであってはならないし,またどんな領域においても,人をして「名演奏家」に仕込むものではない.一般大衆が,音楽の良さがわかり,それを楽しむようでなくてはならない.」と常に述べ,音楽を愛し楽しむ手段として人々に勧めたのがうたうことであった.自らも,歌唱教材となる作品を多く作り,これを使ってこども達の教育にあたった.このコダーイの生みだしたうたうことによって行なう教育は,声楽の分野だけをしめるものではなく,器楽教育の中でも生かされるべきものである.ハンガリーの器楽教育で中心的役割を果たしているのは,国営の器楽学校である.そこで指導を受けている人の46%がピアノの学習者であると伝えられているが,この人達の練習課程をみると,初めの1年は肉声による音階練習の期間である.つまり,ピアノを志すものであっても,音に対しするどい感覚がもたれるように,うたうことによって訓練されるのである.次いで6年間にわたってあらゆるピアノ奏法に対する訓練がなされ,コースを終わる頃にはメンデルスゾーンの無言歌集やバッハの2声インベンシヨンが上手に弾きこなせるようになるといわれている.この間ピアノに触れるようになった1年目では,とり扱われる曲数はわずか5曲ぐらいといわれている.1つの曲であらゆるテクニックの勉強が行なわれ,音楽的想像がもたれるように指導されていく.また,曲を完全に自分のものにしきってしまうということも課せられているそうである.練習はただ多くの曲を弾きこなせるようにさせればよい,というものではない.弾く過程でどのような体験をさせるかということで基礎が身につくものであるといえよう.日本のピアノ教育では,依然として,百年以上を経た教則本であるバイエル,ツェルニーを利用されることが多い.こうした教則本を使ってレッスンするにしても,コダーイの理念に基づいたうたう指導と,あらゆるテクニックをもりこんだレッスンがとり行なわれたなら,手の動きに結びついた音のイメージを強くした奏法から脱してゆくのではないだろうか.現にコダーイメソードによって指導した2人の演奏は,他のどの子よりも音のひびきに生きたものを感じさせられた.また,いつも歌いながら楽しんで弾いている姿が見受けられる.今回は対象が個人レッスンの2名だけであったが,機会があれば幼稚園などのグループレッスンでコダーイ・メソードによる楽器指導の実践を試みてみたいと考えている.また,大学生に対する方法も研究してみたい.