著者
光本 健次
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
no.9, pp.33-41, 1999

講道館柔道の創始者である嘉納治五郎は,柔道の形について「将来は特殊の目的をもって行ういろいろな形が新たにできてよいはずである」(1930年)と述べている。この嘉納の言葉は,目的に応じて形を新たにつくり出すことを認めるものと受けとめることができる。私は,1997年日本武道学会においてデンマークで考案された「連絡の形」に関する研究の一端を発表した。この形は,形としての成立条件について課題は残されているものの,近代柔道を代表する選ばれた連絡技術を組み立てたという点に他にない特徴が見られ,先行的な試みとして注目できる。講道館柔道の形は一つ一つに歴史的背景はあるが,技と技を連絡するこの種の形は公表されていない。柔道の技は単なる一つの技にとどまらず,技に連絡の幅を持たせることは技能上達の上でも極めて重要なことである。本来,連絡技術は個々につくり上げていくものであるが,学校柔道や,柔道の発展途上にある海外指導でも連絡技術を学習できる形があれば,連絡技における「くずし」と「つくり」の原理も親しみやすく理解できるのではないかと思われる。本研究では,デンマーク「連絡の形」の着眼点に注目し,乱取の形とも言われる講道館柔道「投の形」とデンマーク「連絡の形」の比較において形の成立条件を明らかにし,この二つの形をベースに新たな「連絡の形」の創作を試みる。

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