著者
保坂 哲哉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.37-49, 1996-08-25

本論はアメリカ,イギリスにおける正義論の最近の発展と論点,福祉国家とその政策への含意を論ずる。取り上げだのはJ.ロールズ,B.アッカーマン,R. ノージック,D. D.ラファエル,A.ブラウン,A.マッキンタイアの正義論である。とくに注目に値すると筆者が考えたのは,アリストテレスが『ニコマコス倫理学』で展開した徳論,善理論および正義論を基礎とするブラウンとマッキンタイアの正義論である。道徳的自然主義に立ち,人間の本性とその社会性の特質から出発して正義論を導出する内在主義的アプローチは,ブラウンによって実践的合理性によって整序された基礎財リストの提案を導く。しかしこれらの正義論討議から引き出せる実践的指針は,概して一般的性質のものであり,福祉国家正統化の根拠についての一般的合意形成には直接役立たない。その点にかんしてのマッキンタイアの言明,アリストテレス的道徳性の伝統は近代の組織的政治を拒絶すべきである,はきわめて厳しい批判と言わなければならない。

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福祉国家と正義論 (藤澤益雄教授退任記念号) 保坂哲哉 http://t.co/p8z9oSgk

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