著者
石黒 直隆 猪島 康雄 松井 章 本郷 一美 佐々木 基樹
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2013-05-15)

絶滅した日本のオオカミ(エゾオオカミとニホンオオカミ)の分類学上の位置をミトコンドリア(mt)DNAのゲノム解析により明らかにし、両オオカミの起源と系譜を海外の考古資料から調査した。エゾオオカミは、大陸のオオカミと遺伝的に近く、ニホンオオカミとは大きく異なっていた。ロシアおよび中国の古代サンプル143検体を解析したが、ニホンオオカミのmtDNA配列に近い検体は検出できなかった。また、モンゴルのオオカミ8検体および国内の現生犬426検体を解析し、ニホンオオカミのmtDNAの残存を調査したが見つからなかった。これらの結果は、ニホンオオカミはオオカミ集団の中でもユニークな系統でることを示している。
著者
富田 久仁子
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.111-122, 2003-03

現代日本語の他動詞の中には,「つなぐ」と「つなげる」のように,意味と語形に共通部分を有する他動詞の組み合わせが存在する。本稿においては,この「併存する他動詞」である「つなぐ」と「つなげる」の意味的な類似点と相違点を明らかにする事を試みた。まず,それぞれの語の複数の意味から多義的別義を導き出し,多義の構造を解明し,その語にそなわっている基本的意味を規定した。二つの語の基本的意味は,「つなぐ」が「本来は切れたり離れたりしていないものが2つに離れている場合,それらをひと続きにすること」であり,「つなげる」は「本来は別の2つのものをひと続きにすること」である。意味の違いはその対象が「ひと続きになることが,本来的に自然なことであるかどうか」という点にある。また,この二つの語の多義構造を検証するために,「自己制御性」概念を導入し「つなぐ」と「つなげる」に共通している意味を明らかにした。
著者
章 開訓 大野 勝利 葛野 浩
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.191-198, 1987-12-25

本研究は亀の胸部甲殻に設けた穿孔穴を通して体表からの導出に準ずる心電図を誘導記録した。本研究に用いた誘導法は操作が比較的簡便で,かつ記録した心電図の各波形は明晰であった。そこで得られた資料をもとに心電図学的に各種の分析を試みた結果,爬虫類亀科の心臓の系統発生学的な研究および生理学的な検討に有意義な方法であると結論した。1.調律:正常な亀は洞性調律である。洞性P波はI,IIおよびaVFは陽性を示し,aVRおよびaVLは陰性を示した。また調律の不整も認められた。2.心拍数:安静状態下の心拍数は30回/分以下で平均値は26.6±2.7回/分である。3.電気軸:P波の平均電気軸は70°〜90°にあって,その平均値は76.87°±7.9°である。QRS波の平均電気軸は72°〜144°にあって,その平均値は93.87°±24.1°である。したがって両者の電気軸の方向は概ね同一で,すべて左下方を指向している。4.P波の持続時間と振幅:持続時間の平均値は102±6.8 msecである。振幅はII,III,aVFおよびaVRが大であった。5.P-R間隔:その平均値は649±6.7msecである。6. QRS波の形態:IはRを主とし,II,IIIおよびaVFはRSを主とし,aVRおよびaVLはQRを主とする。QRS波の持続時間の平均値は203±48.2msecである。振幅は陽性がII,IIIおよびaVFが大であり,陰性はaVRおよびaVLが大であった。7.S-T間隔:その平均値は810±36.6msecである。8.T波の持続時間と振幅:持続時間の平均値は218±20.4msecである。形態は大部分が二相性を示し,振幅はII,III,aVFおよびaVRが大であった。9.Q-T間隔:その平均値は1226±10.6msecである。
著者
近藤 真
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

2000年度より2002年度までの3年間、科研費補助金をうけ、「ニュージーランド行政革命と国立大学のエージェンシー化の憲法学的研究」を行った。その研究成果の一部として2001年9月に地域科学部の紀要に「国立大学の独立行政法人化?ニュージーランド国立大学のエージェンシー化から考える」を発表した。ニュージーランド国立大学のエージェンシー化の概観を行ったが、同時に資料としてニュージーランドビクトリア大学の政治学教授のスティーブン・レビン教授のニュージーランド国立大学のエージェンシー化に関する二つのきわめて重要な講演を翻訳し、付録として添付した。この研究の結果としてニュージーランドの大学改革が失敗であったことがわかった。なぜならば大学の研究者達がこの改革を全く支持していないからである。というのも、この改革が、研究者に利益の追求を求め、学生には授業料を払うように求めたからである。それはとても困難なことである。NZの大学は利益団体ではなく、学生達は1992年までは大学まで無償だったからである。レビン教授はNZがユネスコの宣言に逆行して学生から授業料を取っていることに危惧を示しており、ユネスコ(現在日本が事務局長を務めている)は、1998年の高等教育世界宣言で各国政府に大学教育の無償化を求めているからである。大学では弁護士でもあるロースクールの教授だけはこの改革を支持していたが、彼らは医学部教授と同じく学内でよりも学外で稼ぎが大きく、教授の肩書きを利用するために大学にも勤めているという側面もあろう。こういう人々を別とすれば大学の研究者はほとんどが研究で稼ぐなどということは不可能である。地震や天文学をふくむ地学、数学、生態学に稼げる道があるだろうか。これらの学間はニュージーランドの大学ではいまや消滅しつつある。この改革は改革ではなく、ニュージーランドの大学の破壊者であった。これがこの研究の傾向的結論であった。今後、さらにニュージーランド国立大学エージェンシー化の改革の意味を多面的に検討したい。新たな課題としては、大学改革がいかなる影響をNZの教育改革全体に及ぼしたのかについて検討が必要である。
著者
秋元 浩一 黒田 佐俊 土屋 智裕 石代 正義
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.67-75, 1985-12-15

青果物売買の最も詳細なデータを与える売立情報を,価格予測の対象データとすることについて,我が国でも代表的な複数の卸売会社の協力を得て検討した。この情報データは,個々の売立情報を網羅しているため厖大な量である。そこでまず,このデータの処理方法の開発に着手し,得られた方法によって素データを整理した後,要因の分析を行なった。要因の分析には,我が国でも代表的な卸売市場の荷受会社における昭和58年1年間分の金売立情報をMTベースで用いた。価格分析の対象品目はキャベツである。1.データ処理方法について1)素データは記録密度6250BPI,長さ2400フィートのMTで,多いときは1ヵ月号で約2本分であった。2)素データをいきなり分析するのは,労力,時間,経費の点から不可能に近いので,必要とするデータの整理を数段階に分けて行なう必要があった。第一処理で,キャベツおよび競合品に関するデータの抽出をおこない,次の段階で総量,平均単価の計算,同一等階級・同一平均単価等についてデータの整理を2回行ない,その結果をフロッピーディスクに出力し,以後の分析はパーソナルコンピュータで行なった。3)上記三段階の処理は厖大なデータ処理能力を必要とするので,大型電子計算機を必要とした。4)このデータ処理には,計算機の動いている時間だけで払半月分で約30号,1年分で約12時間を要した。2.キャベツの卸売価格に関する要因分析1)キャベツの1年間の出荷者総数は328人,出荷された等階級の種類は406種におよんだ。2)等階級別にみると等級無印で階級「L」が最も多く総入荷量の40%強を占め,または階級だけでみると「L」の価格が高く,市場において最も好まれていると思われた。3)年間出荷占有率の上位5位までの合計出荷占有率は51.4%であった。4)季節的価格変動とは別に,ゴールデン・ウィーク,盆の頃は異常高値となった。5)同一等階級のものでも出荷者によって価格は上下し,その差は最大226円(kg単価)に達した。価格におよぼす出荷者の要因の影響はかなり大きいことが明らかであった。6)出荷占有率の高い出荷者の価格は,総入荷量が増減しても安定的に推移し値崩れをおこしにくく,逆に,占有率の低い出荷者の価格は総入荷量の増減による影響を大きくうけ,価格変動が激しい傾向が認められた。7)日単位のキャベツ総入荷量と価格との間には,特定の関係を認めることはできなかった。8)等級無印,階級「L」で年間を通じて出荷している出荷者(年間出荷占有率第4位)について,前日までのデータによって翌日の価格を説明するという形式のもとで,重回帰分析をおこなったところ,重相関係数は0.902,説明率ぱ81%であり,前日までのデータによって翌日の価格を8割程度説明できることがわかった。
著者
重松 幹二 河合 真吾 平井 浩文
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-6, 2002-12-25

リグニン分解酵素によるメトキシベンゼン類の酸化反応を予測するため,分子軌道法によってHOMOエネルギーを計算し,酸化電位の実測値と比較した。その結果,半経験的分子軌道法であるRHF/PM3法では,ジメトキシベンゼンまではHOMOエネルギーと酸化電位に良い相関が得られたものの,それ以上の多数のメトキシル基を有するものでは相関が得られなかった。また,溶媒を考慮して計算するRHF/PM3+COSMO法や,より計算精度が高い非経験的分子軌道法であるRHF/6-31G^*によっても,予測に充分な計算結果は得られなかった。これは,親水基として作用するメトキシル基の影響が大きく,酸化反応前後での溶媒和エネルギーの影響が無視できないためと推察した。そこで,理論式に基づいて反応前後の溶媒和エネルギーの差を補正項として導入したところ相関係数が上昇し,特にヘキサメトシキベンゼン以外の全てのメトキシベンゼン類に対して良い相関が得られた。最終的に,分子軌道計算のみで酸化反応の序列の予測が可能であることがわかった。
著者
井奈波 良一 鷲野 嘉映 高田 晴子 岩田 弘敏 森岡 郁晴 宮下 和久
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997 (Released:1999-03-15)

埋蔵文化財発掘調査機関における労働安全衛生管理の実態と発掘作業の労働負担を明らかに、その対策を検討することを目的に、本研究を行った。都道府県教育委員会関連の発掘調査機関においては、「救急蘇生の講習会を開催している」および「定期健康診断を実施している」機関は25%以下であった。労働災害発生件数に関連する要因として、「独自に雇用している発掘作業員数が多いこと」および「安全衛生に関する規定がないこと」が抽出された。夏期に発掘現場の作業環境測定を行った結果、WBGT(湿球黒球温度指標)は中等度の労働強度における許容基準を超えている時間帯があった。鼓膜温は、発掘作業中上昇し、休憩によって下降するパターンを示した。体温の最大値は、午後の第1回目の休憩前に記録された。冬期に作業者の血圧等を経時的に測定した結果、収縮期血圧の最大値は発掘作業開始時点に記録された。これは主として発掘現場における寒冷曝露の結果と考えられる。ダブルプロダクトは、発掘作業中上昇し、休憩時に低下するパターンを示した。冬期における作業者に自覚症状を調査した結果、発掘作業中に防寒靴を使用する者の自覚症状の有症率は、使用しない者よりいくつかの項目について有意に低率であった。しかし、「足の冷え」については両者の間で有意差がなかった。これらの結果から、冬期の発掘作業を快適に行うための方策のひとつとして防寒靴の使用が勧められる。寒冷紗の効果をみるため模擬発掘現場で炎天下と寒冷紗のWBGTを測定した結果、寒冷紗下では乾球温度、湿球温度、黒球温度が低く、その結果、寒冷紗下のWBGTは炎天下より低くなっていた。したがって、夏期の発掘現場における寒冷紗の使用は、夏期の埋蔵文化財発掘作業を快適に行うための方策のひとつとして効果があることがわかった。しかし、寒冷紗下の風通しを悪くすると効果が低下することも明らかになった。
著者
別府 哲
出版者
岐阜大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994 (Released:1994-04-01)

別府(1994)は後方向の指差し理解を検討する中で、自閉症児も健常児と同様、一定の発達年齢(発達年齢1歳以上)になれば指差した方向を振り返る事は可能であること、しかし共有伝達行動(大人に指差された方向を自分も指差しながら、振り返って大人を見る)に見られる他者認識は、健常児と比較して自閉症児の弱い点で在ることを指摘した。それでは自閉症児はどのようなレベルの他者認識を持っているのか。その点を観察による他者の「振る舞いとしての理解(麻生1980)」側面から、検討することが今回の目的である。そして対象としては、通常1歳頃に見られる、他者の情動を変化させる行動(からかいtease)に焦点を当て、それが在る時期に頻発した自閉症児N児一事例を取り上げる。方法としては、保母の日誌、母親の連絡帳、月1回程度のビデオ記録(3歳0カ月から6歳7カ月迄)から、(1)N児自身の喜びや不快等の情動表出場面、(2)母親・保母・他児がN児に対して喜びや不快の情動表出を行った場面、を取り出し分析した。取り出した場面は計531場面となる。ア・からかい行動の発達:からかい行動を「他者の予期を認識しその意図的操作を含む行動(James&Tager-Flusberg,1994)」と定義すると、N児の場合は「追い掛けられるのを期待して逃げる」形で出現した。最初は、N児自身が相手を叩くことで相手がプレイフルな情動に基づいて追い掛けてくれるのを楽しんでいたのだが、途中から相手がプレイフルな情動であるかどうかと無関係に相手の行動のみを求める行動に内容が変容して行った。これを「自分の特定の行動→(相手の特定の情動→)それに基づく相手の行動」と言う、一義的な随伴性の理解による他者理解に基づくからかい行動と考える。イ・指差しの理解との関連:N児の場合、指差し理解の成立がアで述べた一義的な随伴性の理解による他者理解に基づくからかい行動出現の時期と一致し、そのレベルの他者理解との連関が想定された。
著者
中井 健一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学地域科学部研究報告 (ISSN:13428268)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-103, 1999-03-15

As Japan began to step into a welfare state after World War II, theoretical study of social welfare began to flourish. Why did modern states develop social policies? What are the purpose and functions of social welfare? These theories concerned with the essence of social welfare were presented, and disputes arose. The controversy from 1945 to 1960 was already summed up and a book about it was published as "Disputes regarding the Social Welfare of Japan after World War II". This thesis tried to examine the history of disputes since then, especially controversy about the theory of social policy and the new theory of social policy. (They both belong to the school of the theory considering social welfare of modern times as the system of policies developed by states.) In addition to this, it tried to make clear what emerges from this controversy and what we can learn from that. This work has been indispensable in the process of creating new theories.