著者
板野 志郎 大久保 忠旦
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.109-117, 1997-12-26

泌乳期間中の乳牛のエネルギー代謝の基礎知見を得るため,乳牛の心拍速度と熱発生量,泌乳エネルギー間の関連性を分析した。泌乳中のホルスタイン種4頭に対し,ガスマスク法と心拍数のテレメトリーを利用して熱発生量と心拍速度を同時測定し,それらの間の回帰モデルを作成した。また各試験牛の泌乳期間中の24時間連続心拍速度(beats/min)と泌乳エネルギー(Y:mj/mbs/day)の変化を測定し,この日平句心拍速度(DHR:beats/min)の動態から,上記の回帰モデルを利用することで泌乳期間中の日熱発生量(DHP:mj/mbs/day)の動態を推定した。以上のことをふまえて日平句心拍速度,泌乳エネルギーおよび日熱発生量間の関係を解析した。結果は以下の通りである。1.心拍速度と熱発生量の間には明確な一次の回帰関係(r=0.8303-0.9733, P<0.01)が示された。2.日平均心拍速度,日熱発生量は分娩後100日以内にピークを持ち,泌乳エネルギーと同様に泌乳期が進むにつれて減少した。3.日平均心拍速度と泌乳エネルギーの間に正の相関があり(全体r=0.7215, P<0.01),日平均心拍速度1拍当たりの泌乳エネルギー増加量は0.0108mj/mbs/dayを示した。4.泌乳エネルギーと日熱発生量は強い正の相関を示した(全体r=0.8495, P<0.01)。5.泌乳エネルギーと日熱発生量間の回帰モデルから泌乳牛の維持代謝エネルギー要求量として0.4237mj/mbs/dayもしくは0.4901mj/mbs/dayが推定された。6.泌乳のための代謝エネルギーの利用効率(k_1)として53.76%もしくは57.00%が推定された。これらの結果は,泌乳牛の211ネルギー収支の泌乳期間中の変動が心拍速度と強く関連していることを示しており,心拍速度の変動が血流量に影響し,その結果泌乳代謝に影響を与えることが示唆された。

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