- 著者
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尾野 正晴
- 出版者
- 静岡文化芸術大学
- 雑誌
- 静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.69-78, 2001
1968年に、東京のふたつの画廊で開催された「トリックス・アンド・ヴィジョン」展は、トリッキーといわれる美術を集大成した、画期的な展覧会であった。企画者は、美術評論家の中原佑介と石子順造である。国内から19名の美術家が参加したが、そのうち6名は、静岡周辺に在住していた。トリッキーな美術は、その外見ゆえに、安易な美術と見なされることが多いが、視覚のあいまいさを視覚化した点で、再度見直されるべき価値があるように思われる。また、世界的に見ても、当時、他にあまり例を見ない動向でもあった。今回の研究の目的は、「トリックス・アンド・ヴィジョン」展はどのようなむのであったか、またそれは、我が国の戦後美術の流れのなかで、どのような位置にあったか、以上二点を検証することである。