著者
楠 喜久枝 三成 由美 杉山 なお子
出版者
中村学園大学
雑誌
中村学園研究紀要 (ISSN:02887312)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.213-220, 1985-03-31

博多弁で「味があるごつ, なかごつ」といわれながらおきゅうとは, 筑前続風土記によると元文3年 (1738)より食用にされていた。語源は, 沖独活, 沖でとれるウドが訛ったという説, 飢饉の時, 非常食として多くの人を救った事より「救人」という説がある。製造方法は, 原料にエゴノリ:イギス, テングサを7:3又は, 6:4の割合で混ぜて, 熱湯の中に少量の酢を入れ40〜60分煮沸して, ドロドロに溶かす。これを「もじ綱」という麻布地で絞る。このろ液が熱いうちに木板に1枚ずつ流して, 23℃室温10〜15分で固めて仕上げる。 おきゅうとの製造店は戦前からの老舗4軒, 戦後, のれん分はをした6軒を含めると10店舗ある。そのおきゅうとの内容は, 1枚ずつが手作りのため, バラつきがあるが, 1枚39〜40円, 重量41.0±8.0g, 長さ16.8±2.1cm, 幅9.2±0. 4cm, 厚さ3.0±0.3mmであった。おきゅうとの一特性は, 寒天の波形に比べてなたらかな弾性を示しており, 歯もろさ0.72±0. 12, ねばり18. 34 ±1.67a(T U), 腰の強さ16.7±0.07, へたれ0.70±0.06で, これらが特徴あるテクスチャーであると思われた。 おきゅうとの知名度は, 博多の郷土合で2位を占めていた。製造業者が冬季美味しい食品であると言うのに対し, 実態は, 初夏から夏季に食べられており, 朝食につきものの一品であったおきゅうとは, 夕食時に1番多く食べられていた。おきゅうとを食べる理由は, のどごしの清涼感がトップであり, 福岡市内の人のみ, 好きだから, 博多の習慣だからをあげていたが, 他の地区は, 自然食品, 歯ごたえ, 肥満の予防のため, 美容によいからをあげていた。 嗜好調査では, 元来, おきゅうとは細切りして生醤油に薬味は削り節かゴマをかけるのが, 美味しい食べ方と言われていたが, 酢醤油が有意に好まれ, 薬味は男性に生姜が好まれていた。 おきゅうとのイメージは非常に日本的で質素な博多的食品であるととらえていた。 原藻を煮溶かし固めただはの素朴な味こそが, "おきゅうと"の生命であろう。ややもすれは, 見失われがちな食の原点を "おきゅうと"は現代人にひそやかに, 語りかけてくれるようである。 終わりに, テクスチャーについては本学古賀菱子教授に御教示いただき, おきゅうと製造工程では、箱崎の林隆三氏に御協力いただき深謝致します。(本研究は, 第35回日本家政学会年次大会において一部発表)尚この報告は昭和55年度食物栄養学科管理栄養士専攻の井上敬子嬢の卒業研究を一部含むものである。

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こんな論文どうですか? 博多の郷土食(第1報)おきゅうとの研究(食物栄養学科編)(楠 喜久枝ほか),1985 https://t.co/ePeAfgf4WX
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