著者
醍醐 昌英
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.249-264, 2000-08-25

欧米において展開するエッセンシャルファシリティ(EF)理論は,新たな交通施設整備が困難である現在の日本において,モード選択肢を増加させうる手法として注目される。EF概念は(1)必要不可欠な施設の支配,(2)複製の不可能性,(3)使用拒否及び制限の存在,(4)正当な接続拒否理由がないことという4要件で定義される。同概念は価値欲求財の概念に類似するが,主要な供給主体が公的事業者であることを前提としない点でより中立的な規定である。EF概念に関する理論上の課題は複製可能性および接続拒否の妥当性の検証であり,また運用上の課題として費用の把握およびEFの範囲を確定する際の困難性が挙げられる。しかし,現在の経済情勢の下では,需給の変動は限定されるために複製可能性の検証に関して厳密性を要しないなどから概念自体は有用であり,交通市場に同概念を適用する際の重要な問題はEF概念に沿った接続料金設定のあり方となる。そして機会費用概念を伴う賦課原則に基づく接続料金設定がラムゼイ価格形成の発展形となり,競争誘引に寄与する点で有効である。

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