著者
章 開訓 大野 勝利 葛野 浩
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.191-198, 1987-12-25

本研究は亀の胸部甲殻に設けた穿孔穴を通して体表からの導出に準ずる心電図を誘導記録した。本研究に用いた誘導法は操作が比較的簡便で,かつ記録した心電図の各波形は明晰であった。そこで得られた資料をもとに心電図学的に各種の分析を試みた結果,爬虫類亀科の心臓の系統発生学的な研究および生理学的な検討に有意義な方法であると結論した。1.調律:正常な亀は洞性調律である。洞性P波はI,IIおよびaVFは陽性を示し,aVRおよびaVLは陰性を示した。また調律の不整も認められた。2.心拍数:安静状態下の心拍数は30回/分以下で平均値は26.6±2.7回/分である。3.電気軸:P波の平均電気軸は70°〜90°にあって,その平均値は76.87°±7.9°である。QRS波の平均電気軸は72°〜144°にあって,その平均値は93.87°±24.1°である。したがって両者の電気軸の方向は概ね同一で,すべて左下方を指向している。4.P波の持続時間と振幅:持続時間の平均値は102±6.8 msecである。振幅はII,III,aVFおよびaVRが大であった。5.P-R間隔:その平均値は649±6.7msecである。6. QRS波の形態:IはRを主とし,II,IIIおよびaVFはRSを主とし,aVRおよびaVLはQRを主とする。QRS波の持続時間の平均値は203±48.2msecである。振幅は陽性がII,IIIおよびaVFが大であり,陰性はaVRおよびaVLが大であった。7.S-T間隔:その平均値は810±36.6msecである。8.T波の持続時間と振幅:持続時間の平均値は218±20.4msecである。形態は大部分が二相性を示し,振幅はII,III,aVFおよびaVRが大であった。9.Q-T間隔:その平均値は1226±10.6msecである。
著者
秋元 浩一 黒田 佐俊 土屋 智裕 石代 正義
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.67-75, 1985-12-15

青果物売買の最も詳細なデータを与える売立情報を,価格予測の対象データとすることについて,我が国でも代表的な複数の卸売会社の協力を得て検討した。この情報データは,個々の売立情報を網羅しているため厖大な量である。そこでまず,このデータの処理方法の開発に着手し,得られた方法によって素データを整理した後,要因の分析を行なった。要因の分析には,我が国でも代表的な卸売市場の荷受会社における昭和58年1年間分の金売立情報をMTベースで用いた。価格分析の対象品目はキャベツである。1.データ処理方法について1)素データは記録密度6250BPI,長さ2400フィートのMTで,多いときは1ヵ月号で約2本分であった。2)素データをいきなり分析するのは,労力,時間,経費の点から不可能に近いので,必要とするデータの整理を数段階に分けて行なう必要があった。第一処理で,キャベツおよび競合品に関するデータの抽出をおこない,次の段階で総量,平均単価の計算,同一等階級・同一平均単価等についてデータの整理を2回行ない,その結果をフロッピーディスクに出力し,以後の分析はパーソナルコンピュータで行なった。3)上記三段階の処理は厖大なデータ処理能力を必要とするので,大型電子計算機を必要とした。4)このデータ処理には,計算機の動いている時間だけで払半月分で約30号,1年分で約12時間を要した。2.キャベツの卸売価格に関する要因分析1)キャベツの1年間の出荷者総数は328人,出荷された等階級の種類は406種におよんだ。2)等階級別にみると等級無印で階級「L」が最も多く総入荷量の40%強を占め,または階級だけでみると「L」の価格が高く,市場において最も好まれていると思われた。3)年間出荷占有率の上位5位までの合計出荷占有率は51.4%であった。4)季節的価格変動とは別に,ゴールデン・ウィーク,盆の頃は異常高値となった。5)同一等階級のものでも出荷者によって価格は上下し,その差は最大226円(kg単価)に達した。価格におよぼす出荷者の要因の影響はかなり大きいことが明らかであった。6)出荷占有率の高い出荷者の価格は,総入荷量が増減しても安定的に推移し値崩れをおこしにくく,逆に,占有率の低い出荷者の価格は総入荷量の増減による影響を大きくうけ,価格変動が激しい傾向が認められた。7)日単位のキャベツ総入荷量と価格との間には,特定の関係を認めることはできなかった。8)等級無印,階級「L」で年間を通じて出荷している出荷者(年間出荷占有率第4位)について,前日までのデータによって翌日の価格を説明するという形式のもとで,重回帰分析をおこなったところ,重相関係数は0.902,説明率ぱ81%であり,前日までのデータによって翌日の価格を8割程度説明できることがわかった。
著者
重松 幹二 河合 真吾 平井 浩文
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-6, 2002-12-25

リグニン分解酵素によるメトキシベンゼン類の酸化反応を予測するため,分子軌道法によってHOMOエネルギーを計算し,酸化電位の実測値と比較した。その結果,半経験的分子軌道法であるRHF/PM3法では,ジメトキシベンゼンまではHOMOエネルギーと酸化電位に良い相関が得られたものの,それ以上の多数のメトキシル基を有するものでは相関が得られなかった。また,溶媒を考慮して計算するRHF/PM3+COSMO法や,より計算精度が高い非経験的分子軌道法であるRHF/6-31G^*によっても,予測に充分な計算結果は得られなかった。これは,親水基として作用するメトキシル基の影響が大きく,酸化反応前後での溶媒和エネルギーの影響が無視できないためと推察した。そこで,理論式に基づいて反応前後の溶媒和エネルギーの差を補正項として導入したところ相関係数が上昇し,特にヘキサメトシキベンゼン以外の全てのメトキシベンゼン類に対して良い相関が得られた。最終的に,分子軌道計算のみで酸化反応の序列の予測が可能であることがわかった。
著者
秦 小明 加藤 宏治 山内 亮 相澤 宏一 稲熊 隆博
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.83-88, 1999-12-27

クコ果実より,冷水及び熱水にて多糖成分Cp(冷水抽出多糖)及びHp(熱水抽出多糖)を抽出した。それらをDEAE-セルロースカラム(HCO^-_3型)に供したところ,Cpは3つの両分(Cp-1, Cp-2及びCp-3)を,Hpは4つの両分(Hp-0,Hp-2,Hp-3及びHp-4)を与えた。得られた各面分の性質及び化学組成を検討した結果から,クコ果実に含まれる多糖成分は主にアラバン,グルカン,アラビノガラクタン及びペクチン質多糖であることが示唆された。
著者
章 開訓 大野 勝利 葛野 浩
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.183-190, 1987-12-25

無麻酔で安静状態における蛙の心電図を誘導記録した。心電図は体表から標準肢誘導と増高単極肢誘導を採用した。その結果各波の形態は明瞭で,またII,III,aVRおよびaVFの各波形の振幅は大きく,各種の分析についても容易であった。したがって,蛙の心臓の電気生理学的な分析手段として充分な意義を有するものと考えられる。1)P波の形態はII,IIIおよびaVFは陽性波で,aVRおよびaVLは陰性の波である。2)QRS波の形態はII,IIIおよびaVFはRS型をとり,これらはR波が主成分となり,aVRおよびaVLはQR型をとり,その多くはQ波が主成分となった。3)T波は基本的にQRS波の主成分と同一の方向を示した。4)心拍数の平均値は35.3±3.0回/分であった。5)平均電気軸はP波で+83.1°±16.1°QRS波では+101°±64.6°であり心房と心室は概ね同一方向を指している。6)P波の持続時間は74±4.0msec,QRS波のそれは133±5.3msec,T波のそれは106±4.5msecであった。7)P-R間隔は478±8.1msec,Q-T間隔は1145±21.5msecであった。
著者
原 裕司 山内 亮 加藤 宏治 石川 仁治
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.145-151, 1998-12-26

ニンニク磨砕物に蒸留水,牛乳,乳脂肪,カゼイン,乳清をそれぞれ加え,発生するニンニク臭気量を比較した。蒸留水のみを添加したときの臭気発生量を100%とすると,牛乳,乳脂肪,カゼインなどの添加は臭気を80〜20%減少させたが,乳清は減少させなかった。次にニンニクより粗アリイナーゼ及び臭気成分前駆体を調製し,(1)カゼインとアリイナーゼ(2)カゼインと臭気成分前駆体をそれぞれ混合して4℃に20時間放置した後,(1)には臭気成分前駆体,(2)にはアリイナーゼを加え,ニンニク臭が発生するか否か検討したところ,どちらにも発生が認められ,その量も共に対照と差異はなかった。以上から,カゼインはアリイナーゼが臭気前駆体に作用し臭気を発生させる反応に影響を与えないと結論した。一方,カゼインと臭気成分モデル化合物であるジアリルジスルフィドを混合すると,雰囲気中のジアリルジスルフィド量が減少し,さらに,混合後のカゼイン(無臭)からこの化合物をエタノール抽出によって回収することが出来た。このことから,カゼインによるニンニク臭抑副作用は,臭気成分がカゼイン蛋白に吸着されることによるものと考察した。
著者
章 開訓 大野 勝利 葛野 浩
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.345-351, 1988-12-25

蛇の心臓の解剖学的位置と,これにともなう腹鱗の相対的位置を確認したうえで,誘導電極の位置を設定し,心電図を誘導記録した。本研究に用いた誘導法は操作が比較的簡便で,かつ記録した心電図の各波形は明晰であった。そこで得られた資料をもとに心電図学的に各種の分析を試みた結果,爬虫類蛇科の心臓の系統発生学的な研究および生理学的な検討に有意義な方法であると結論した。1.調律:P波は全例で認められた。したがって,正常な心機能を有する蛇の心臓は洞性調律である。洞性P波はIIIおよびaVFを除く各誘導で陽性を示した。また,陰性および二相性P波は総ての誘導で認められた。2.心拍数:安静状態下の心拍数は32〜46/分で,その平均値は40.5±4.1/分であった。3.電気軸:P波の平均電気軸は-30°〜-166°にあって,その平均値は-89.4°±54.7°であった。QRS波の平均電気軸は60°〜82°にあって,その平均値は72.4°±8.6°であった。したがって,両者の電気軸は相反する方向を指向している。4.P波の持続時間と振幅:持続時間の平均値は60±8.0msecである。振幅は陽性成分ではaVRで106.0±34.4μV,陰性成分ではIIで114.3±24.8μVと比較的優勢に導出された。5.P-R間隔:その平均値は394±6.9msecであった。6. QRS波の持続時間,振幅および形態:持続時間の平均値は151±17.8msecである。振幅はQ波はaVRで,R波はI,II,IIIおよびaVFで優勢である。S波はaVRおよびaVLを除く各誘導で導出されるが,いずれも小さい。形態はaVRおよびaLVでは総てQr型を示し,II,IIIおよびaVFでは総てRs型を示した。また,IでRsおよびR型を示した。7.Q-T間隔:その平均値は926±17.3msecであった。8.T波の持続時間,振幅および形態:持続時間の平均値は114±21.3msecである。振幅は陽性波ではII,IIIおよびaVFで,陰性波はaVRおよびaVLで優勢に導出される。形態はII,IIIおよびaVFでは総て陽性型,aVRおよびaVLでは総て陰性型を示す。Iは主として陽性型を示すが,陰性を示すものもある。9.R-R間隔:その平均値は1466±36.8msecであった。
著者
松井 鋳一郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.393-402, 1988-12-25

Cattleyaおよび近縁属の交配種約210について原種と同様に花色素の花被内分布,花披色および表皮細胞の形状について調査し,原種との相関について検討した。1 花被内のカロチノイドとアントシアニンの分布様式は原種より多く,12のパターンに分類した。ラベンダー系のCattleya, Brassocattleya, BrassolaeliocattleyaやLaeliocattleyaは親と同じ分布様式P_2を示したが,C. intermedia var. aquiniiやC. trianaeとL. pumilaの子孫で表皮にアントシアニンを含む(P3)交配種があった。また,Sophronitisの子孫でもカロチノイドを欠く"ソフロレッド"のものはP3であった。赤色花はカロチノイドとアントシアニンを共に含んでいた。アントシアニン色素を表皮に含むSophronitisの子孫が多かった。しかし,表皮にアントシアニンを含まない赤色のSophronitisの子孫も少数あった。2 Brassavolaの子孫は黄緑,白,ラベンダー色と色度図上原点を通って分布し、赤色の交配種はなかった。色度図上から,ラベンダー系の交配種より,楔花,楔花より"ソフロレッド"の花の方がより赤味が強かった。S. coccineaはLaeliaと交配したとき,その親となる種によって広く分布した。3 交配種の表皮細胞の形や大きさは両親の性質を強く受けた(回帰係数で,形,0.32〜0.56,花弁・高さ,0.40〜0.50,唇弁・高さ,0.37〜49)。また,種や種を構成するグループによって影響の表われ方は異なった。 C. aurantiacaは交配相手の影響が出やすく,C. labiataグループはグループの形質の影響が強く出た。
著者
小谷 康弘 桜井 宏紀 照屋 匡 伊藤 嘉昭 武田 享
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.51-57, 1991-12-25

ウリミバエのガンマー線照射による不妊化の機構を組織学的に検討した。電子顕微鏡による精巣の観察では,照射虫の精原細胞,精母細胞は崩壊し,自由精子のみが存在していた。照射虫と交尾した雌の産下部の胚子発生過程の光学顕微鏡による観察では,卵割異常,胚盤葉形成阻害など発生初期の段階での異常がみられ,それ以降の胚子発生過程は認められなかった。ガンマー線照射により雄の生殖細胞は大部分が崩壊するものの,残った精子は受精には関与した。しかし,受精に関与した精子は胚子発生過程を停止させる異常精子であり,このことがほぼ100%の不妊化率を引き起こすものと推定された。光学顕微鏡による中腸の観察では,照射虫の中腸上皮細胞の萎縮や崩壊がみられた。このことから,ガンマー線照射により中腸組織に阻害を生じ,消化機能が阻害されることが,成虫の寿命低下の一因になっていると思われる。
著者
大場 伸哉 鈴木 祐介 藤本 文弘
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.7-13, 1997-12-26

ソバ属(Fagopyrum spp.)栽培種は収穫時に脱粒しやすい。そこで本研究では,小枝強度を指標にしてソバ属2種の脱粒性を調査した。供試した材料は,日本産,ソ連産およびネパール産の普通ソバ(F. esculentum Moench.)3品種2系統とソ連ならびにネパール産のダッタンソバ(F. tataricum Gaerutner)2系統である。開花・結実後3日毎に小枝の抗張強度と抗曲強度を測定し,登熟に伴う小枝強度の変化を調べた。また,登熟程度の目安とするために,痩果の生鮮重を測定した。結実直後の抗張強度ならびに抗曲強度は,全品種・系統とも10g程度と小さく,登熟するに従い次第に増加した。しかし,登熟が終わると,日本産やソ道産の普通ソバでは抗曲強度が顕著に低下した。登熟後の普通ソバとダッタンソバの小枝強度を比較すると,ダッタンソバの強度は普通ソバの半分程度に過ぎなかった。一方,抗曲強度の最高強度を普通ソバの品種・系続開で比較すると,最も強いネパール産ソバと最も弱いソ連産ソバとの差は11gで,その差は比較的小さかった。また,ダッタンソバの場合は,系統間に有意な差はなかった。抗張強度の測定時に痩果が離脱した部位を調べたところ,痩果の基部付近から小枝の中央部にかけて離脱しやすいことがわかった。これは,イネ科植物で見られるような特定部位での脱粒とは異なっている。
著者
福士 秀人 小川 晴子 森腰 俊亨 奥田 恭之 島倉 省吾 平井 克哉
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
no.50, pp.p259-263, 1985-12
被引用文献数
2

クラミジア補体結合抗体の保有状況を愛知および岐阜両県のウシ1,048頭,ブタ544頭,ならびに茨城県,岐阜県および東京都のウマ1,103頭について調査した。ウシの平均抗体保有率は30.2%で地域差が認められた。ウマでは茨城および岐阜両県で2.8%および1.0%にそれぞれ抗体が認められた。ブタでは主に種雄豚で0.7%が抗体陽性であった。このように,わが国の家畜にクラミジア感染症が存在することが示唆された。
著者
松井 鋳一郎 禿 泰雄
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.49-55, 1994-12-28
被引用文献数
3

Dendrobiumのピンク品種,Den. xChristmas Chime 'Asuka' と黄色品種,Den. xYellow Ribbon 'Delight'の花弁の形質と花色に及ぼす気温と光およびアブシジン酸の影響を調査した。両品種とも低温(昼夜温,18-15℃)で中温(25-20℃)や高温(32-25℃)より開花が遅れた。ピンク品種は中温で長い花弁となったが黄色品種は高温でその発達がよかった。ピンク品種の花弁先や唇弁目玉でのアントシアニンの生成は低温で多かったが黄色品種花弁では高温で著しく多かった。カロチノイドはピンク品種の唇弁では低温で多く,黄色品種の唇弁周辺部や花弁では高温で少く,唇弁は多かった。光のある条件で咲いたピンク花は幅の狭い花弁と広い唇弁となり,唇弁先の紅は大きくなった。黄色の品種にはほとんど影響がなかった。花弁のアントシアニン生成は両品種とも光のある条件で暗黒条件より優れていた。カロチノイドの生成は光条件でピンク品種の唇弁は著しく多かったが,黄色の品種では影響がなかった。蕾へのアブシジン酸の処理は唇弁の生重が高ったことアントシアニンの生成に阻害的であったことを除くと他の形質には影響がなかった。
著者
杉山 道雄 畦上 光弘
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.391-407, 1985-12-15

従来,農業経営学において生産の規模,形態,組織に関するもの,いわば生産管理に関する研究は多いにもかかわらず,販売管理については少なかったといえよう。そこで本研究は,岐阜県下144戸の採卵経営の販売構造や販売管理のあり方を検討したものである。採卵経営が飼料商や農協に完全販売委託を行なっている経営が50%以上,さらに単一取引先である場合が70%に達する。採卵経営の羽数規模拡大につれて,kg当り販売価格が上昇しているのは,取引先の多数化,それによる価格交渉の機能などによる。岐阜県を地域別にみた場合,西南濃,東中濃は東京卵価圈にあり,東濃は名古屋卵価圏にある。けれども飛騨は名古屋相場を利用するとはいえ,飛騨卵価圈を形成している。これは名古屋卵価圏とはいえ飼料配送などから孤立した卵価圏を形成しているからだとみられる。個別経営の行なっている販売管理をG.P処理の有無と販売先の単複により類型化すると次のようになる。第1形態はG.P処理を行なわず単一販売先のもの(完全販売委託型),第2形態はG.P処理を行なわないが販売先が複数のもの(不完全販売委託型),第3形態はG.P処理を行なうが販売先が単一のもの(不完全販売管理型),第4形態はG.P処理を行ない販売先が複数のもの(完全販売管理型)である。生産者受取卵価は形態1では304円,形態2で313円で+9円,第3形態で322円で+9円,第4形態で334円で+12円と高くなり,第1形態との差は30円である。G.P未処理の平均は306円でG.P処理は330円で24円の差である。以上のように販売管理による収益増は生産管理にも匹敵する重要な位置にあり,経営の意志決定をする場合にも重要な分野である。
著者
堀内 孝次 池田 裕
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.19-25, 1984-12-15

集約栽培技術としての間作をとりあげ,組合せ作物の生育及び収量比較と,収穫物の熱量測定により,間作による耕地利用効率の評価を試みた。実験は1980年に本学農学部附属農場(各務原市,那加)においてヤマノイモ(イセイモ),トウモロコシ(ゴールデンクロスバンタム・グレートベル),インゲンマメ(ツルアリ尺五寸菜豆)を供試して行われた。結果は以下のとおりであった。ヤマノイモの草高は各区間(ヤマノイモ単作区-D区,ヤマノイモ・トウモロコシ間作区-ZD区,ヤマノイモ・トウモロコシ・インゲンマノ間作区-ZPD区)に有意差はなかったが,ZPD区>ZD区>D区の順に高い傾向がみられた。トウモロコシも区間(ZD区,ZPD区)で有意差はなかった。群落内相対照度は6月27日(トウモロコシ絹糸抽出期)段階では殆んど区間差はみられなかった。8月8日(トウモロコシ完熟期,インゲンマメ開花盛期)段階では草高1m以下の相対照度がD区に較べてZPD区とZD区で著しく低下した。この傾向は前者で著しかった。ヤマノイモの10a当たり収量はD区で最も高く,ZPD区で最も低かった。両区間で有意差がみられたが,D区とZD区の間には差はなかった。このことから,ZD区ではトウモロコシを栽培した分だけ土地生産性が高まったことになり,耕地利用効率が高まったといえる。トウモロコシ収量はZPD区でZD区より低い傾向がみられるものの,統計的な有意差はなかった。収穫物の熱量表示による面積当たり熱量生産比較でも間作区の方が単作区より大きかったが,ZD区とZPD区の間に差はなかった。なお,トウモロコシについては乾物1g当たり熱量と百粒重との間に正相関が認められたことから,小粒であるほど熱量は少ないといえる。
著者
高橋 奈知子 杉村 誠 鈴木 義孝 阿閉 泰郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p137-150, 1986-12

ニホンカモシカ腎臓の形態を肉眼的および組織学的に観察し,合成樹脂の注入によってその動脈走行を調べ,次の結果を得た。ニホンカモシカ腎臓は単腎で,外形は右腎臓が豆形,左腎臓は遁走腎で三角形を呈し,割面では総腎乳頭を形成していた。成獣ニホンカモシカの腎重量は左右とも約70gであった。また,大きさの平均は左が7.1×4.8×3.2cm,右が7.1×4.9×2.9cmで,左の方が厚みがあった。左腎動脈は腹大動脈からの分岐が右よりも後位で発し,しかも右よりも長かった。腎動脈は腎門内で前・後枝に分岐し,前枝が腹側に,後枝が背側に偏在していた。また,葉間動脈は一般に前・後枝から各6本,計12本が出ていた。前枝の背・腹側枝の分岐と,背側中核の分岐状態から,動脈分布様式をIa〜d,IIa〜dの8型に想定区分したが,そのうち実存したものは6型あり,なかでもニホンカモシカの最も基本的な型は,前枝が背・腹側枝に分岐し,背側中枝が後枝から出るIIa型であった。被膜に分布する動脈の中には,葉間動脈から分岐して被膜に向うperforating arteryが存在していた。旁髄質の糸球体は皮質表層のものよりも大きく,また糸球体は二半球性,内外二展性で,ヤギに類似したpartly coveredの状態である様子がうかがわれた。
著者
岩田 吉弘 福士 秀人 鈴木 義孝 平井 克哉
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.201-205, 1987-01-10

某輸入愛玩鳥卸売業者において,流涙,結膜の浮腫と充血,眼瞼腫張,角膜の混濁と潰瘍などの症状を示すオウム・インコ類の疾病が観察された。アオボウシインコ11羽中9例ならびにオカメインコ5羽およびボタンインコ4羽の全例からボックスウイルスが分離された。また,これらの症例からグラム陽性菌がほぼ純粋に検出され,混合感染によって病性が悪化すると考えられた。
著者
福井 博一 山本 哲也 浅野 正 中村 三夫
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.139-145, 1988-12-25

Cyclamen persicum Mill.'バーバーク'の種子を無機成分を1/2にしたMurashige & Skoog培地(1/2MS)に播種し,発芽した幼植物の各組織からの器官分化に及ぼす生長調節物質の影響及び大量増殖法の検討を行った。子葉柄からは塊茎様組織(TLO)が形成されたが,その形成量はNAA濃度が高くなるに従い促進された。生長点近傍組織及び塊茎組織からの塊茎肥大にもNAAが密接に関与していた。不定芽の分化はBAPによって促され,不定根の分化はNAAによって促進された。カルス形成はNAAを10^<-5>M,BAPを10^<-7>〜10^<-6>M添加された場合に最も促進された。個々に分割した不定芽を,高濃度のBAPを添加した培地に移植すると各々からフローラルトランクが形成され,実生植物に近い形態の幼植物となった。カルスをNAA 10^<-6>M及びBAP 10^<-6>M添加した培地で液体振とう培養すると多数の不定胚が得られた。
著者
章 開訓 大野 勝利 葛野 浩
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.163-173, 1987-01-10

本研究は30頭の健康な警察犬の心電図について記録測定し,それに基いて分析を試み以下の心電図波形ならびに数値を確定した。これらの数値はシェパード犬の心電図検査の参考指標となり得る。1)心調律:すべて洞性調律であった。2)心拍数:心拍数は60〜147回/分で平均値は106±4回/分であった。3)平均電気軸:平均電気軸はQRS波で測定した72.3±7.1°であった。4)P波:P波の形態は肢誘導とA-B誘導のIおよびIIは陽性,aVRでは陰性,aVFは陽性を主とし,IIIおよびavLは陽性,陰性および二相性を呈した。P波の振幅はA-B誘導より肢誘導が大きい。P波の持続時間は0.03〜0.50秒であった。5) P-R間隔:P-R間隔は0.10〜0.14秒であった。6) QRS波群:QRS波形はA-B誘導と肢誘導I,IIおよびavFではR波が主波となり陽性であり,avRはQ波を主波とし陰性であった。 A-B誘導I,肢誘導II,aVFはqRSでA-B誘導IIおよびavFはRS,aVRはQrとなる。肢誘導ではavRはrSr型が主で,その他の誘導では変位が多く各種の波形が認められる。またQRS波の持続時間は0.03〜0.08秒であった。7) S-T変位:S-T変位のなかでS-T上昇はA-B誘導I,IIおよびavLで常にみられ,S-T下降はA-B誘導のIIIおよびavRに常にみられた。8)T波の形態:T波の形態はA-B誘導I,IIおよびavLでは陽性が多く,IIIおよびavRでは陰性になることが多い。avFは陽性のことが多く陰性の場合は二相性となる。肢誘導ではI,II,III,aVLおよびavFは陽性にも陰性にもなり得るが陽性の出現率が高い。avRは陰性となることが多い。9)Q-T間隔:Q-T間隔は0.16〜0.24秒であった。