- 著者
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高橋 正子
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.5, pp.159-182, 2001-12-25
環境経営に対する経営者の意識調査を分析した。環境対策が進んでいるという意識の根拠はIS014001認証取得にある。環境報告書,環境会計は次の段階ととらえられている。環境会計は管理ツールとしての面を重視している企業もある。意識調査結果全体の因子分析により,「環境負荷削減対策に対するポジティブ評価」,「環境投資への積極性」,「環境負荷削減対策に対するネガティブ評価」,「外部報告開示」の4指標が抽出された。4指標を用いた環境経営パターンによって企業評価ができる。上場市場によってパターンは異なり,活動の場が限定的な企業は環境経営に消極的であることが推測される。また,環境負荷の大きいであろう企業年齢の高い企業ほど,環境投資に積極的な傾向がある。経営環境との重回帰分析により(1)広く海外から仕入れて国内で販売している,資金回転期間は長めであるが収益力は大きい企業が,環境負荷削減対策にポジティブな評価をする傾向にある。(2)広くグローバルに活動し,利益は高水準で推移しており,設備投資が大きいが比較的計画どおり順調である非オーナー企業が環境投資に積極的な傾向がある。(3)限定的な市場であるのにコスト面では変動が大きく,付加価値率も低く利益が低迷しているような企業が,環境負荷削減対策に対してネガティブな評価を持つ傾向にある。(4)萌芽的で集中度が高い市場で多角化して積極展開している企業が環境負荷削減対策の外部報告に積極的である,が明らかとなった。このうち環境投資の積極性を左右する要因となった耐用年数は,実態と乖離した税法が環境投資意欲を損ねる一因になっていることをうかがわせる結果となった。概略をまとめるなら,多様な意味で企業の活動の場の広さが環境負荷削減への意識と大きくかかわっていると言うことができる。