- 著者
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橋本 順光
- 出版者
- 帝京平成大学
- 雑誌
- 帝京平成大学紀要 (ISSN:13415182)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.17-26, 1999-06-30
デフォーの『コンソリデイター』(1705)よ従来, 三つの観点から研究されてきた。第一に, 月世界旅行記に仮託した政治パンフレットとみなす解釈。第二に, 古代と現代とのどちらの学芸が優れているかをめぐる当時の新旧論争に注目し現代派を擁護したとする解釈。第三に, 作中の中国の記述を取り上げ, 同時代の中国崇拝を風刺しだとする解釈。本稿は, 論じられることの少なかった新旧論争における中国評価に注目することで, これら三解釈を統合しようとする試みである。古代派の代表テンプルは中国を文明の起源と考え, その政治体制と高度な学芸を賛美した。それに対して現代派ウォットンは, ギリシアを近代ヨーロッパ科学の起源とし中国を停滞した専制国家と批判した。それを踏まえて, 『コンソリデイター』では, 学芸の起源を求めてヨーロッパから中国そして月世界へと旅し最後にはその月世界もヨーロッパに出来していたという円環が描かれる。ここでは, 現代派に基づいて中国崇拝を批判しつつも, 起源をめぐる新旧論争自体が風刺されているのである。